三菱ふそうトラック・バスは、 100%子会社でFUSOのバスを製造する三菱ふそうバス製造が新事業として「ボディプリント事業」および「バスリニューアル事業」をそれぞれ開始した。
文:古川智規(バスマガジン編集部)
いまではすっかり定着した広告表現手法
事業は大きく分けて2本建てだ。ボディプリント事業は従来より低コストかつ納期を短縮し塗り替えも容易になる。バスリニューアル事業は、長年愛用されたバスの内外装を経験豊かな専門スタッフが施工する。
最近はバス車内のポスター広告や、サボ式や貼り付け方式の広告に代わり、ラッピングバスという手法がとられることも多い。
しかしボディプリント事業はラッピングとは異なり直接ボディに印刷する。これは同社が車両のメーカーを問わず、トラックやバスおよびその他の車両を対象に技術を提供する。
本事業の開始に あたって導入したオートボディプリンターが、インクジェットプリンターの仕組みでボデーに画像データを直接プリントする。
凹凸や湾曲のある素材へのダイレクトプリントが可能で、一般的なマーキングフィルムを張り付ける従来のフィルムラッピングと比 較して低コストかつ短納期での仕上がりが可能ということだ。
コストは従来の4~5 割の低減、納期はおよそ3分の1の短縮を見込む。また特殊溶液を用いることで、何度でも塗り換えが可能。
本事業は同社が生産の効率化を図るべく行ってきた様々な作業の自動化の検討の中で、従来は職人の手作業で行っていたボディラッピングのフィルム張り付け作業の自動化手段として開始を決定した。
車両をリニューアルでさらに長く大切に使うのだ!!
バスリニューアル事業は、バス製造の経験豊かな専門スタッフが、長年使用されたバスの内外装を新車のように生まれ変わらせる。ボデーの再塗装、窓ガラスの交換、シート生地張替え、床材張替え、各種機器交換という様々なご要望に応え、さらに長く使用できるようにすることを念頭に置いたものだ。
施工デモ車両の写真をご覧いただければ分かるが、同社がバス車体の半分だけをリニューアル施工したものだ。立派に生まれ変わっているのが見てわかる。バス事業者は自家用の乗用車とは違い、毎年の車検の他に事業者での点検や整備、工場での重整備を行っている。
機関やシャシーが本当にダメになると廃車にするしかないが、実際にはそこまで使い込むケースはそう多くはない。それでもリニューアルを事業とするからには、昨今のバス事業を取り巻く事情もありそうだ。
走行距離は半端ないが…
バスの走行距離は自家用乗用車のそれとは比較にならないほど長い。しかしエンジンそのものがダメになることはそうそうなく、整備をすれば乗用車ではとっくに廃車になっている年式でも現役で走っている。
それでもバス事業者は定期的に新車を導入し、押し出しで廃車を出し、それらのバスは中古市場に流れる。もちろん中古のバスを積極的に導入する事業者もあるが、十分に整備されてきたバスなので引き続き走るには何の支障もない。
都市部の大手バス事業者が地方の系列バス事業者に、早めに配車し中古車として供給源になることは日本ではよく見られる供給経路だ。それでも昨今の公共交通機関を取り巻く状況は厳しさを増し、新車を導入できても運転士がいない、運転士がいても新車を導入する余裕がない等のミスマッチが起こっている。
収益改善の切り札になり得るか?
このような事情から中身は大丈夫でも外観や内装が陳腐化してくると使いたくてもサービスの低下につながりかねないので、リニューアル事業をバス製造メーカーが行うことには一定の意義はあるだろう。
またバスのラッピングについてもコストがかかると、インパクトがあるバスを走らせることは可能でも広告の出稿が減り、バス事業者の広告収入減にもつながりかねない。インクジェットプリント方式でラッピングをしてしまえばコストが下がる分だけ、広告収入増に貢献できる期待値が上がる。
未来のバス復権に向けて期待
一昔前のように多くのバスメーカーやコーチビルダーが存在していれば、バス事業者にとっても乗客にとっても日本式のサービスが生かされた、特定事業者仕様の多種多様なバスがあちこちで見られるのかもしれないが、残念ながら現在では標準化されたバスが基本だ。
こうした取り組みで少しでもバス事業者のコストが下がり、収益改善ができれば時間はかかるかもしれないが、乗務員の待遇改善や乗客へのサービスにも手が回るようになるだろう。そういうことも期待しながら、これらの事業を見守りたい。
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