2022年シーズンで7年目を迎えたハースF1チームと小松礼雄エンジニアリングディレクター。3連戦の真ん中、第15戦オランダGPでは初日からセットアップが決まっていたこともあって、ミック・シューマッハーが好調ぶりを見せていた。ところが決勝レースではタイヤ交換時にミスが続出。ミスによるロスを取り返そうと奮闘したシューマッハーは、入賞には届かずも及第点のレースを披露した。
コラム第11回は前編・後編の2本立てでお届け。後編となる今回は、オランダGPの現場の事情を小松エンジニアが振り返ります。
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2022年F1第15戦オランダGP
#47 ミック・シューマッハー 予選8番手/決勝13位
#20 ケビン・マグヌッセン 予選18番手/決勝15位
3連戦の2戦目は、昨年復活したオランダGPです。今年はザントフォールトの最終コーナーにDRSゾーンが追加されました。それでも基本的に追い抜きが難しいサーキットに変わりないですが、DRSゾーンになったのはよかったと思っています。
この週末、ミックは最初から持ち込みのセットアップがよかったので、ケビンを上回るタイムを残していました。一方で、ケビンの持ち込みセットアップがよくなかったとは思っていません。それよりも、彼は12年ぶりにここで走ったということで、サーキットも大きく変わっており、習熟に手こずっていました。
ここに来る前にシミュレーターで走っていなかった(ケビンはシーズン中にシミュレーターに乗るのを感触が濁るという理由で特に嫌います)とはいえ、F1ドライバーレベルでここまでサーキット習熟に時間がかかるのは考えものです。路面状況の変化についていけなかったのも、やはりここで自分のベースラインがしっかりと確立できていなかったことが影響していたと思います。
レースでは、ウチにとって最も使いやすいミディアムタイヤでスタートしました。ミックは1周目にタイヤを上手く使えず、順位をふたつほど落としました。それに比べてケビンはいつものように1周目は見事に3台抜いてポジションを上げましたが、2周目のターン2進入で攻めすぎてコースアウトしてしまい、すべてを無駄にしてしまいました。
ミックは1周目こそ苦労したもののその後はなかなかいいペースで走ってくれました。ソフトタイヤでスタートしたフェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)が12周目にピットインしたので、これをカバーするために13周目にピットインをして再びミディアムタイヤを装着。しかしこの際にフロントジャッキのトラブルがあり大きくタイムロスをして、一気にポイント圏外に落ちてしまいました。
その後はなんとか挽回しようとプッシュして前を行くピエール・ガスリー(アルファタウリ)と周冠宇(アルファロメオ)に追いついたのですが、抜くところまではいかず、逆にタイヤがタレ始めて後ろから来たバルテリ・ボッタス(アルファロメオ)に追い抜かれてしまいました。ここでこのタイヤに見切りをつけ、ハードタイヤに交換して最後まで行くためにピットイン。このピットストップで今度は左フロントタイヤの交換に手間取り、想定外なことにダニエル・リカルド(マクラーレン)の後ろでピットアウトすることになりました。結果、リカルドに数周詰まり、ミックはさらにタイムロスをしました。
44周目の角田裕毅(アルファタウリ)のトラブルでバーチャルセーフティカー(VSC)が出た際には2台とも再びピットストップを行い、これでミックは1周後にピットインしたセバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)を逆転することに成功しました。レース再開後にそのベッテルに抜かれてしまいましたが、ベッテルは青旗無視による5秒ペナルティを受けていたため、ミックは13位フィニッシュとなりました。
ミックは8番手スタートをポイントフィニッシュに繋げることはできなかったものの、及第点のレースをしたと思っています。ピットストップの問題がなければ、アロンソとランス・ストロール(アストンマーティン)の間でレースができたと思うので入賞は可能でした。2スティント目にタイヤを酷使したのもピットストップでのロスを取り返そうとしてのことなので、一概にミックを責められません。
ピットストップに関して言えば、今回は6回のストップのうち、5回も問題がありました。フロントジャッキ、ガンの問題、そして左フロントタイヤの交換に手間取ったのが3回と散々でした。フロントジャッキの問題はイタリアGPの前に解明し対策を施しています。ガンの問題はすべてをイタリアGPの前に解決することはできないので、できる限り最も新しくサービスされたものを使います。(第12回イタリアGP編に続く)