11月26日、栃木県のモビリティリゾートもてぎで、ホンダレーシングスクール鈴鹿・カートクラス(HRS-K)の特別講習会が行われ、HRSのアンバサダーに就任したセルジオ・ペレスが登場。スクール生とともにデモンストレーションレースに参加した。
走行終了後に行われたスクール生向けのQ&Aセッションでは、スクール生はみな英語で直接ペレスに質問を投げかけ、ペレスは熱心にひとつひとつの質問に答えた。ここでは、2011年のF1デビューから12年が経過し、ベテランF1ドライバーのひとりとして数えられるペレスが、4輪レースデビュー前の若いHRS-Kスクール生に向けた言葉をお届けする。
Q:F1ドライバーになるには何が一番必要ですか?
「一番重要なのはやはり、どんなレースでもクルマに乗った後は、必ずメモを取ること。そのときの感触やすべてを書くことが重要だ。たとえばウエットだったりダンプだったり、その時々の状況で自分がどんなパフォーマンスを出せたのか、もしくは出せなかった理由だね」
「たとえば、2位に10秒差をつけて優勝したとしても。次は20秒差をつけて勝つためにはどうすればいいのか。そういう細かいことを全部メモに書くことが非常に重要だと思うんだ。ステップ・バイ・ステップで伸びていくためには、やはり自分のパフォーマンスを完全に意識することが大切だ」
「そして、みんなよりもいい結果を出すためには、クルマや走りだけではなく、クルマを離れた時のことも忘れてはいけないよ。常に自分の体調をベストに保つことも大事だから、そういった細かいところもこまめにチェックすることが成長に繋がると思う」
Q:レース中、どのように自分をコントロールしていますか?
「とても大切な質問だね。やはり、自分の目標を忘れないことが大事だと思う。1シーズン終えて、自分が何位で終われるかが重要だ。たとえば、どこかのレースで、『クラッシュしそうなバトルだけど、もう少し頑張れば、オーバーテイクできるかも』というときも、よく考えて、どこまでいくかを判断することが大切だ」
「その時々のバトルだけではなく、シリーズ戦はシーズンの最終的な結果が大事なんだ。だから、バトルの際には、時には少し抑えることも重要だ。どんなバトルをしていても、シーズンの結果を見込んでおくことが大事だから、時には心をフラットにすることが忘れないでほしい」
「いいレースができる日もあれば、そうでないレースもある。他のドライバーの方がクルマがいい、ということもあるだろうけど、自分の目標を忘れずに。最後までフラットな思考で、着実に頑張ることが重要だ」
Q:今までドライブしてきた中で、一番難しかったレースカテゴリーはなんですか?
「今振り返ると、一番苦戦したのはドイツのADACフォーミュラBMWかな。メキシコから始めてヨーロッパに出たころのレースだね。あのシリーズだけが使っていたユニークなタイヤと、経験のないサーキットに、15歳の僕は苦戦した。そのシリーズに出ている他の若いドライバーはサーキットもよく知っていたし、タイヤにも慣れていた。だから僕はいつも後の方を走っていたんだ」
「でも、諦めずに経験を積めばいいと自分自身に言い聞かせて頑張ったんだ。イギリスF3に本当に小規模なチーム(編註:Tスポーツ)から参戦した時も同じだね。ドライバーは僕ひとりでチームメイトもいない。そのときのエンジンはホンダ(編註:無限ホンダ)だったね。僕ひとりで5〜6台体制の強豪チームと戦うことになり、思うような結果は出せず、悔しい思いをした。でも、それも自分の経験だと思うようにしたんだ。『僕は速いんだ』、そう自信を持って最後まで諦めずに頑張ったよ」
Q:レース前はどのように過ごしていますか?
「まずは首などのストレッチをしたり、自分自身をウォームアップするんだ。それからエンジニアとのやり取りは非常に重要だね。それからタイヤの状況の確認だ。自分が履くタイヤが、今どういう状況であるかとかね。そういったさまざまな事象を把握してから、レースを迎えているよ」
■ペレスが若いドライバーたちに願うこと
「最後にみんなにぜひ伝えたいことがある。今君たちが取り組んでいるレーシングカートを、全力でエンジョイしてほしいと思う。今は走りながら将来のことを考えるのではなく、今を楽しんでほしい」
「何故かと言うと、F1ドライバーになったり、カートからどんどん上のカテゴリーにステップアップしたあとに、『あのときは楽しかった』、『もっとこうすればよかった』と思い返してほしくないからだ」
「だから今の、この瞬間を思う存分楽しんで、心から味わってほしいと願っているよ。(日本語で)ありがとう!!」