2022年9月にハリアーが一部改良を行い、RAV4と同じくPHEVモデルが新たに設定された。ハリアーといえば受注ストップで波紋を呼んでいたが、クルマとしての完成度の高さとユーザーの引き合いの多さから言えば、売れ筋モデルがひしめくクロスオーバーSUVのなかでも白眉。そこで、なぜ日本のユーザーにここまで評価されているのか、詳細について細かくチェックしていこう。
本文/渡辺陽一郎、写真/トヨタ、ベストカー編集部
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■納期は超絶長いのに! PHVも追加したハリアーがユーザーの心をつかむ理由
今はSUVが人気のカテゴリーとされ、特に注目される車種がトヨタハリアーだ。この数カ月間は、納期の遅延と受注の停止によって販売を低迷させていたが、2021年の登録台数は1カ月平均で約6200台に達していた。売れ筋の価格帯が350万~450万円の高価格車だが、登録台数は約半額のライズやアクアと同程度だ。
このハリアーが2022年9月26日に改良を行い、10月から販売を開始している。最も注目される改良は、プラグインハイブリッド(充電可能なハイブリッド)を追加したことだ。
基本的なメカニズムは、RAV4プラグインハイブリッドと共通で、直列4気筒2.5Lエンジンにモーターと充電機能を組み合わせる。駆動方式は後輪をモーターで駆動する4WDのE-Fourのみだ。RAV4プラグインハイブリッドを含めて、前輪駆動の2WDは用意されていない。
モーターの動力性能もRAV4プラグインハイブリッドと共通で、最高出力は前輪のモーターが182ps、最大トルクは27.5kgmとされ、後輪側は54ps/12.3kg-mになる。充電機能を採用しないノーマルタイプのハイブリッドでは、前輪側のモーターは120ps/20.6kgmだから、プラグインハイブリッドは62ps/6.9kgmに増強された。後輪側のモーターは、ノーマルタイプのハイブリッドと共通だが、前輪側のパワーアップによって加速性能は力強い。
充電するリチウムイオン電池の容量は18.1kWhで、これもRAV4プラグインハイブリッドと同じだが、余裕のある部類に入る。1回の充電により、WLTCモードで93kmを走ることが可能だ。RAV4プラグインハイブリッドの95kmを若干下回るが、アウトランダーPHEVの85km(P/G)に比べると少し長い。
■価格は張るが、装備は充実
ハリアープラグインハイブリッドのグレードはZのみで価格は620万円だ。高価格だが、装備も充実しており、本革シートなどを標準装着する。ハイブリッドのZレザーパッケージ(514万8000円/E-Four)と価格を比べると、プラグインハイブリッドZは105万2000円高いが、装備をさらに充実させた。
プラグインハイブリッドZには、ハイブリッドZレザーパッケージがオプション設定としているパノラミックビューモニター(8万8000円)、100V・1500Wの電源コンセント(4万4000円)、おくだけ充電(1万3200円)も標準装着される。
さらにプラグインハイブリッドの専用装備として、後席シートヒーターなども標準装着され、これらを価格に換算すると合計約20万円に達する。そうなるとハイブリッドとプラグインハイブリッドの正味価格差は約85万円だ。
しかもプラグインハイブリッドは、補助金の交付対象に入る。申請により交付を受けられると、ハリアーとRAV4のプラグインハイブリッドでは、55万円(2022年度実績)を受け取れる。
そうなるとハイブリッドとプラグインハイブリッドの最終的な実質価格差は、30万円に縮まる。前述のとおりプラグインハイブリッドは、充電機能を備えないハイブリッドに比べて、動力性能も高い。実質30万円の上乗せで、高機能なプラグインハイブリッドが手に入るなら、割安といえるだろう。
ただし、改良を受けたハリアーは納期が超絶的に長い。販売店によると「ハリアープラグインハイブリッドは2022年10月中旬に注文をいただいて、納車されるのは2024年6月以降になる」という。つまり2年近く待たされるから「受注を中止する可能性も高い」とのことだ。
充電機能のないハイブリッドも「Zの納車は2024年5月以降で、それ以外のGやSは2023年7月以降」だから、納期は短くても9カ月を要する。「2Lのノーマルガソリンエンジンは、ハイブリッドに比べて納期が約3カ月短い」としている。
■納車時期を考えると、ガソリンエンジンのGとSがお薦め
以上を踏まえると、ハリアーで納期が現実的なのは、約6カ月で納車できるノーマルエンジンを搭載したGやSだ。内装の質や装備を考えると、ノーマルエンジンのG・2WD(352万9000円)を推奨したい。
プラグインハイブリッドは確かに魅力的だが、納車が2024年6月以降では、待ちくたびれてしまう。納車されるまでに、さらに魅力的な新型車が登場する可能性も高い。
納期遅延の原因は、新型コロナウイルスやロシアのウクライナ侵攻だから、メーカーも被害者だ。それにしてもクルマを購入しにくい時代になった。
ちなみに、トヨタが運営するサブスクリプション(定額制でクルマを利用できるサービス)のKINTOは納期が短い。例えば、ノア&ヴォクシーのハイブリッドは、通常の購入では納期が約10か月だが、KINTOなら車両を手配するルートが異なるために1.5~2か月で手に入る。今はKINTOが納期を短く抑える有効な手段にもなっているが、ハリアーは取り扱いの対象外だ。
ハリアーは先般の改良で、衝突被害軽減ブレーキの性能なども向上させて選ぶ価値を高めた。そのために人気もさらに高まったが、今はパーツの供給状況が悪いため、高人気が裏目に出て納期を延ばしている。
■国内でのハリアー人気の背景には実は3つの理由がある
ここまでハリアーが国内市場で高い人気を得た背景には、3つの理由がある。
まずは商品コンセプトとクルマ作成りだ。初代ハリアーは1997年に発売され、悪路向けとは違う上級シティ派SUVの先駆けになった。
内装はLサイズセダンのように上質で、乗り心地も快適に仕上げ、新時代の高級車として注目されている。そのために初代ハリアーは、海外では初代レクサスRXとして販売され、国内と同様に人気を高めた。
ふたつ目の理由は、ハリアーが商品開発の方針を変えず、初代から25年にわたって着実に進化してきたことだ。2003年に登場した2代目は、世界初のプリクラッシュセーフティシステムを採用した。ミリ波レーダーを使ったセンサーを搭載して、衝突の危険をドライバーに知らせる。今の衝突被害軽減ブレーキの出発点になった。
2013年に登場した3代目は、レクサスRXから独立して日本向けの上級SUVになり、内外装の仕上げも一層上質になり、人気をさらに高めた。
ハリアーが好調に売れる3つ目の理由は、2020年5月に国内のトヨタ全店が全車を扱う販売体制に移行したことだ。従来のハリアーは、トヨペット店の専売だったから、約900店舗が扱っていた。それが2020年5月以降は、約4600店舗が扱うようになり、すべての店舗で売れゆきを伸ばした。
全店が全車を扱うと、トヨタ車同士の販売格差も拡大するから、例えばアルファードは好調に売られて姉妹車のヴェルファイアは落ち込んだ。この流れに沿ってハリアーは売れゆきを伸ばしている。
このようにハリアーは、多額の補助金が交付されるプラグインハイブリッド、トヨタの販売体制の変更に伴う好調な受注、さらに納期の遅延まで、自動車業界のさまざまな動きを反映させている。いろいろな意味で時代の最先端を走るクルマなのだ。
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投稿 日本人にはSUVの「ハリアー」が現在のスタンダード!? なぜユーザーの心を鷲づかみにするのか? は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。