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メディアでは「酷評」も… トヨタ ルーミーが「日本で最も売れてる乗用車」なのはなぜなのか?

 日本一売れてる乗用車、トヨタ・ルーミー。しかしながらベストカーはじめメディアへの登場回数は少なく、正直評価も芳しくない。

 だが日本一の販売台数は日本中のユーザーの支持の証でもある。ルーミーの誕生からミリョクまで、渡辺陽一郎氏に解説してもらおう! メディアの評価との乖離についても考察!

ルーミー販売台数 ※2018~2021はタンクと合算
・2018年:16万0064台
・2019年:16万6168台
・2020年:12万2833台
・2021年:15万1094台
・2022年:6万5525台

※本稿は2022年8月のものです
文/渡辺陽一郎、写真/TOYOTA、ベストカー編集部
初出:『ベストカー』2022年9月10日号

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■売上ナンバー1! ルーミー誕生秘話

 2014年、初代ハスラーの登場をきっかけに、スズキの軽自動車が売れゆきを急増させた。

 軽自動車の販売1位を守りたいダイハツと激しい販売合戦になり、2014年には国内で売られた新車の41%が軽自動車であった(2021年は37%)。

 そこで慌てたのが軽自動車を生産していないトヨタ。

 軽自動車に対抗できる小型車が求められ、ダイハツにルーミーとその姉妹車を2年間で開発させた。

 外観も軽自動車で売れ筋のスーパーハイトワゴンとし、大ヒットした。

軽自動車を作らないトヨタは他社の軽自動車でスーパーハイトワゴンに打ち勝つべく、排気量1Lのルーミーを開発、販売した

■なぜルーミーは評論家&メディアの評判が低いのか?

 短期間で開発したから欠点も多い。

 基本的なメカニズムはパッソと同じだが、車両重量は約200kg重く、1Lエンジンはパワー不足だ。登坂路では粗いノイズが響く。

開発期間はたったの2年と異例の早さだった。故に乗り味はイマイチで評論家やメディアからは酷評を招く結果に

 ターボも2500回転付近でノイズが耳障りだ。操舵感は曖昧で、危険を避ける時にはボディが大きく揺り返す。

 乗り心地も路上の細かなデコボコを伝えて、上下に揺すられ、後席は床と座面の間隔が不足して、足を投げ出す座り方になる。

 座面の柔軟性も乏しい。購入時にはライバル車のソリオを含め、ほかの小型車と比べて判断してほしい。

■ルーミーはなぜこれほどまでに売れるのか

 販売が好調な一番の理由は、軽自動車で人気の高いスーパーハイトワゴンを、小型車サイズへ素直に拡大したことだ。

 開発期間が2年間と短く、軽自動車と異なる価値を追求する時間はない。

 そこでタントやN-BOXの拡大版を開発した。そこが「スーパーハイトワゴンは欲しいけれど、軽自動車は避けたい」と考えるユーザーの共感を呼んだワケだ。

 ルーミーの全長は、標準グレードが3700mmと短く、最小回転半径もカスタムG-T以外は4.6mだ。

 パッソとほぼ同じサイズだから運転しやすい。その一方で全高は1735mmと高いから、車内は広く、後席の頭上と足元にも充分な余裕がある。

「スーパーハイトワゴン×乗用車」の組み合わせが見事にユーザーの共感を呼んだ。「クルマは走りだけじゃなく、トータルの商品力が大切なのだ!」と渡辺陽一郎氏は語る

 後席の背もたれを前側に倒すと、座面も下がって自転車を積める荷室になり、床を反転させると汚れを落としやすい素材が貼られている。

 収納設備も多く、500mLの紙コップが入るカップホルダーも装着した。

 後席側のドアはスライド式で、狭い場所での乗降性もいい。広さと使い勝手は、軽自動車のスーパーハイトワゴンと同等か、それ以上だ。

 価格は最も安い「X」が155万6500円、売れ筋の「G」は174万3500円だから、軽自動車のスーパーハイトワゴンと比べて15万円高い程度に収まる。

 動力性能の余裕も考えると、買い得度が強い。

 長所を書き出してみると、たしかに魅力があるとわかる。

 そして以前はルーミーと姉妹車のタンクが用意されたが、トヨタが全店で全車を売る体制に変わり、2020年9月のマイナーチェンジでタンクを廃止した。

 需要がルーミーに集中して、2021年1〜6月の登録台数は、前年の2倍になった。その後の売れゆきも好調を維持し続けている。

●トヨタ ルーミー(G-T 2WD)主要諸元
・全長×全幅×全高:3700×1670×1735mm
・ホイールベース:2490mm
・重量:1110kg
・パワーユニット:996cc、直3DOHCターボ
・最高出力:98ps/6000rpm
・最大トルク:14.3kgm/2400-4000rpm
・WLTCモード燃費:16.8km/L
・トランスミッション:CVT
・価格:186万4500円


【番外コラム】ルーミーの低評価はメディアにも原因がある?

 販売台数を考えると、自動車メディア界隈のルーミーに対する評価はちょっと低すぎるのではないか?

 渡辺陽一郎氏に問い詰めると、こう分析してくれた。

「試乗の時間は限られるから、居住性や積載性、車庫入れのしやすさなどは細かく見られず、走りのチェックが中心になっちゃう。

それはルーミーにとって不利だよね。

あと、評論家もメディアも趣味目線・クルマ好き目線でクルマを見る人が多くて、子育て世代目線で見る人があんまりいないことも原因だと思うよ」

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