ホンダは2022年8月末でシャトル、インサイト、CR-Vの国内生産を終了したことを明らかにした。2022年9月中旬現在ではメーカー、販売店ともほぼ在庫がなくなり、購入することができない状況にある。
ホンダは2021年末までに上級車のオデッセイ、レジェンド、NSXの生産を終了してきた。なぜ、これほどまでに生産終了するのか?
これら3車種は今後復活することはないのだろうか? いまわかっている情報すべてを流通ジャーナリストの遠藤徹氏が解説する。
文/遠藤徹
写真/ベストカーweb編集部、HONDA
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■シャトルはコンパクトワゴンとして人気だった
2022年8月末でついに国内生産が終了となったシャトル、インサイト、CR-V。首都圏にあるホンダカーズ店営業担当者は、
「現段階でマーケットニーズがあり、復活の可能性があるのはシャトルだけであり、当面インサイトは新たに設定したシビックハイブリッドに引き継ぎ、CR-Vについては2023年春に発売予定のZR-Vに引き継ぐので、インサイトとCR-Vの国内販売復活の可能性はないだろう」とみている。
ただこれら3車種はかなり事情が異なる。シャトルはフィットをベースにステーションワゴンに仕立てた人気モデルだった。フィットの上級シフトやレジャービークル、法人の荷物輸送など幅広いニーズがあった。
生産終了に踏み切ったことに対して「売れているのになぜやめてしまうのか。フルモデルチェンジして世代交代すればもっと売れるようになるはずだ」とメーカーの対応に首をかしげる販売店の営業担当者は多い。
ホンダの当面の対応はこうだ。2022年10月6日にフィットをマイナーチェンジするわけだが、ここでSUVテイストの「クロスター」をより遊び志向の仕様にしてシャトル廃止の代わりをさせるとの読みがあるようだ。
今後の展開としては、しばらく間を置いてマーケットニーズの推移を見ながら、本格的な次世代ステーションワゴンの復活を目指す可能性がある。プラットフォーム&基本コンポーネントはフィットないしはシビックをチョイスするものと思われる。
■価格設定を誤ったインサイトは終了もやむなしか
インサイトは従来モデルが不人気であり、モデル廃止はやむを得ない面がある。1.5リッターハイブリッドエンジンを積みながら、上級のトヨタプリウス並みというバカ高い価格設定で対抗させようとした商品戦略上の失敗が要因として上げられる。
2022年6月にシビックハッチバックに2リッターハイブリッドを設定したことで、入れ替えにインサイトを廃止したといういきさつとも関係がありそうだ。
こちらはスポーツバージョンの2リッターハイブリッドであり、インサイトより格上であるため、価格設定はさらに高くなるので、量販はやはり難しいが、シビックブランドを活用することで、活路を目指しているようだが、販売実績ではインサイトとあまり変わらず国内だけでは生き残りが難しいかもしれない。
■後継ZR-V登場の国内ではCR-V復活の目はなし?
CR-Vはこれまでと違い販売実績がさらに厳しく、国内での生き残りが難しくなり、後継モデルのZR-Vに引き継ぐので、国内での復活はないとの見方が強い。
CR-Vはこれまでの世代交代によって、北米を中心とした海外マーケットのニーズに合わせてボディサイズを拡大、クオリティアップすることで上級シフトし、国内マーケットのニーズに合わなくなったことが要因として上げられる。
従来のCR-Vはこれまでグローバルでは成功しているので、海外では引き続き生産販売される方向にある。
後継モデルのZR-V(日本仕様)はこのほど概要が発表された。当初は2022年9月の発売予定だったが、2023年4月に延期に延期された。サプライヤーからの半導体を中心とした部品の供給が遅れて、生産にとりかかれない状況が続いているためである。
ところが、延期されたのにもかかわらず、ZR-Vの受注活動は継続しており、バックオーダーは引き続き上乗せされ、現時点での納期は2023年5月以降に先送りされている。
販売店の受け止め方は「CR-Vよりもはるかにユーザーの反応は良く、ヒットモデルの可能性が高い。大部分はハイブリッドの最上級モデルで占められている。」という。
■ホンダ今後の商品戦略
ホンダは2021年末までに上級車のオデッセイ、レジェンド、NSXの生産を中止しており、今回の3車種を含めると6車種がモデル廃止になったことになる。
今後復活の可能性が否定できないが、トータルのホンダ車の再編縮小傾向を強めているのは確かである。今後の商品戦略として「2035年までに内燃機関から撤退し、すべて電気自動車や燃料電池車に切り替える」との方針を明らかにしている。
したがってこれに沿って開発投資を進めて行くためには、内燃機関の生産販売を抑制することが必要になっている。こうした中長期計画推進の一環がこうした措置に表れているといえる。
となると今回の内燃機関モデルの生産中止は今後も増え、マーケットニーズの高いモデルでもモデル廃止に踏み切る可能性がまだあるともいえそうだ。
シャトルやオデッセイのようなマーケットニーズの高いモデルの復活の可能性を予想できるが、こうしたEVシフトからすると、内燃機関での復活は難しいともいえる。
ただ電気自動車ということであれば復活は考えられる。2035年だとあと7年半以上先になるが、それまでに少しずつ切り替えていくことになるだろう。
■証言:首都圏メーカー資本系ホンダカーズ店営業担当者
「シャトル以外は代わるモデルが存在するので問題はない。シャトルはマーケットニーズがあるので、フルモデルチェンジすればもっと売れるようになるので、新型車で発売してほしいところだ。
フィットかシビックの次期型ではシャトルがシリーズのステーションワゴン版として復活することを期待したい。カローラのツーリングが存在するので、シビックシャトルであれば、成功する確率が高くなるはずだ。
インサイトは商品性が高いもの1.5リッターなのにあの価格の高さだから、売れなかった。プリウスとの対抗では見劣りして負けてしまうケースが多い。これでは存在価値がなくなってしまうのは当然である」
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