メーターパネル内の燃料計は、燃料の残量を知るために、なくてはならないもの。しかし、燃料計(の指す値)は、あんまり減らないと思っていたら、急に減りが早くなったりするなど、「本当に正確なのか!??」と疑問に思っている人もいることでしょう。
燃料計の仕組みやその精度、精度に影響を与える様々な要因について、ご紹介します。
文:Mr.ソラン、エムスリープロダクション
アイキャッチ写真:写真AC_ mos0815
写真:Adobe Stock、写真AC
燃料液面の高さで残量を推定
メーターパネル内の燃料計は、実際に燃料の量を計測しているわけではなく、燃料液面の高さをレベルゲージで計測し、それを燃料量に換算しています。レベルゲージとは、アーム型フロー式液面計という装置のことで、液面に浮かぶフロート(浮き袋)とコンタクトアーム、可変抵抗器で構成されます。コンタクトアームの先端にフロートが取り付けられ、反対側は可変抵抗器の接点と繋がっています。
燃料を消費すると、フロートは、燃料液面と連動して下がり、可変抵抗器の接点は抵抗値の大きい方に移動。ユニットには、定電圧(12V)が印加されているので、抵抗が大きくなって燃料計への供給電流が減少して、燃料計の針はE(エンプティ)側に動きます。給油によって燃料が増えると、作動は燃料が減る場合と逆の動きとなり、フロートが上がって可変抵抗器の抵抗値が下がり、燃料計へ供給される電流が増えて、燃料計の針はF(フル)側に移動します。
以上のように、燃料計は、液面の高さの変化をベースとしているため、坂路を長時間走行したり、急旋回や急加減速のような過激な走行を長時間続けたりすると、燃料計の指示値が影響を受けます。坂道を走行しているときに、突然燃料計の指示値が上がったり、下がったりするのは、このためです。
燃料計が半分を指していても、燃料残量が半分というわけではない
坂道や急旋回・急加速等の影響がなくても、燃料計が指す値は、必ずしも燃料タンク内の燃料量を精度よく示しているわけではなく、指示値が半分を指しているからといって、燃料残量が半分というわけではありません。
燃料計の精度が下がる最大の理由は、燃料タンクの形状の影響です。タンクの断面積が上から下まで同じ形状であれば、フロート位置の計測によってある程度の精度は確保できますが、燃料タンクはスペースの制約の大きいフロア下後部に配置され、しかもできるだけ大きな容量を確保するため、タンクは凸凹の多い複雑な形状となっています。そのため、燃料液面高さと燃料量の間にリニア(比例)な関係がなくなり、燃料量の推定精度が下がってしまうのです。
なかには、形状に合わせて指示値をチューニングして精度を上げているクルマもありますが、それをモデルごとに燃料タンク形状に合わせて行うのは現実的ではありません。したがって、多くのクルマは、燃料計の値は目安であることを留意する必要があります。
最初はゆっくり、半分を過ぎると急激に指示値が下がることが多い
燃料計に関しては「満タン付近の動きはゆっくりで、半分を過ぎた頃から急速に減る」「満タン付近はなかなか減らない」というように、燃料計が指す値の変化にリニア感がないと感じている人も多いのではないでしょうか。
「最初はゆっくりで半分過ぎてから急速に減っていく」というのも、タンク形状の影響です。一般的な燃料タンクの形状は、下半分は小さく、上半分が大きい逆円錐形状になることが多いため、最初は燃料液面が下がるまでに時間がかかるのです。まだまだ大丈夫と油断していたら、いつの間にか燃料がなくなったということもあるので、注意が必要です。
またガソリンスタンドで満タンにした直後は、指示値は満タン(F)付近からある程度走行しても動きません。燃料計のF点は、タンクに入る燃料の上限レベルで決まっていますが、ガソリンスタンドで満タンにすると、その上限よりさらに上のゾウさんの鼻のような形状の給油口部まで給油されるので、給油口に入っている燃料が消費されるまでは、指示値はF付近から下がらないのです。
ちなみに、タンク容量はタンク単体の容積なので、給油口からタンクまでのホース部分は含まれません。したがって、タンクを空にして満タンにすればタンク容量以上に燃料は入ります。
燃料残量警告灯が点灯しても50km程度は走行可能
レベルゲージユニットには、燃料残量警告灯のためのサーミスタも装着されています。サーミスタは、温度によって抵抗が変化するセンサーで、燃料に浸かっているときには冷やされて抵抗値は高く、サーミスタが燃料から露出(液面が低下)すると抵抗値が下がる特性を持っています。サーミスタの取り付け位置は、燃料計の指示がEに近づいて、燃料がいよいよ残り僅かというタイミングで、警告灯が点灯するように設定されています。
警告灯点灯時の燃料残量に関しては、レベルゲージの精度が良くないこともあり、統一された基準があるわけではなく、クルマによって異なります。一般的には、最初に点灯した時の残量は4L~6L程度が多いですが、それ以上のクルマもあります。安全サイドで考えて、50km程度走行できれば、どこかのガソリンスタンドにたどり着けるという考え方で、警告灯の点灯タイミングは決められるようです。
燃料残量警告灯も燃料の液面の変化で反応するので、坂路を走行したり、過激な運転をすると、点灯したり消えたりします。いずれにせよ、警告灯が点灯したら早めに給油することです。あせってガソリンスタンドを探すと、精神衛生上も良くないですし、事故も起こしやすくなります。
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ガス欠しそうになって、冷や汗をかきながらガソリンスタンドを探した経験は、誰でも1回ぐらいはあるのではないでしょうか。燃料計の指示値を見て、残り何リッターあると考えるのではなく、例えば指示値が1/5になったから、あと何キロ走れるというように、燃料量でなく走行距離で経験的に認識する方が確かだと思います。
【画像ギャラリー】クルマの燃料計ってほんとに正確!?? 燃料計の仕組みと精度に関するあれこれ(7枚)画像ギャラリー投稿 え…燃料計「半分」は、満タン時からあと半分走れる…わけではない? 燃料計の計測方法とは は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。