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教習所のルールは50年前に決まった? ブレーキペダルの足、踵をつけるつけない問題の最適解

 ブレーキの踏み方には大きく分けて2通りあります(左足ブレーキは除く)。ひとつは、足を上げてかかとをフロアから離し、上から押さえるように踏む方法。多くの自動車教習所では、こちらを教えているようです。

 もうひとつが、かかとはブレーキペダルの手前に置き、アクセルを踏むときはかかとをフロアにつけたまま、足をひねって踏み、ブレーキを踏むときも、かかとはフロアにつけたまま、ひねっていた足を戻して踏む方法。多くのモータージャーナリストやレーシングドライバーは、後者の「かかとをつけたままのブレーキ操作」をすすめており、世間的にはこちらのほうが正解、とされている印象があります。

 まさかの、教習所で習ったことが「間違い」とされる(かもしれない)、この大問題。はたして、ブレーキペダルを踏むときは、かかとをつけるのが正解か、つけないのが正解か!?? 

文:吉川賢一
アイキャッチ写真:エムスリープロダクション
写真:Adobe Stock、写真AC、エムスリープロダクション

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より確実に操作できる方法を教えている

 自動車教習所で「ブレーキ操作は、足を上げてかかとを浮かせ、ブレーキペダルを上から押さえように踏む」と教えているのは、今から50年以上前、1970年代ごろのクルマには、ブレーキブースターのような倍力装置がなかった(もしくはオプションだった)時代に、より力強くブレーキペダルを踏むことができるようにするため」だった、とされています。

 ただ、1980年代以降のクルマには、ブレーキブースターが備わっているため、踏み込む力が小さくても、強くブレーキを利かせることが可能。今でも教習所で「かかとを浮かせてブレーキを踏む」と教える理由は、緊急時にABS(アンチロックブレーキシステム)を正しく作動させるため、そして、運転初心者がどんな状況でも確実にブレーキペダルを操作することができるように、「足を上げてかかとをフロアから離し、上から押さえるようにブレーキペダルを踏む」と教えているのでしょう。

運転初心者がどんな状況でも確実にブレーキペダルを操作することができるよう、教習所では「足を上げてかかとをフロアから離して踏む」と教えているのだろう(PHOTO:Adobe Stock_mapo)

かかとをつけていると、繊細な操作がしやすい

 ただ、かかとをフロアにつけたままでのブレーキ操作すると、かかとを浮かせてのブレーキ操作よりも、繊細なブレーキ操作がしやすいです(もちろん、かかとを浮かせての操作でも、丁寧なブレーキングができる方もいます)。また、長距離運転で疲れにくいのも、かかとをつけた操作のほう。メーカー純正フロアマットでは、ブレーキペダル付近まで、かかとが付く部分に補強がされているものもあることから、自動車メーカーとしてもかかとを付けてブレーキ操作をすることを前提に設計しているようです。

 この、かかとをつけてのブレーキングについては、「かかとを支点にしてペダルを踏みかえていると、踏み間違えを起こしやすい」といわれることがありますが、踏み間違えについては、足を上げてかかとをフロアから離してのペダル操作のほうが起こりやすい、とする説もあり、どちらでも起こりうることだと考えています。

かかとをつけてのブレーキングは、繊細な操作がしやすく、疲れにくいというメリットがある(PHOTO:エムスリープロダクション)

使い分けできることが大事

 筆者は、どちらが正解とかではなく、「使い分けることが大事」だと考えています。かかとをフロアにつけてブレーキ操作をしていても、強くブレーキをかければ、自然とかかとはフロアから離れますし、足を上げてかかとをフロアから離してのブレーキングは、繊細なブレーキ操作は難しくなりますが、確実にブレーキをかけるという意味では有効。

 かかとをつける、つけないよりも、「いざ」というときにペダルを奥まで踏み込める用意があるかが重要なのではないでしょうか。例えば、ブレーキが踏み切れる位置にシート前後位置があわせてあるか、左足はフットレストできちんと踏ん張れているか(MT車ならばクラッチを奥まで踏み切れるか)、履物は適切か、などのほうが、かかとをつけるつけないよりも、より重要だと考えます。

 現代のクルマでは多くの安全装備が備わっており、緊急時にはドライバーがブレーキペダルを踏む速度から判断して、ブレーキが足りなければ不足分を補ってくれるシステムもありますが、少なくとも現代のクルマでは、ドライバーに責任があります。責任がある以上、確実に操作できるよう、準備をしていくことが、ドライバーの義務。かかとの位置にこだわることなく、常に確実なブレーキ操作ができる準備をしたうえで、カーライフを楽しんでください。

かかとをつけてのブレーキ操作がダメ、ということではなく、いざというときにブレーキを奥まで踏み込める準備がしてあることが重要(PHOTO:Adobe Stock_Mihail)
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