9月20日、F1モナコGPについて新たな開催契約が結ばれ、2025年までの3年間、継続することが発表された。しかし伝統のこのグランプリをカレンダーに残すために、主催者側はF1が要求する厳しい条件を受け入れなければならなかった。
プロモーターが支払う料金、サーキット周辺の広告、地元局によるテレビ放映、パドックおよびガレージエリアのセキュリティなどについて、モナコ自動車クラブ(ACM)とF1の間で話し合われた。
両者の話し合いは一時はかなり際どい状況にあり、ACM会長ミシェル・ボエリが地元新聞に物議を醸す発言をした後、今年5月のモナコGPの週末には、F1のCEOステファノ・ドメニカリが、リバティ・メディアのCEOグレッグ・マフェイから交渉打ち切りを命じられたほどだった。
それによってモナコ側はグランプリを失う可能性が現実的に存在することに気付き、危機感を募らせたアルベール2世公が交渉の主導権を握ることを決意した。交渉は再開されたが、複雑な商業上の問題を解決する必要があった。ACMはサーキット周辺の看板に関してタグ・ホイヤーと5年契約を結んでいるが、F1はロレックスと独占契約を締結している。こういった問題を解決するためにさらに4カ月がかかった。
新契約では、モナコのプロモーターが支払う料金は、これまでの1200万ドル(約17億円)から、約2倍に引き上げられた。これはスペイン、エミリア・ロマーニャ、イタリア、オランダ、イギリス、ベルギーなどのヨーロッパのグランプリの料金と同等の額である。ちなみにハンガリーはこれらよりさらに50パーセント高い料金を支払っている。
モナコはさらに、地元テレビ局によるグランプリの放送を諦めなければならなくなった。来年以降はF1TVの担当者がF1とパートナーシップを結んでいる企業の看板が写るようなアングルを選んで放送するようになるため、モナコGP自体のスポンサーのロゴを目にするのは、基本的に現地を訪れた人々のみということになりそうだ。
テレ・モンテカルロの放送は、近年問題視されつつあり、今年のモナコGPでも大きな問題を引き起こしていた。予選Q3でポルティエ出口でセルジオ・ペレスがスピンを喫し、後続のカルロス・サインツがそこに突っ込むというインシデントがあり、そこで予選が終了した。しかしテレ・モンテカルロは、ペレスのスピン直前に映像を切り替え、その後の決定的なシーンを逃がしてしまった。この一件が、F1にとっての決定的な切り札になったこともあり、来年からは、F1TVがモナコGPの放映を完全にコントロールすることになった。
モナコはこれまで保持してきた特権を失い、他のグランプリと同じ待遇で扱われることになった。今後カレンダー内にとどまり続けるためには、他のサーキット同様、施設の改善にも取り組んでいく必要があるだろう。