『Supra is Back』のキャッチフレーズで2019年に17年ぶりに復活したGRスープラは、BMWとの共同開発によって誕生。
しかしコンポーネントを共用するZ4とは違う独自の進化を続け、今年(2022年)4月28日には一部改良の概要とともに6MTモデルの新設定が発表された。
6MTが設定されるのはトップグレードのRZのみだが、これまで8ATしか設定のなかったGRスープラが、387ps/51.0kgmのハイパワー3L、直6エンジンと6MTの組み合わせによりどれだけ変貌し、魅力アップしているのかはおおいに気になるところだ。
日下部保雄氏、岡崎五朗氏、山本シンヤ氏の3氏は、スープラ6MTをどう「斬った」のか!?
※本稿は2022年8月のものです
文/山本シンヤ、岡崎五朗、日下部保雄、写真/ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2022年9月10日号
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■「注目の6MTのシフトフィールはライトウェイトスポーツのよう」(山本シンヤ)
2019年に17年ぶりに復活したGRスープラ。
BMWとの共同開発が話題となったが、チームは登場後も開発の手を止めず今年、2回目の改良を実施し、直6、3LターボのRZに6速MTを追加。
GRスープラ用に新規開発され、ギア比はもちろんシフトフィールもBMWと異なる。
その印象は、まるでライトウェイトスポーツのように操作力は軽く抵抗感も少なめなフィーリングで、「カチッと入る」ではなく「スコッと入る」印象。
ストロークは短めで正確性の高さは言うまでもないが、操作時にわずかに感じる“しなやかさ”がフィールに柔らかさと優しさをプラス。
これはトランスミッション各部の絶妙なバランスによるもので、操作時の印象はGR86/GRヤリスに共通するものを感じた。
フットワークも大きく手が入っており全グレードでショックアブソーバーの減衰特性の最適化、スタビライザーブッシュの特性変更、制御系の見直しを実施。
さらに「RZ」は1本あたり1.2kg軽量の19インチ鍛造アルミも採用。
その走りをひと言で言うと「素直」だ。
具体的にはコーナリングの一連の流れに連続性が増したことでクルマの動きの予測がしやすくなった。
さらにクルマの動きもピーキーさが薄れ穏やかになったことでコントロール性も増した。
もちろんハイパワーFRなのでドリフトコントロールは難しいが、挑戦したくなる走りなのは間違いない。
このように新型は「コントロールするのはドライバー」、「懐は深く」、「八方美人ではなくキャラを立てる」、そして「ワクドキ」と、GRの味がより明確になったと感じた。
●山本シンヤの採点表
・ハンドリング:8.5点
・加速性能:9点
・エンジンの気持ちよさ:10点
・シフトフィール:9.5点
・乗り心地:8点
・コストパフォーマンス:7点
(TEXT/山本シンヤ)
■「珠玉のごとき3L、直6エンジンと6MTの組み合わせは鬼に金棒」(岡崎五朗)
MTの魅力は、煎じ詰めれば「エンジンの魅力を骨の髄までしゃぶり尽くせること」にある。
エンジンと駆動輪が機械的に結ばれ、駆動力の断続もシフト選択もドライバー任せ。
クラッチ操作をミスればギクシャクするし、シフトミスすればオーバーレブのリスクもあるが、だからこそMTはエンジンとドライバーの直結感がATとは比べものにならないほど高い。
一切のフィルターをかけることなく、エンジンのキャラクターをストレートに伝えてくる。
スープラの高性能グレードRZが搭載するのはBMW製のストレート6。
こいつはパワーがあるだけじゃなく滑らかさもサウンドもトルク特性も最高。悪いがトヨタや日産のV6とは気持ちよさのレベルが違う。
そんな珠玉のごときエンジンに6速MTを組み合わせたのだから鬼に金棒だ。
狭い足元に3本のペダルとフットレストをレイアウトした関係でペダルはやや右側にオフセットしているものの、クラッチは重すぎず、ミートポイントも広く、何より豊かな低速トルクのおかげで気難しさは皆無。
これなら街乗りでも苦痛を感じることはない。
トップエンドに向かってグイグイとトルクが増していく感覚はEVでは味わえないもの。
艶のあるサウンドを聴きながらエンジンの一番美味しいところだけを自ら選び取って走る感覚はもう最高だった。
サーキットのバンピーな高速コーナーではボディの押さえが利かなくなるケースもあったが、ワインディングや高速道路を含む一般道をメインに考えれば足回りの実力にも高得点が付く。
●岡崎五朗の採点表
・ハンドリング:8点
・加速性能:9点
・エンジンの気持ちよさ:10点
・シフトフィール:9点
・乗り心地:7点
・コストパフォーマンス:9点
(TEXT/岡崎五朗)
■「6MTは17kgの軽量化により前後重量配分が最適化されている!!」(日下部保雄)
3年目にしてラインナップに加わったGRスープラのマニュアルはZF製の6速だった。コンソールから生えたシフトレバーは短く、ハンドルから腕を降ろした位置に球形のシフトノブが構えていて自然に掌に収まる。
ライトウェイトスポーツのように軽くスコスコと入らないが、ガッチリとして頼もしい。ただH型パターンの左右方向にもう少し節度があるとさらにいいと感じた。
少し右にオフセットしたクラッチの踏力はこのビッグトルクに相応しくそれなりに重いが、ミートポイントは適度に広くて使いやすい。
ギア比はクロスレシオのハイギヤード設定。変化するコーナーに合わせシフトを繰り返し、高回転を維持するには都合がいい。
ダウンシフトでは自動的にブリッピングして回転を合わせる機能もある。
ただ直6、3Lターボは低回転から大きなトルクを出すので、高いギアに放り込んで無精な運転をしても応えてくれる。
スポーツカーにとって前後重量配分は特に重要だ。
スープラのMTはATに比較して17kgも軽く空車時で50:50になる。乗車すると少しリア荷重になるのはアストンマーティンも同様だったと記憶する。
シャシー側もショックアブソーバー、ブレスなど細かいリファインを受け、姿勢が動きやすくなっていた。
最新のスープラはワインディングロードがもっと走りやすくなりそうだ。
正直速さならATだと思うが、MTはこんなドライブを楽しく支えてくれるに違いない。
●日下部保雄の採点表
・ハンドリング:6点
・加速性能:9点
・エンジンの気持ちよさ:7点
・シフトフィール:7点
・乗り心地:8点
・コストパフォーマンス:7点
(TEXT/日下部保雄)
●トヨタ スープラRZ 6MT諸元
・全長:4380mm
・全幅:1865mm
・全高:1290mm
・ホイールベース:2470mm
・車重:1520kg
・エンジン:3L、直6DOHCターボ
・最高出力:387ps/5800rpm
・最大トルク:51.0kgm/1800~5000rpm
・価格:731万3000円
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