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タイヤはクルマの生命線!! 事故を防ぐために押さえておくべきは足元!

 タイヤはクルマの挙動をコントロールする重要な部品で、バーストなどのトラブルが発生すれば大事故につながりかねない。にもかかわらず、メンテンナンスをなおざりにしている人は多い。2021年度のJAFロードサービスの出動理由に関する調査データでも、高速道路における出動理由の1位は「タイヤのパンク・バースト・エアー圧不足」で2万1189件、一般道においても1位の過放電バッテリーに続き2位で36万9670件となっている。

 今回はタイヤに関するトラブルとその対処法について検証。頭の片隅に置いておけばトラブルを防げるだけではなく、いざという時にパニックにならずにすむはずだ。

文/入江 凱、写真/写真AC、イラストAC

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タイヤのトラブルの種類と原因

タイヤはクルマの生命線!! 事故を防ぐために押さえておくべきは足元!
ゆっくり空気が抜けていくスローパンクチャーは気づきにくいため、そのまま走行を続けてしまいがち。バーストなど、さらに深刻なトラブルを招く可能性があるため要注意だ

■パンク(スローパンクチャー)
 タイヤの空気が抜けてしまうパンクはよく知られているが、なかでも厄介なのが、徐々にタイヤの空気が抜けていくスローパンクチャーと呼ばれる現象だ。

 道路に落ちている釘などを踏んでしまったとしても、よほど大きな穴が開かないかぎり一気に空気は抜けないのでそのまま走行できてしまう場合が多い。そのため気づかないうちに少しずつ空気が抜け、走行が難しいレベルになってやっとパンクしていることに気づくことになる。

 異物による破損以外にもタイヤ自体の摩耗や傷、劣化によるひび割れや、大きな衝撃によってホイールリムが変形したことによる空気漏れもスローパンクチャーの原因となる。

■スタンディングウェーブ現象
 クルマの重量や走行した際にかかる負荷によって接地面が潰れて、タイヤにたわみ(形状の変形)が生じる。空気圧が不足していると通常よりもたわみは大きくなり、元に戻る力が弱くなってしまう。

 たわみが元に戻りにくい状態で高速走行をすると、タイヤが大きく波打つように変形してしまうスタンディングウェーブ現象が発生する。この現象は空気圧不足だけではなく過積載によっても引き起こされることがあり、そのまま走行を続けるとタイヤが熱を持ち、タイヤの内部構造が破壊されて最終的にはバーストを引き起こすことがある。

■バースト
 さらに危険なのが走行中にタイヤが破裂するバーストだ。大きな破裂音とともにタイヤが破裂すると急激にハンドルがとられて制御不能となってしまう。

 パンクした状態、空気圧が不足した状態で高速走行すると前項のスタンディングウェーブ現象が発生し、タイヤがバーストしてしまう。他にもタイヤの側面(サイドウォール)は接地するトレッド面よりも薄いため、ここが劣化していたり、異物が刺さることもバーストの原因になる。

■ハイドロプレーニング現象(アクアプレーニング現象・水膜現象)
 濡れた路面を走行する際、タイヤの排水が追いつかず路面とタイヤの間に水の膜ができてしまう現象のこと。水の膜によりタイヤは路面から浮いた状態となって、グリップがまったく利かず操作不能に陥ってしまう。

 タイヤは接地面に切られた溝を通して排水しており、溝の高さが摩耗などで減っていると排水能力も低下してハイドロプレーニング現象が起きやすい。また、溝が残っていても空気圧が不足した状態や、タイヤの回転方向を間違えて装着すると正しい排水性能が発揮できない。

 単純に水の量が多かったり、スピードの出し過ぎでもうまく排水ができずに水の膜ができてしまうことがある。

■タイヤの脱落
 走行中にタイヤが外れてしまう脱落も十分にありうるトラブルだ。ホイールボルトが折れるといった部品の破損によっても引き起こされるが、タイヤ交換の際に規定のトルクで締め付けていなかったり、タイヤ交換をしても走行後に増し締めを行っていないなどの基本的な点検、整備を怠ることが主な原因となる。

タイヤにトラブルが起きた時の前兆や対処法は?

タイヤはクルマの生命線!! 事故を防ぐために押さえておくべきは足元!
高速道路や幹線道路などでパンクをして走行不能となったら、安全を確保しつつ携帯電話などから♯9910をダイヤルする、非常電話を使用して通報する。路肩での作業は絶対ダメ!

 ここではタイヤトラブルが起きた際の前兆や対処法をいくつか紹介しよう。ただし、一部の作業は作業自体に危険が伴うだけでなく、慣れない作業でミスをすると結果的に大きな事故を招く恐れがある。そのため、無理はせず基本はプロ(ロードサービス)に任せたほうが無難だ。また、作業をする場合は周囲の安全を確保したうえで行ってほしい。

■パンク
 パンクは「左右に車体が傾いている」、「ハンドルがとられる感覚がある」、「タイヤからカチカチという異音がする」といった症状で気づくことができる。

 高速道路、一般道のどちらであっても走行中にパンクに気づいた場合は、安全に停車することを最優先に。ハザードを点灯させて周囲に異常事態であることを知らせつつ減速し、路肩や駐車場に停車しよう。

 ただし、高速道路上ではさらなる事故を招く危険があるため絶対にタイヤ交換などの作業をしてはならない。ゆっくりと路肩に寄せて停車したら、発炎筒・停止表示器材を車両後方に設置して速やかにガードレールの外に避難し、道路緊急ダイヤル(#9910)に電話をする、または設置されている非常電話で通報しよう。

 一般道の場合は平坦で、駐車場のような安全に作業できる環境が確保できたらスペアタイヤへの交換やパンク修理キットを使用した応急処置を行おう。

 ■スタンディングウェーブ現象
 小刻みな振動や車体のブレ、ハンドルが重くなるといった前兆に気づくことができれば緩やかに減速をすることで収まる。しかしこの前兆は非常に気づきにくく、特に音楽を聴いていたりするとバースト直前まで気づくことができないことがある。そのため、高速走行をする前には、ガソリンスタンドなどで空気圧の確認を行っておくことが必須だ。

■ハイドロプレーニング現象
 ハイドロプレーニング現象が起こると、氷の上を走っているようにタイヤの接地感がなくなってしまう。発生した時点で制御不能となるが、焦って急ブレーキやハンドルを切るとグリップが復活した瞬間にクルマが予想外の挙動をして大事故につながる可能性がある。

 接地感がなくなったら慌てずに軽くアクセルを踏み続ける。するとエンジンブレーキと水の抵抗により自然と減速してグリップが戻ってくる。急ハンドルを切る、ブレーキを踏む、急にアクセルを戻すといった操作をしないようにしよう。雨の日はスピードを出し過ぎない、水たまりを避けるといった心がけだけでも大きくリスクを減らせる。

 積雪や凍結路に強いスタッドレスタイヤは水で濡れた路面にも効果的と思われがち。しかし、雪上でグリップするための細かな溝や、柔軟なゴム素材が水を吸収しすぎてしまうため、むしろ完全なウェット路面においてはハイドロプレーニング現象を起こしやすいと言われている。

 最近ではスタッドレスタイヤの排水性も向上してきているものの、推奨される使用環境ではないので、シーズンが終わり次第ノーマルタイヤに履き替えることをお薦めする。

■タイヤの脱落
 ガタガタといった異音や振動が前兆となるため、異変を察知したらすぐに停車してホイールナットの緩みを確認する。緩みがあればそれ以上走行はせずに増し締めを行う必要がある。

一番重要なのはトラブルを起こさないこと! 日常的なチェックを心がけよう

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ひび割れや劣化はもちろんだが、タイヤに関するトラブルの多くは空気圧不足によるもの。ただし、空気圧を高めすぎても偏摩耗など別のトラブルを招くので適正値内に収めよう

 重大な事故につながりやすいタイヤトラブルのほとんどは、基本的な点検や心がけで防ぐことができる。

 まずはタイヤの状態をチェックするクセをつけておこう。傷や摩耗、ひび割れなどは目視で簡単に確認できるはずだ。溝の残りも確認し、スリップサインが出ていればすぐにタイヤ交換をしよう。

 タイヤの空気圧チェックも習慣化しよう。特に高速道路を走行する前には必ずチェックしておきたい。空気圧の規定値は運転席のドアを開いた部分に記載されている。セルフ式ガソリンスタンドにも空気入れが設置されているため、空気圧の確認、補充をすることが可能だ。

 また、定期的にタイヤ交換することも忘れないように。タイヤは時間が経つにつれ油分が抜けて柔軟性が失われていくうえ、紫外線にさらされることでゴムの劣化が進む。そのため、溝が残っていたとしても定期的に交換する必要がある。

 タイヤメーカーやJAFでは5年以上経過したタイヤは、たとえ走行距離が延びていなくても点検を受けることを推奨している。タイヤのサイドには製造年と週が刻印されているので、それを目安に交換時期の目安をつけておこう。

 タイヤ交換をした後も走行したらガタがないか自分で確認することを忘れずに。タイヤ交換時点では規定トルクで締められていたボルトナットがしばらく走行することで緩む「初期なじみ」という現象が起きる可能性がある。これからの季節はスタッドレスタイヤに交換する人も増えるので特に留意してほしい。交換直後は様子を見ながら走行し、必要があれば増し締めを行おう。

 忘れがちなのがスペアタイヤやパンク修理キットの点検だ。いざパンクした際にスペアタイヤの空気圧が足りないなんてことにもなりかねない。スペアタイヤに交換する手順、パンク修理キットの使い方、必要な工具が揃っているかにもチェックしておこう。

タイヤトラブルのNG行動

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釘が刺さっていたりすると焦って抜きたくなるかもしれないが、抜くことで空気が一気に抜けてしまい、ちょっとした移動も困難になる可能性が高い

 最後にタイヤトラブルに遭遇した際にやってしまうと危険、または状況が悪化する可能性があるNG行動をいくつか紹介しよう。

■パンクしたまま走行する
 スローパンクチャーの場合はある程度の走行は可能だが、そのまま走り続けるのは危険。走行しながら空気圧が下がっていけばスタンディングウェーブ現象やハイドロプレーニング現象といったトラブルが起きやすいからだ。また、タイヤが潰れてしまうほど変形すると衝撃を吸収できなくなるため、ホイールやサスペンションなどタイヤ以外の部品が大きなダメージを負う可能性もある。

■タイヤに刺さった釘などを抜く
 タイヤに刺さっている釘などの異物は抜いた途端に一気に空気が抜けてしまい、移動すら難しくなる恐れがある。基本的には走行を避けてロードサービスに連絡することが理想だが、目の前にカーショップやガソリンスタンドがある場合には、抜かずにゆっくりと移動して修理を依頼しよう。

■路肩でタイヤ交換などの作業をする
 高速道路上での作業は絶対にNGだが、一般道でも見通しの悪い夜間や、交通量の多い道路で作業を行うとさらなる事故を招く危険があるので避けよう。駐車場のような安全が確保できる環境がない、そこまで自走できないのであればロードサービスに依頼しよう。

■パンク修理をしたタイヤや、予備タイヤで走り続けない
 クルマに積載されている予備のタイヤにはノーマルタイヤと同じ「スペアタイヤ」と、ひと回り小さい緊急用の「テンパータイヤ」の2種類がある。省スペースや軽量化を目的にしているテンパータイヤはあくまでも緊急用であり、耐久性や走行性能はノーマルタイヤよりも低い。

 そのためテンパータイヤに交換して走行できるようになったからといってそのまま履き続けたりするのはダメ。特に、高速道路などを長時間走ることは非常に危険だ。

 同様にパンク修理キットを使用したタイヤも使い続けるのも危険。薬剤で塞いだ穴が衝撃を受けることで再び開いてしまう可能性がある。

 いずれのトラブルも、応急処置をした後は必ず点検を受けるようにしよう。

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