大きな責任を担うF1チーム首脳陣は、さまざまな問題に対処しながら毎レースウイークエンドを過ごしている。チームボスひとりひとりのコメントや行動から、直面している問題や彼のキャラクターを知ることができる。今回は、マクラーレン・レーシングのCEOザク・ブラウンに注目した。
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アルピーヌとマクラーレンの首脳陣は今年のサマーブレイクにはリフレッシュする時間を取れなかったに違いない。まず、ハンガリーGP終了直後にフェルナンド・アロンソが来年アルピーヌから去ってアストンマーティンに加入するという電撃発表を行った。2023年のドライバーを失ったアルピーヌは、オスカー・ピアストリがチームを離れると彼らに宣言していたにもかかわらず、彼をアロンソの後任として発表した。
アルピーヌのこの発表が、さまざまな論争と推測を引き起こし、マクラーレン・レーシングのCEOザク・ブラウンは悩みを抱えることになった。当時、ブラウンはインディカードライバーに関して法廷闘争の真っ只中にいた。アルピーヌがピアストリとの契約を発表したことで、彼はF1でも同じ立場に立たされることになったのである。
まず彼が決めなければならないのは、「どういう発言をするか」であった。アルピーヌの声明は、彼らが長年サポートし、リザーブドライバーに起用し、将来レースドライバーに昇格させる予定の若いドライバーをマクラーレンが奪ったという印象を与えるものだった。
アルピーヌ代表オットマー・サフナウアーは、ピアストリには誠実さがないと責め、多くのファンがSNSを通してブラウンとマクラーレンを強く批判した。ピアストリを獲得するやり方だけでなく、それによって人気の高いダニエル・リカルドがシートを失うことが確定したことに、大勢が激怒したのである。
ブラウンにとっては難しい状況だったが、最終的にマクラーレンにとっても、ピアストリおよび彼の代理人たちにとっても、沈黙を守ることが最善の方法だと彼らは判断した。彼らは自分たちが正当な契約を有しているという確信があったため、事実が明らかになるまで待つことにしたのだ。
FIA契約承認委員会(CRB)が審査を行うことが決まり、その裁定が発表されるまでの間、サフナウアーは、ピアストリを批判し続けたが、ピアストリとマクラーレンは沈黙を保った。そしてCRBが発表した裁定は、ピアストリとマクラーレンの契約を認めるというものだった。
アルピーヌは、ピアストリに対して正当な契約を与えておらず、将来について具体的なプランを示していなかった。そんななかでピアストリはリザーブドライバーの役割を果たし続けたが、10日後と約束された契約が示されたのは約6カ月後であり、その上、契約内容は合意したものとは異なっていた。そうしてマネージャーのマーク・ウエーバーは、ピアストリの将来を守るために行動を起こさなければならないと考えるに至り、マクラーレンへの移籍を決めたのだ。
CRBの裁定により、マクラーレンが勝者となった。その後も、ブラウンはしばらく沈黙を守り、発言はチーム代表アンドレアス・ザイドルに任せていた。アルピーヌと舌戦を繰り広げなくても、事実が自分たちの正当性を証明していると思ったからだ。
今、マクラーレンとアルピーヌはコンストラクターズ選手権4位の座を激しく争っている。欲しかったドライバーを手に入れることができたことで、ひとつの勝利を手に入れたブラウンだが、コース上でもアルピーヌに勝つことを目指して最後まで戦っていく。