高速道路の制限速度120km/h区間が増加している。制限速度が引き上げられることにより、事故が増えるのでは? といった声が聞こえてきそうだが、既に120km/h化を行った路線での事故が大きく増加したというデータはないという。
それどころか、制限速度120km/h化によって高速道路の交通マナーが良くなっているという声も聞こえているのだ。この状況の真相について、国沢光宏氏が解説する。
※本稿は2022年10月のものです
文/国沢光宏、写真/Adobe Stock(メイン写真:naka@AdobeStock)
初出:『ベストカー』2022年11月26日号
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■制限速度が上がると交通マナーも向上する!?
新東名を皮切りに少しずつ高速道路の制限速度120km/h化が進んでいる。
10月12日には東北道の岩槻付近~佐野藤岡付近の40kmも120km/hになった。
東関道の四街道付近~成田JCT付近のように120km/h化を前提とした110km/h制限など行うケースも。
いずれにしろ従来より追い越し車線を流れる速さはググッと高くなります。
興味深いことに2年以上前に120km/h化した新東名を見ると事故の増加などなく、むしろ交通マナーは徐々によくなってきているという。
なぜか? 以下説明しよう。
高速道路で起きるあおり運転の原因のほとんどが、追い越し車線の居座り走行である。
「あおられた人」に対するアンケートを見ると、驚いたことに「追い越し車線を走行し続けていたから」と答える人も多い。
わかっていて居座ることに衝撃を受けるけれど、そのなかに「制限速度で走っているんだから抜くほうが違反!」というワケワカラン輩も混じる。
そもそもクルマの速度計には誤差があり、皆さん自車のメーター基準で制限速度を主張してます。
また、大型トラックだと速度リミッターで上限速度が決まっている。
走行車線にいる2~3km/h遅いだけの大型トラックを抜くのに延々と追い越し車線を占拠すると、後ろについた乗用車は100km/h制限区間でも、10km/h以上遅い速度を強いられてしまう。
大型トラックのドライバーさんだって逆に自分が10km/hもガマンさせられたら怒るかと。
実際、大型トラックの速度リミッターはメーター読み95km/hほどで作動するため、トラック側も「100km/h近いんだからいいだろう」ということなんだと思う。
これが120km/h制限になると大型トラックと普通車の制限速度差は大きく広がる。
となれば車線を塞がれる側の乗用車のイライラが大きくなること確実。あおり行為こそしなくても、パッシングされたりすることは増えることだろう。
ちなみに「パッシング」は「抜きたい」という意思表示。しつこくやらなければ問題なし。
そもそも大型トラックが3車線ある区間で一番右の追い越し車線に出てくるのは道交法違反。
それに対し「抜きたいから譲ってね」の意味合いを持たせたパッシングであれば何の問題もない。
大型トラックのドライバーとしても120km/h区間で追い越し車線に出るのは気が引けるだろう。
静岡県警も追い越し車線を走る大型トラックの取り締まりを行っている。100km/h制限だとイマイチ取り締まれなかったのだろう。
同じく120km/h以下で走る自分勝手な乗用車(同じく走行区分帯違反)もパッシングの対象。120km/hで走ろうという人からすれば、ケンカ売りながら走っているのと同じ。
結果、新東名は交通量の少ない時なら欧州の高速道路のように「追い越したら走行車線」という走り方をする人が増えてきた。
チャンと走ればあおり運転だってされないです。
日本全国で120km/h化が進めば高速道路のマナーはよくなると思う。
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