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ランエボの中古車がついに1000万円台に! でも最高値は「X」じゃなくてあいつだった!

 2022年11月、約12年振りにラリージャパンが愛知と岐阜の両県で開催された。惜しくもトヨタは優勝を逃したが、GRヤリスに乗る勝田貴元選手が3位表彰台に上ったことには多くの日本人が元気をもらった。

 そんなWRC、今はトヨタのみがトップクラスに参戦しているが、1990年~2000年代にはトヨタに加えて、三菱、スバルが参戦し、輝かしい記録を残した。

 中でもトミ・マキネンを擁してランサーエボリューションで参戦した三菱は、1996~1999年にドライバーズタイトルを4連覇。さらに1998年にはマニュファクチャラーズタイトルも獲得し、ランエボVIにはその偉業を称えたトミ・マキネンエディションまで登場した。

 そこで今回は、現在でも高い人気を誇るランサーエボリューションの歴史を振り返りつつ、最新の中古車事情を紹介しよう。

文/萩原文博、写真/三菱自動車、ベストカーWeb編集部

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■名車ギャランからラリーの系譜を引き継いだランエボ

1992年9月に登場した三菱 ランサーエボリューションI

 ランサーエボリューションの歴史は、1992年9月に幕を開ける。初代の「I」は当時のランサーGSRをベースとして、操作性向上を目的にボディ各部の剛性を高め、ボディの軽量化と前後の重量配分を考えて、アルミ製ボンネットフードを採用した。

 搭載するエンジンは、先代ギャランVR-4に搭載されていた4G63型2L直列4気筒DOHCターボの改良版。最高出力を250ps、最大トルクを31.5kg-mまで高めると同時に、軽量化と耐久性の向上も図っていた。

 駆動方式は、ビスカスカップリング(VCU)とセンターデフを組み合わせた三菱独自のフルタイム4WDを採用。さらにホイールの空転を防ぎ、トルクを路面にあますことなく伝えるために後輪にVCU式LSDを装備した。

 初代ランサーエボリューションはGSRとRSを含めて2,500台を販売目標台数として販売されたが、わずか3日で完売。2,500台が追加され、合計5,000台が販売された。

 ランサーエボリューションIIは1994年1月に限定5,000台で販売開始。大型のインタークーラーや空冷式オイルクーラーを装着するなどの改良を施し、4G63型エンジンの最高出力は260psに向上した。

 トランスミッションはクロスレシオを採用し、ホイールベースやトレッドも拡大し、タイヤサイズは205/60R15と拡大されている。サスペンションは、スタビライザーやロアアームなどのチューニングを見直している。

 リアに機械式LSDを採用し、コーナー進入時の回頭性を向上させるとともに、エンジンの高出力化に伴い、ブレーキパッドを改良するなど制動性能を向上させた。

 1995年1月に限定5,000台でランサーエボリューションIIIが販売開始。フロントバンパーをはじめ、エアロパーツを一新し、空力特性の向上を図ると同時に迫力あるデザインに変更された。4G63型エンジンは、ターボチャージャーのコンプレッサー変更などの改良を施すことで、最高出力は270psまで向上している。

■ランエボVでボディは3ナンバー化

1998年1月に登場した三菱 ランサーエボリューションV

 1996年7月にランサーエボリューションIVが登場。前年にベース車のランサーがフルモデルチェンジを行い、このエボIVから第2世代となる。

 ランサーエボリューションIVはベース車が変更されたこともあり、新開発のマルチリンク式リアサスペンションを採用。さらに左右のタイヤの駆動力差で、車両のヨーモーメントを発生させる左右駆動力移動システム「アクティブヨーコントロールシステム(AYC)」を搭載し、車両の走行安定性を向上させた。

 搭載されている2Lターボエンジンは4G63型に変わりはないが、大容量インタークーラーの採用、吸排気系の圧損低減、ツインスクロールターボ、高速カムなどの採用により最高出力は280psを達成した。ランサーエボリューションIVは6,000台で限定販売された。

 1998年1月に、ランサーエボリューションVが登場。外観はアルミ製ボンネット&ワイドフェンダー、新デザインのフロント&リヤバンパー、フロント&サイド&リヤエアダム等のエアロパーツを一新し、シリーズ初の3ナンバーボディとなった。

 ワイドボディ化に合わせて、フロントサスペンションのロアアーム延長、リアサスペンションの各アーム取り付け点の変更によるトレッドの大幅拡大(対エボリューションIVでフロント+40mm、リア+35mm)やフロント倒立式ストラットの採用等により、トー剛性、キャンバー剛性を向上させ、旋回時の操安性を向上させている。

 4G63型エンジンは、大容量インタークーラーの採用、ツインスクロールターボチャージャのノズル面積拡大、ピストンの軽量化、ラジエーター及びオイルクーラーの大型化などにより、最高出力280ps、最大トルク38.0kg-mと更にトルクを向上させている。

 また左右のタイヤの駆動力差でクルマにヨーモーメントを発生させるAYC(アクティブヨーコントロールシステム)にフロントヘリカルLSDを組み合わせ、最適な4輪トルク配分を実現、あらゆる走行条件での旋回性能及び安定性も向上させていた。

 1999年1月にランサーエボリューションVIが登場。ここでは新デザインのフロントバンパーを採用し、ランセンスプレートのオフセット化、オイルクーラーベンチレーターやエアブローダクトの採用により冷却効率・空力性能を向上させている。

 リアサスペンションの各アーム類のアルミ鍛造化やリバウンドストロークの増大、ストラット減衰力、スタビライザー等のチューニングを施し、コーナリング時の操安性を向上させた。

 4G63型エンジンは、水温制御方式の変更、ピストンにクーリングチャンネルの追加、エンジンオイルクーラーの大型化により冷却性を向上させた。また、エアインテークホース径の拡大、ターボチャージャーの吸気入口径の拡大等により高回転域での性能、レスポンスを向上させている。

 2000年1月から販売開始されたランサーエボリューションVI「トミ・マキネンエディション」は、史上初の4年連続ドライバーズチャンピオンに輝いたトミ・マキネン選手の偉業を記念して発売された特別仕様車。

 ターマック(舗装路)向けに走行性能を特化させており、エンジンは、中低速でのトルク及びレスポンスの向上を狙い、コンプレッサーホイール径の小型化及び翼形状を変更したハイレスポンス チタンアルミ合金ターボチャージャーを採用した。

 サスペンションは初期応答性を高め、ターマック(舗装路)に照準を合わせた専用チューニングを施したターマック仕様となっている。

■曲がることに力を注いだランエボ第3世代

2001年1月に登場した三菱 ランサーエボリューションVII

 2001年1月にランサーエボリューションVIIが登場。前年5月にベース車であるランサーセディアがフルモデルチェンジを行い、このモデルからランサーエボリューションは第3世代へと進化する。

 ランサーエボリューションVIIは、サスペンション取り付け部及びボディフレーム結合部の補強や、20ヶ所におよぶ専用リーンフォースメントの追加、溶接点の追加、ストラットタワーバーの採用などにより、従来車に対して1.5倍の曲げ剛性を確保し、操縦安定性を向上させた。

 4G63型エンジンはターボチャージャーの改良、インタークーラーの大型化、吸気系の配管取り回しを見直し、吸気抵抗を約20%低減。ノズルインタークーラースプレー(手動切り替え機構付)の採用などの改良を実施することで、最高出力280ps、最大トルク383Nmを実現している。

 駆動方式には、新開発のACD(アクティブセンターデフ)を採用。センターデフの差動制限を、従来のVCUに代えて電子制御油圧多板クラッチとすることにより、走行状況に応じた前後駆動力配分が可能になった。

 50:50のセンターデフの前後輪差動制限力をフリー状態から直結状態までコントロールし、操舵応答性と駆動性能を向上させるとともに、高次元で両立させている。

 ランサーエボリューションVIIIは2003年に登場。4G63型エンジンの最大トルクを392Nmに向上させると同時に、トランスミッションは6速MTを採用した。

 「走る」「曲がる」「止まる」の運動性能を飛躍的に向上させる三菱自動車独自のオールホイールコントロールシステム「ACD+AYC+スポーツABS」は、今回、新たに開発した「スーパーAYC」を採用することによって、さらに優れた運動性能を実現した。

 2004年2月には、ランサーエボリューションVIII MRが登場。販売目標台数は3,000台だった。

 ちなみにMRは「三菱レーシング」の頭文字の略で、三菱自動車の量産車として初のDOHCエンジンを搭載した初代『コルトギャランGTO』で初めて採用して以来、『ランサー』、『GTO』など、高性能スポーツカーのトップモデルに与えてきた伝統ある名称だ。

 ランサーエボリューションVIII MRは、国産の量産車では初となるアルミ製ルーフパネル、BILSTEIN社との共同開発によるショックアブソーバー、BBS社製の鍛造軽量アルミホイール(メーカーオプション)などを採用。

 4G63型エンジンは、高速域重視の出力特性としながら2Lクラストップレベルの最大トルク400Nmを実現。また、電子制御4WDシステム・ACD+スーパーAYC+スポーツABSの制御を細部にわたり改良し、ドライバーとクルマとの一体感を高めた、質感の高い卓越したドライビングプレジャーを追求した。

■名機4G63型エンジンの最終モデルが登場

2005年3月に登場した三菱 ランサーエボリューションIX

 2005年に販売目標台数5,000台でランサーエボリューションIXが登場。伝統の4G63型2Lターボエンジンの吸気側に連続可変バルブタイミング機構(MIVEC)を採用したことで、高回転域における高い性能を確保しながら、燃費を向上させた。

 また、ターボチャージャーのコンプレッサーホイールの材質をアルミニウム合金からマグネシウム合金に変更することで、レスポンスもさらに向上させている。

 リアのスプリングを変更して車高をわずかに下げることで、リヤのスタビリティを向上させるとともに(GSR/GT)、スーパーAYCの効果をより有効に引き出し、操舵応答性も向上(GSR)させている。

 そして、第3世代ランサーエボリューションの集大成として、2006年8月に1,500台限定でランサーエボリューションIX MRが登場する。

 名機と呼ばれた4G63型2L直列4気筒ターボエンジンを搭載した最終モデルで、そのエンジンは、MIVEC(連続可変バルブタイミング)の最適化はじめ、ターボチャージャーのタービンホイール材質をインコネル(ニッケルクロム系合金)からチタンアルミ合金として、コンプレッサーホイール入口径を縮小させたことと合わせ、レスポンスを向上させている。

 サスペンションは、しなやかな特性をもつアイバッハ社製コイルスプリングをビルシュタイン製サスと組み合わせることで、減衰力を最適化することで、穏やかな挙動と優れた接地性を実現させている。

 サスペンションシステムの改良に合わせて、電子制御4WDシステムであるスーパーAYCの制御をよりスポーティな方向にチューニング。左右後輪の駆動力制御量を約10%増大させることで、違和感なく、オンロードにおける旋回性能をさらに向上させた。

 2007年に第4世代となるランサーエボリューションXが登場。これまでのモデルは限定生産だったが、このモデルからは台数に制約のないカタログモデルとなった。

 搭載するエンジンは4B11型2L直列4気筒ターボエンジンとなり、最高出力は280psから2008年に行われたマイナーチェンジで300psまで高められた。

 組み合わせられるトランスミッションは5速MTと6速DCTのツインクラッチSSTの2種類。駆動方式は4WDで、新開発の車両運動統合制御システム「S-AWC」が搭載された。

■中古ではランエボXよりもIXのほうが高い!

2005年3月に登場した三菱 ランサーエボリューションIX。エボIX MRは中古価格が1000万円を突破している

 それでは2022年11月現在の、ランサーエボリューション各モデルにおける中古車相場を見てみよう。

 まずは第一世代のエボI~エボIIIだ。エボIの中古車は3台が流通していて、価格帯は約237万~約297万円。エボIIは5台が流通していて、中古車の価格帯は約250万~約290万円。そしてエボIIIは4台が流通していて、価格帯は約387万~約498万円とプレミアム価格となっている。

 続いてはエボIV~VIトミ・マキネンまでの第2世代だ。エボIVの中古車は14台が流通していて、価格帯は約149.8万~約358万円。エボVは6台の中古車が流通していて、価格帯は約178万~約705万円。一気に高額車の価格が跳ね上がっている。

 エボVIの中古車は19台流通していて、価格帯は約221.8万~約698万円。そしてエボVIトミ・マキネンはわずか1台しか流通しておらず、価格は約399.8万円となっている。

 第3世代ではエボVIIが37台と、中古車の流通台数がグンと増加する。価格帯は約179万~約498万円だ。AT車のエボVII GT-Aは11台流通していて価格帯は約118万~約239.8万円とリーズナブルとなっている。

 エボVIIIの中古車は約40台流通し、価格帯は約208万~約600万円。そしてエボVIII MRは5台しか流通しておらず、価格帯は約310万~約388万円。エボIXは31台流通していて、中古車の価格帯は約248万~約698万円。

 そして4G63型エンジンを搭載した最終モデルのエボIX MRの中古車は約10台流通していて、価格帯は約378万~約1188万円と最高値が1000万円オーバーを記録した!

 エボリューションXの中古車は147台流通していて、価格帯は約129.8万~約918万円となっている。中でもファイナルモデルは23台流通していて、価格帯は約479万~約918万円だ。

 一般的にスポーツカーはファイナルバージョンが最も高くなるのだが、ランエボではファイナルモデルより、名機4G63エンジンを搭載したエボIX MRのほうが高くなっている。

 平均価格はエボXが約288万円に対して、エボIX MRが約629.8万円と大幅に高くなっており、ファイナルモデルの約695万円に迫る勢いだ。新車と異なり、中古車は人気が価格に反映されるため、名機4G63エンジンを搭載した最終進化系のエボIX MRのほうが希少性なども影響して高値となっているのだ。

 それにしても、ランサーエボリューションの中古車相場は値上がり傾向が顕著で、100万円台で購入できる中古車は非常に少なくなっている。ファンにとっては残念な側面もあるが、この傾向は今後も続きそう。手に入れるなら決断は早いほうがいいのかもしれない。

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