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 前週のチェコ共和国、アウトドローモ・モストに続き“バック・トゥ・バック”の連戦となった2022年ETRCヨーロピアン・トラック・レーシング・チャンピオンシップ第6戦ゾルダーは、開幕から快進撃を続けるハンガリー出身の王者ノルベルト・キス(レベス・レーシング/MAN)が土日ともに予選ポールポジションの定位置を得たものの、決勝4ヒートではライバル勢が奮起をみせた。

 土曜レース1でロケットスタートを決めたサッシャ・レンツ(SLトラックスポーツ30/MAN)が、まずはキスからの勝利を奪うと、続くレース2はシリーズ6冠を誇るヨッヘン・ハーン(チーム・ハーン・レーシング/イベコ)が今季2勝目をマーク。明けた日曜の最終レース4も2017年王者アダム・ラッコ(バギラー・ZMレーシング/フレートライナー)が一矢報いるなど、シーズン終盤戦で王者キスに待ったを掛ける展開となった。

 9月9~11日の週末に向けベルギーへの大移動を経た一向は、土曜早朝から雨の予選セッションに挑むと、ウエットトラックでスキルを発揮したボンネットキャブ型の雄、フレートライナーのラッコがファステストを叩き出す。

 しかし続くスーパーポール・セッションでは、今季ここまで連続ポールポジション記録を更新するキスがやり返し、その数字を「10」にまで伸ばすことに成功。3つのセクターすべてでベストを記録する速さで最前列を確保し、0.289秒差の2番手にレンツ、2列目にアントニオ・アルバセテ(Tスポーツ・ベルナウ/MAN)とラッコが並ぶグリッドとなった。

 迎えたオープニングヒートは、双方のグリッドともグリーンライトの瞬間に最終結果が確定するシビアな展開となり、反応速度に勝ったSLトラックスポーツ30の黒いMANが、真紅に彩られたレベス・レーシングのMANを出し抜くことに成功。その背後でも、ラッコのフレートライナーがターン1までのトラクション競争でアルバセテに競り勝ち、そのままチェッカーフラッグを受けた。

 続いてトップ8のリバースグリッドで始まったレース2は、前戦で7位に終わっていたハーンが、リバースポールシッターのアンドレ・クルシム(ドントタッチ・レーシング/イベコ)との“イベコ対決”を制して前へ。そのままギャップを拡大し、独走体制へと持ち込んでいく。

 一方、中段の7番手からスタートした王者キスは、3周目までになんとクルシムも捉えて2番手に浮上してくると、この時点で首位ハーンとの差は7秒だったが、スパートを開始したチャンピオンはみるみるとマージンを削り取っていく。しかし逆転には残り周回数が足りず、チャンピオンは勝者ハーンのわずか2秒遅れでラインを越える結果に。

王者ノルベルト・キス(Révész Racing/MAN)が土日ともに予選ポールポジションの定位置を抑え、連続記録を「11」に伸ばした
レース1はロケットスタートを決めたサッシャ・レンツ(SL Trucksport 30/MAN)が先手を獲る展開に
レース2はシリーズ6冠を誇るヨッヘン・ハーン(Team Hahn Racing/IVECO)が今季2勝目をマークした
ピットレーンで「あわや衝撃の瞬間……」という事態に見舞われたレンツ(右)を、王者キスが労う

■女性ドライバーのハルムが9番手スタートから3位表彰台を獲得

 3位クルシムの背後では、並んでスタートを切ったラッコとアルバセテのバトルに乗じ、レンツがポジションを上げていたものの、最高速160km/hのスピードリミッターが不具合を起こし、速度違反のペナルティでドライブスルーが課せられることに。

 ここでピットエントリーに彼のトラックが接近していることに気づかなかったチームクルーが、直前でレーンを横切り「あわや衝撃の瞬間……」という事態に。しかしこれに素早く反応したレンツが、フルブレーキングで最悪の事態を回避。この結果、さらにロスを喫して13位でレースを終え、アルバセテは4位、ラッコは5位でフィニッシュとなった。

 明けた日曜午前のスーパーポールも、昨季王者自らが設定したゾルダーのラップレコードを更新するオマケ付きで連続ポールを「11」に伸ばすと、そのままレース3を“ライト・トゥ・フラッグ”で制して今季12勝目に到達。2位ハーンと3位レンツに付け入る隙を与えない、完璧なレースを披露した。

 このヒートでシュテフィ・ハルム(チーム・シュバーベントラック/イベコ)に打ち勝ち、8位入賞を決めたシェーン・ブレルトン(TORトラック・レーシング/MAN)がリバースポールから発進したレース4は、背後のクルシムやテオ・カルヴェ(バギラー・ZMレーシング/フレートライナー)のバトルを横目にポジションを上げたラッコとハーンの一騎打ちに。

 クルシムはハーンとの勝負でグラベルに散り、首位ブレルトンは追撃してきたカルヴェと接触してコース上から押し出され、後者のトラックもパンクのダメージを負ってしまう。

 ここで僚友からリードを引き継いだラッコは、背後に迫るハーンを抑えてトップチェッカー。前日の“帝王”と同じく、ようやくの今季2勝目を手にしてみせた。

 さらに表彰台の驚きは3位に飛び込んできたハルムの躍進で、前戦の結果で9番手発進を強いられた彼女は、周囲の脱落にも助けられ素晴らしいドライブを披露し、レンツを抑えてポディウムにまで到達するレースを披露。一方で王者キスは、レンツ、ブレルトンとのバトルでカルヴェと同様にパンクを喫し、成す術なく9位でチェッカーを受けた。

 依然として、選手権ポイントを303点にまで伸ばしたキスの優位は揺るがないものの、235点の2位ハーンに対し、レンツが223点と猛追。2022年ETRCシーズンも残すは2戦となり、続く第7戦は9月24~25日にフランスのル・マン、ブガッティ・サーキットで争われる。

日曜もポール獲得の王者が、レース3を“ライト・トゥ・フラッグ”で制して今季12勝目に到達
僚友テオ・カルヴェ(BUGGYRA ZM Racing/FREIGHTLINER)からリードを引き継いだラッコは、背後に迫るハーンを抑えてトップチェッカー
リバースポールから発進したシェーン・ブレルトン(TOR TRUCK RACING/MAN)は、王者と絡むなど厳しい展開に
前週もアクシデント続きで、今季は苦戦の続くシュテフィ・ハルム(Team Schwabentruck/IVECO)が、9番手から自力で表彰台をもぎ取る快心のレースを見せた