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「なんで意地悪するんだ…」を減らして渋滞解消を!! ご存じですか「ジッパー合流」

 今年も残り1ヶ月余りとなりました。年の瀬が迫り、年末年始をどう過ごすか、検討を始めている方も多いかと思いますが、帰省や行楽地への移動の際に気になるのは、高速道路の大渋滞。

 事故や工事などのほか、道路の形状によるものなど、渋滞の原因はさまざまですが、インターチェンジやPA/SAから本線への合流も、渋滞を引き起こすひとつの要因。合流が原因による渋滞については、「ジッパー合流」と呼ばれる合流の方法で、ある程度回避・緩和することが可能であることがわかっていますが、ジッパー合流についてはまだ知らない人も多く、浸透していないのが実情。高速道路を管理するNEXCOも提唱するジッパー合流とその効果について、ご紹介します。

文:Mr.ソラン、エムスリープロダクション
アイキャッチ写真:Adobe Stock_mapo
写真:Adobe Stock、写真AC、NEXCO中日本

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ランダムに合流することが渋滞を加速

 ゴールデンウイークやお盆などの夏季休暇、年末年始や行楽シーズンの休日など、高速道路を走るクルマが多いときや、事故や工事などによって高速道路本線が渋滞している場合、インターチェンジやPA/SAから本線への合流するクルマとしては、できるだけ早く本線に入りたいところ。

 そのためか、合流可能なポイントに来たらすぐに合流しようとしたり、合流しようと停滞している先行車を追い越して、その先から合流しようとしたりなど、それぞれのドライバーが様々な位置から合流を試みていますが、実はこのランダムな合流は、渋滞をさらに加速させてしまう要因にも。このような渋滞時の合流の混乱を回避するために提唱されている合流方法が「ジッパー合流」です。

規則的な流れをつくるだけでなく、トラブルや事故低減の効果も

 「ジッパー合流」とは、高速道路が渋滞している際、本線に合流したいクルマは加速車線の先頭まで進んで、1台ずつ交互に合流する方法です。ジッパーのように交互に合流することから、ジッパー合流、またはファスナー合流と呼ばれます。

 ジッパー合流では、加速車線と本線のクルマが1台ずつ進むので、どちらかの車線も進まないということがなくなり、混雑はしながらも規則的な流れを生み出すことができます。また、いろいろな場所からの割り込みがなくなるので、トラブルや事故を低減する効果もあります。本線側のクルマからみても、スイスイと横を追い抜かれてイラっとする、1台譲ったのにまた別のクルマに入れてくれと要求されてストレスが溜まってしまう、ということがなくなるでしょう。

 合流車線が短く、頻繁に渋滞が発生している都市高速では、比較的浸透しているジッパー合流ですが、全般的には、まだ十分浸透しているとはいえません。実際に、高速道路や自動車道路の合流に遭遇すると、加速車線の多くのクルマが、いろいろな場所から急いで割り込もうとする様子を見かけます。

ジッパー合流には、規則的な流れをつくるだけでなく、トラブルや事故低減の効果も(PHOTO:写真AC_五差路)

ジッパー合流によって、渋滞による損失時間は約3割低減

 ジッパー合流が、実際に渋滞緩和にどの程度の効果があるのか、NEXCO中日本が実証試験を行っています。試験が行われたのは、2019年11月からE1名神高速道路とE41東海北陸自動車道が接する一宮ジャンクション付近。E1名神上り線で、ジッパー合流を実施するために合流場所にラバーポールを設置し、加速車線の先頭まで合流を延伸するという方法で行われました。その結果は、HP上で次のように公表されています。

 ジッパー合流を始めて2ヶ月間の交通量は、前年と比べてほぼ横ばいながら、渋滞による損失時間は約3割減少したそう。また、渋滞している区間の平均通過時間は、E1名神では約13分から約10分に短縮された、と報告されています。米国での実証試験では、渋滞長さが40%短縮されたという事例もあり、ジッパー合流の効果は公に実証されています。

NEXCO中日本が行った実証試験。ジッパー合流を実施するために合流場所にラバーポールを設置した(画像はNEXCO中日本の資料より)

勇気を出してジッパー合流を

 ジッパー合流が浸透してないのは、まだ多くのドライバーに認知されていなことが主因ですが、例え知っていたとしてもなかなか実行できない難しさがあります。

 例えば、加速車線の途中で、先行するクルマが入ろうとしてしまうと、後続のクルマはそもそも先へ進むことができないし、追い抜いて先頭まで進むと、「少しでも先へ進もうとするズルい運転」だと思われてしまう、また、「先頭まで進んで入れてくれなかったらどうしよう」と心配になってしまうドライバーもいるでしょう。NEXCOは、先の検証結果を踏まえて、渋滞時のジッパー合流をHP上で提唱し、「勇気を出してジッパー合流を」と協力を呼び掛けています。

 ジッパー合流は、合流側だけでなく本線側も認識して、大多数のドライバーが実践してくれないと成立しません。より多くの人にジッパー合流を認識してもらうために、加速車線のクルマを誘導するような分かりやすい表示や、もっと多くの人にアピールする啓蒙活動を推進すべきではないでしょうか。ジッパー合流が当たり前になれば、それだけ渋滞が緩和され、CO2低減にも貢献するわけですから。

ジッパー合流によって、渋滞による損失時間は約3割低減(PHOTO:写真AC_ hakusyu)

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 ジッパー合流は、皆が守らないと意味がありませんが、このような運転マナーは、浸透するのに時間がかかります。混雑するホームで列を作って電車を待つことができる日本人なので、ジッパー合流ももう少し多くの人が参加してくれれば、ルールとして定着することはできると思います。積極的に取り入れ、皆で渋滞を緩和させましょう。

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