いまや本誌「ベストカー」名物企画となった「よってたかって」。気になるニューモデルをベストカー編集部員たちが自分の言葉で評価してみようという企画。けっこう人気です。
で、今回はそのちょこっと番外編。今後急速に普及していくこと、同時にそれによる可能性・危険性が問われていくことが確実となるだろう電動キックボード(先月(9月)の終わりには初の死亡事故も起こってしまった)。
以前から電動キックボードを所有してきた自動車評論家・国沢光宏氏とともに、電動キックボードの可能性、そして自分が使うときもクルマの運転時に見かけた時にも気をつけたいあれこれをよってたかってチェック!
※本稿は2022年9月のものに適宜修正を加えています
文/国沢光宏、ベストカー編集部、写真/ベストカー編集部、撮影/平野 学
初出:『ベストカー』2022年9月26日号
【画像ギャラリー】自分が使うときも運転時にも見かけた時にも気をつけたい!! 電動キックボードが苦手なシチュエーション(15枚)画像ギャラリー
■電動キックボードと歩行者、クルマが共存する未来はやってくる
なぜ電動キックボードを取り扱うのか?
今年4月の道路交通法改正により、今後2年以内に一部の電動キックボードを乗る際の免許不要、ヘルメット不要などの規制緩和が行われ、本格的な普及に向けたレールが敷かれたからだ。
ほぼ自転車なみの使い勝手を実現することになる。
メリットは、やはり移動がより手軽になるということだろう。
通勤通学の際に最寄り駅への移動が楽になるし、外食の際に駅から少し遠いところまで気軽に移動できることになる。
観光地でも大いに活用されるだろう。家庭用コンセントで充電できるのもイイ。
デメリットは、違反や事故の増加だろうか。免許不要という性質上、マナー違反や道交法違反は原付などの免許が必要な乗り物と比べると増えるはず。
クルマや歩行者との接触も懸念されるし、ケガの程度も大きくなるだろう。
電動キックボードと歩行者、クルマが共存する未来はやってくる。
自動車メディアたるもの、クルマ側から見た視点だけでなく、電動キックボード側からの視点も持たないといかんぜよ!
ということで、ベストカー編集部員と自動車評論家の国沢光宏氏が公道走行可能な電動キックボードを試乗した。
画像ギャラリーでは電動キックボードが苦手とするシチュエーションを紹介している。
自身で乗る時は注意してほしいし、また、電動キックボードの苦手な状況がわかれば、クルマを運転中に電動キックボードに遭遇した際も動きの予測が立てやすいはず。ドライバー目線でも役立つはずだ。
(TEXT/編集部)
■編集部 マツナガはこう見た!!!
ZERO9に乗ってみて感じたいいところのひとつ目は乗り心地。前後に装着されているサスペンションのおかげで安定感があった。ある程度の凹凸であれば苦にせず快適に乗れた。
電動キックボードを選ぶ際は、絶対にサスペンション付きのものを選んだほうがいい。パワーも結構あって、音羽ニュルのきつい坂でもグイグイ登ってくれた。
逆に物足りないのが、パワーのコントロール精度。カーブを曲がる際にこれが重要なことがよくわかったので改善してほしい。
制動力については、国沢氏とアルバイトの小熊は特に不満はなかったようだが、個人的には時速20km超からの急ブレーキ際の挙動に不満が。
制動力自体は高いのだが、タイヤがロックしてリアが流れて転びそうになるのがイマイチだった。
いろいろケチをつけたが、電動キックボードの運転、すっげー楽しかったッス!!
●編集部マツナガの評価
・パワー感:★★★★☆
・安定性:★★★★☆
・制動力:★★☆☆☆
■編集部 オグマはこう見た!!!
初の電動キックボードがSWALLOWのZERO9となったわけですが、加速感は上々。
30km/h程度まで速度が乗ると安定感が増して気分爽快です。これは楽しい!
一方で苦手なのが低速域。
制御の問題だと思うのですが、クルマで言うとドッカンターボのような感じで、スロットルの開け具合で極端に加速感が変わる感覚です。乗り慣れるまではギクシャクしそうで少し怖い。
もうひとつ苦手なのが緊急回避。
私の運動神経がイマイチなのが主な原因な気もしますが、フルスロットルから障害物を避ける実験では、荷重をかけて曲がろうにも時すでに遅しで、まっすぐ突っ込んでしまう始末でした。
とはいえ、慣れてしまえば楽でしょうし、クルマのトランクにも楽々積めてしまうコンパクトなボディはZERO9の大きな魅力。
旅行でクルマのトランクに乗せて、宿泊先での移動手段として乗るなんて使い方、最高だと思います。
●編集部オグマの評価
・パワー感:★★★★☆
・安定性:★★★☆☆
・制動力:★★★★☆
■自動車評論家 国沢光宏はこう見る!!!
私は初期型と最新型のセグウェイを持っているけれど、その間の進化には驚くべきモノがある!
もはや4年前の電動キックボード、剛性や細部の作り、操縦安定性に至るまでまったくお話にならない。
ちなみに4年前のセグウェイも世界中でシェアリングされてた製品のため、当時トップ水準だった。
しかし4年でたくさんのノウハウを貯めたのだろう。とても扱いやすい製品に仕上がっている。
そんな基準を当てはめて評価すると、今回試乗したZERO9、残念ながら洗練度という点で少々惜しい。
例えばアクセル。指でトリガー引っ張るタイプになっており、身体が動くと大雑把な操作になってしまう。トリガーの角度と場所もブレーキレバーと干渉しており操作しにくく、疲れてしまう。
タイヤサイズも公道を移動しようとするには小さい。最新型のセグウェイ、10インチサイズです。
道路の縦目地を斜めに通過したり、少し大きめの段差など通過する際、タイヤサイズは安全性に決定的な影響を与える。セグウェイは世界中の使い方を分析した結果、10インチになったんだと思う。ただ細かい部品のクォリティはさすがスワロー。リアサスペンションなんか凝ってます。
内容を考えたら価格だって頑張っている。タイヤサイズを見直し改良を加えていけばバッチリかと。
●国沢光宏の評価
・パワー感:★★★★☆
・安定性:★★☆☆☆(2.5)
・制動力:★★★★☆
■まとめにかえて
電動キックボードの決定的な弱点は操縦安定性の悪さにある。
そもそもキックボードは遊びの道具で、自転車のように安定性を追求していない。今回スラロームをやってみたけれど(画像ギャラリー参照)、少し速度を上げるだけで思ったラインをトレースすることすら難しくなってしまう。
背中にバッグなどを背負った状態だと高い位置で重心移動が発生するため、緊急回避操作するとバランス崩す。車道を走る際は大きなネックとなるだろう。
いずれにしろ20km/hを超えたあたりから極端に操縦安定性が悪化する。
無免許で乗れる電動キックボードの上限速度を20km/hに制限するのはいいアイデアながら、その速度で車道を走らせることの危険性も出てくる。車検や型式指定、速度オーバーの取り締まりなどの課題を残す。
(TEXT/国沢光宏)
【番外コラム】注目のスタートアップ「SWALLOW」とは?
代表取締役の金さんがアメリカで初めて電動キックボードを体験した時に衝撃を受け、日本にも広げたいと起業したのがSWALLOW。日本の電動キックボード主要メーカーのひとつだ。
原付一種のZERO9のほか、原付二種のZERO10X、電動バイクのFiidoを製造販売している。横浜や東京(新宿)で試乗会も開催しているので興味のある人は一度参加してみてほしい。
※原付一種:原付免許が必要。最高速度30km/h。原付二種:小型限定普通二輪免許が必要。最高速度60km/h
【画像ギャラリー】自分が使うときも運転時にも見かけた時にも気をつけたい!! 電動キックボードが苦手なシチュエーション(15枚)画像ギャラリー
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