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 F1シンガポールGP後に新型コロナウイルスに感染したため、筆者は日本GPを欠席した。国際自動車連盟(FIA)の新型コロナのルールにより、陽性になった場合は週末にサーキットに入ることができないため、この『角田裕毅密着』と『レッドブル&HRC密着』の執筆担当はお休みとなった。急きょ代役として担当していただいた吉田知弘さんと柴田久仁夫さんには、この場を借りてお礼を申し上げたい。

 欠席はしたが、じつは日本GPを取材するために鈴鹿には行っていた。またアルファタウリの広報や取材仲間たちが、角田裕毅(アルファタウリ)の音声データを送ってくれたので、日本GPで角田がどんな戦いをしていたのかはその音声データを通して伺い知ることができた。

 角田の取材は、彼がF1にデビューした2021年の開幕戦バーレーンGPからすべてのレースを現場取材をしているが、今回現場を離れて、逆に初めて気がついたことがあった。それはメディアへの応対がとても丁寧になっていたということだ。その理由は日本GPが行われた鈴鹿には、いつも以上に多くの日本人メディアが取材に来ていて、そのほとんどが現場で角田を取材するのが初めてだからなのかもしれないが、筆者は角田自身がこの数戦で成長していたことも大きく関係していると感じた。

 それをより一層強く感じたのは、日本GPの土曜日にチームメイトのピエール・ガスリーが来年からアルピーヌへ移籍することが発表されたことだ。後半戦に入って、ガスリーの去就に注目が集まっていたとき、角田は何度か「もしガスリーがチームを去るようなことがあれば、自分がリーダーになる覚悟はできている。そのために、残りのレースでガスリーから少しでも多くのことを学びたい」と語っていた。そのガスリーが鈴鹿で正式に今シーズン限りでチームを去ることを発表した。角田がリーダーとしての自覚を高めていたとしても不思議はない。

【角田裕毅F1第19戦密着】
2022年F1第19戦アメリカGP 角田裕毅(アルファタウリ)

 そのことは、アメリカGPが行われているオースティンで、角田の肉声を現場でじかに聞いて確信した。

「来年の目標は、まずはコンスタントにポイントを獲得することだけど、それよりもまず、チームのリーダー役になれるようなドライバーになること。いまはまだピエール(・ガスリー)のようにチームとコミュケーションをとったり、チームから頼られるドライバーにはなっていない。来年はリーダーシップをとれるようなドライバーになりたい」

 ガスリーが2016年のGP2シリーズチャンピオンなら、来年チームメートになるニック・デ・フリースは2019年のFIA F2王者。アルファタウリ在籍3年目となる来年、角田が真のリーダーになるのは簡単なことではない。しかし、「リーダー役になれるよう努力する」(角田)ことは、たとえリーダー役になれなくとも、角田にとってドライバーとしてさらに大きく成長するきっかけとなるはずだ。

 アメリカGPは角田にとって、2023年に向けた開幕戦なのかもしれない。

角田裕毅(アルファタウリ)
2022年F1第19戦アメリカGP 角田裕毅(アルファタウリ)