いすゞ自動車栃木工場でDeuSEL給油スタンド開所式が行われた。これはバイオディーゼル燃料のことなのだが、同社の取り組みと実用についてレポートする。
文:古川智規(バスマガジン編集部)
バイオ燃料とは?
DeuSELRとは、ディーゼル(DIESEL)とユーグレナ(euglena)を組み合わせた造語で、ユーグレナ(和名:ミドリムシ)からつくったバイオディーゼル燃料を表す、いすゞとユーグレナ社の共同で取得した商標とのことだ。
このバイオディーゼル燃料をいすゞ栃木工場の送迎シャトルバスで実際に使用を開始した。特にバス側を改造することなく、通常のディーゼルエンジンにこのバイオ燃料を10%混入したものを使用して走行する。
このバイオディーゼルバスは、いすゞ藤沢工場においてすでにシャトルバスとして活躍中だったが、このたびその実績が認められ、栃木でも実証されることになったものだ。
バイオ燃料はガソリンではすでに穀物やサトウキビ由来のエタノールを混合したものが世界中で市販されている。現状ではE85(エタノール85%)まで実用化されている。これらのエタノールは主に穀物由来のため、安価な穀物の代表格であるトウモロコシやサトウキビの搾りかすから作られることが多かった。
ただしこれらの安価な穀物は飼料として食べさせ、育てて食肉にする畜産物をそっちのけでエタノールを大量生産したことによる、食用穀物や食肉価格の高騰につながってしまったのがジレンマだった。最近では穀物を使わずに有機物であれば、何でも化学的に分解してバイオ燃料を作る技術の確立が最優先課題だ。
バイオディーゼルは軽油の代替
これらの理由から、生物としてのミドリムシが生化学的に生成する(ミドリムシ自身が生体内で作り出す)成分を利用して、燃料にする技術開発と実証が行われていたのだが、とうとうバスを動かせるまでになった。
ミドリムシは微生物とはいえ、小学校の理科で顕微鏡でのぞけるほど大きく培養が容易だ。言ってしまえば「藻」なので、放っておいても増える。それを好条件化で培養すれば、生きている限りいくらでも取れるというのがミソだ。
穀物のように作付けや収穫をする必要がないのも良い点だ。ミドリムシそのものは利用価値が高く、直接人間が口にするサプリメントに利用されることもあり、前述のとおり小学校の理科の授業から登場するポピュラーな微生物だ。
将来はジェット燃料?
今回はバスに給油する軽油の代替としての利用だが、ミドリムシから得られるバイオ燃料は性質的にジェット燃料にも好都合なので、将来は航空機にミドリムシ由来の燃料が積み込まれ大空を飛ぶ姿が日常になるかもしれない。
今後の課題は、コストをいかに下げるかだろう。普及すればスケールメリットも享受でき、一層の技術開発で低コスト化も十分期待できる。折からの戦争により燃料革命は環境問題に限らず、安全保障の面でも喫緊の課題になっている。今後の普及に期待したい。
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