コロナ禍にあった2021年でさえ飲酒運転の発生件数は2198件にものぼる。そして、ウィズコロナの流れが加速するに伴い飲酒運転が増加することが懸念されている。今までの宅呑みで我慢という生活から解き放たれた解放感から「飲んだら乗るな」の気持ちが薄れてしまっている人もいるのではないだろうか?
そこで今回は、「こうすれば速攻でアルコールが体から抜ける」とまことしやかにささやかれている危険な実践法を検証していきたい。
文/室井 圭、写真/写真AC
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酒気帯び運転は決して軽微な違反ではない!!
飲酒運転とは「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」に大別される。
呼気(吐き出した息)1リッターの中に含まれるアルコールの濃度が0.15mg以上検出された場合には酒気帯び運転と見なされる。
呼気中のアルコール濃度が0.15mg~0.25mg未満の場合は3年以下の懲役または50万円以下の罰金と違反点数13点、90日間の免許停止の処分が科せられる。0.25mg以上の場合は3年以下の懲役または50万円以下の罰金と25点、免許取り消しの処分が科せられる。さらに2年間は免許の再取得が認められない。
いっぽう、呼気中のアルコール濃度が0.15mg未満であれば検挙されず、罰金や行政処分、違反点数も科せられない。
ただし、まっすぐ歩くことが難しい、ろれつが回っていない、質問に対して正常な受け答えができていないと判断された場合は、呼気中のアルコール濃度にかかわらず酒酔い運転と見なされる。
つまり、呼気中のアルコール濃度が0.15mg未満であってもまっすぐ歩けなかったり、ろれつが回らなかったり、正常な受け答えができなければ、酒酔い運転と判断されることもある。
酒酔い運転と見なされると、5年以下の懲役または100万円以下の罰金と違反点数35点、免許取消しとなり、3年間は免許を再取得することができなくなってしまう。
酒気帯び運転を軽微な違反と考えている人は大間違いで、免許取り消し、さらに長期間に渡り免許が取得できないとなれば、運転が必須となるような仕事をしている人は仕事を失う可能性すらある。酒気帯びとなれば飲んだ側に100%の非があるわけで雇い主だって情状酌量をする理由もない。
酒気帯びであっても人生が台無しになることも十分にあり得るのだ。
疲れが溜まっている時にはアルコールが抜けにくい
1時間にアルコールが体内で分解される量の目安とされているのが、体重(kg)×0.1。体重が50kgの人なら5gということになる。しかし、体格、体質、性別、年齢、体調などによってその時間は大きく変わってくる。
これはあくまでも目安だが、一般的にビール500ml(中ジョッキ約1杯)を摂取したら、4~5時間以上はアルコールが残ってしまうことがわかっている。
寝不足だったり、肉体を酷使した後にお酒を飲んだ時は要注意だ。肉体疲労はアルコールの分解スピードを低下させることがわかっているからだ。そのため、疲れが溜まっていると感じた時には、たとえ飲酒量が少なく、十分な睡眠をとったとしても体内にはたっぷりとアルコールが残っている可能性も考えられるため、翌朝に運転をすることは避けよう。
もちろん、日付変更線を超えて飲酒をしていたなどの深酒をした場合は、疲れていなくても翌朝の運転は厳禁だ。
嘘がいっぱいのアルコール抜きの都市伝説
飲酒運転はしてはいけないことはわかっている。しかし、誘惑に負けて飲んでしまった……。そんな時にすがりたくなるのが、「アルコールを素早く抜く方法」だろう。どこで聞いたかは覚えてはいないものの、いくつかの方法を知っている、または、「効く」と信じて疑わず、実践しているという人もいるのではないだろうか?
しかしながら、あたかも医学的な裏付けがあるように流布されているアルコールを素早く抜く方法のほとんどは残念ながらまったく効果なしの都市伝説的な方法だ。ここから代表的なものをいくつか紹介しよう。
●水を大量に飲んでトイレに行きまくる
アルコールは肝臓で約90%以上が処理(代謝)され、尿や汗から排出される量は非常に少ないため、いくら頻繁にトイレに行ってもアルコールが抜けることはない。また、肝臓内でアルコールが分解される速度が速まることもない。
とはいえ、飲酒中に水分をとることは非常に重要。これはアルコールを抜くためではなく脱水症状になることを防ぐためだ。アルコールには利尿作用があるため、水を飲まなくてもトイレが近くなる。そこで水分を摂らずに寝てしまうと血液の粘度が上がり、最悪の場合は血栓ができて重篤な事態になることもあり得る。
●サウナや入浴で大量の汗をかく
大量に飲酒すると汗が酒臭いなどと言われることがあるため、汗を大量にかけば汗とともにアルコールがどんどん抜けていると信じている人も多いのでは? これは大間違いどころか、大変危険な行為。
サウナや入浴で大量の汗をかくと脱水症状が進行して、アルコールの排出に必要な水分が足りなくなり、逆にアルコールが抜けにくくなる。
また、前項と同様、血栓などができやすくなるだけではなく、血圧が急激に上昇して脳卒中など、血管系の重篤な疾患に見舞われる恐れもある。
サウナ同様、ジムで汗を流すようなことも大変危険! 飲酒後は安静第一なのだ。
汗が酒臭くなるような人は、肝臓の機能が低下していることが考えられる。肝臓が弱っていると肝臓がアルコールを分解した後に発生するアセトアルデヒドという毒素が皮膚から放散されるため、臭いがするのだ。
●仮眠をとる
クルマの中で2~3時間くらい仮眠をとって酔い覚ましをしてから帰るなんていう不届き者に遭遇した経験がある人もいるのでは?
これはまったく効果がないどころか、アルコールをより長く体内に滞留させてしまう。睡眠中は内臓が休息をとり、働きが低下することからアルコールの代謝速度は遅くなってしまうのだ。
●吐く
嘔吐はまったく効果なし。アルコールが体内に吸収されるスピードは非常に速く、90%超は1時間以内に吸収されてしまう。つまり、嘔吐する前にほとんどのアルコールは吸収されてしまっているからだ。
●ウコンなどの健康飲料やサプリメントを摂る
ウコンやヘパリーゼといった健康食品やドリンクを飲酒前に摂取するとアルコールも早く抜けると信じている人は多い。しかし、それらの食品は肝臓の働きを助けるだけで、飲酒前に飲んだからといってその直後に摂取したアルコールの分解のスピードをアップできるわけではない。
さらに残念なことに、ウコンによる二日酔いの予防効果は、医学的に明確に証明されてはいないのだ……。逆に、摂りすぎると肝機能を低下させることがわかっている。飲酒のたびにウコンを……といった習慣はやめたほうがいい。
ウコンを飲むくらいなら、肝臓の働きを助けるタンパク質を多く含む肉・魚、大豆を使用した料理をつまみにするほうがずっと体に良い。お薦めは、焼き鳥、焼き魚、刺身、枝豆、冷ややっこなどの豆腐を使った料理だ。
微アルなら大丈夫じゃない~番外編~
今大流行している「微アル」。アルコール度数0.5%のビールテイスト飲料が特に人気。微アルのアルコール度数は一般的なビールの約1/10。アルコール度数が1%以下の場合、法律上では酒類に入らないためビールテイスト飲料と表記されている。
そういったことから、微アルならOKと勘違いしている人が続出しているらしい……。メーカーのWEBサイトなどでも注意喚起されているが、微アルはアルコールが含まれるため、ちょっとでも飲めば飲酒運転になるので注意してほしい。
結論としては、医学的にアルコールを素早く抜く方法や薬は存在しない。アルコールは時間が経つのを待つしかないということだ。〇〇をやれば飲んでも大丈夫なんて都合の良い方法はないことは肝に銘じよう。
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投稿 信じちゃいけない! 巷にあふれる「アルコールを素早く抜く方法」(抜けません) は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。