レッドブル・レーシングが2021年F1コストキャップ規則に違反し、上限額を超過していたことが明らかになり、他チームからは厳しいペナルティを求める声が相次いでいる。レッドブルとFIAは合意について協議、レッドブルの創設者ディートリッヒ・マテシッツ氏の死去を受けて、話し合いが一時中断された後、今週半ばから再開される予定となっている。
2021年からF1チームに対するコストキャップが導入され、この年の支出上限額が1億4500万ドル(約212億円)に定められた。各チームが提出した財務書類の監査を行ったFIAは、今年の10月10日にその結果を発表。2021年にレッドブル・レーシングは手続き上の違反に加え『軽微な支出超過違反(Minor Overspend Breach)』を犯していたこと、アストンマーティンは手続き上の違反を犯していたことを発表した。
『軽微な支出超過違反』は、コストキャップ上限額の5パーセント未満の違反で、それ以上になると『重大な支出超過違反(Material Overspend Breach)』として扱われる。しかし5パーセントは725万ドル(約10億円)であり、決して小さな額ではない。
レッドブルは、FIAの発表に対し、違反は行っていないと主張した。しかし、フェラーリ、メルセデスをはじめとする、上限額を守ったと認められたライバルチームたちからは、違反者には重いペナルティを科すべきだとの声が上がっている。マクラーレンCEOザク・ブラウンは、アメリカGP前に、FIAに書簡を送り、レッドブルの名前は出さずに、「支出超過違反は不正行為である」と強く批判、軽いペナルティで済まさないよう要求した。
アメリカGPの週末、ホーナーはあらためて、レッドブルは違反を犯していないとの主張を繰り返すとともに、FIAに手紙を送ったブラウンに関して、「他のチームから不正な行為をしたと非難されたことに深く失望した」「偽りの主張だ」と憤りを示した。
これに対してブラウンは自身の主張を曲げてはいない。また、マクラーレンのチーム代表アンドレアス・ザイドルは、違反者に厳罰を下すことの重要性を訴えている。
「我々には、FIAの人々に対しても、チームの従業員に対しても、義務がある。コストキャップの導入により、我々チームは、従業員に影響を与えるような重大な措置を取らなければならなかった。人員を削減しなければならず、従業員に対して減給や賃金凍結を受け入れるよう依頼しなければならなかった。これは非常に重大な事態だ」
「しかし同じ時期に、特にふたつのチームでは、信じられないような積極的な人員の採用が続いた。彼らは信じられないようなサラリーを提示し、信じられないような福利厚生を提供している。今の新しいF1の世界において、どうすればこのようなことが可能なのだろう。我々は従業員から、物事を正しく行っているのかと責められる」
アルファロメオ代表フレデリック・バスールは、違反者に厳しいペナルティを科さなければ、コストキャップ規則が無意味になると主張した。
「そうしなければ、ビッグチームは一年の終わりに罰金を支払うことを前提に5パーセント近く超過する準備を始めるだろう。そうやって圧倒的な技術的優位性を手に入れるのだ。罰金はひとつの手段だが、ビッグチームにとっては、いくら多額の罰金でも、もしそれを払うことでタイトルを獲れるのであれば、抑止力にはならない。つまり、ペナルティは翌年以降のパフォーマンスに影響するものでなければならない」
ハースF1チーム代表ギュンター・シュタイナー代表は、レッドブルはスポーツ上のペナルティを受けるべきだと思うかという質問に対し「イエス」と答えた。
「(予算を余分に使うことは)最低重量を下回ったり、燃料を多く使ったりするようなものだ。パーツの半径が3ミリ違って、それで速くなるわけでなくても、リザルトから除外されるのと同じだ。それは不正行為なのだ」
「だがルールにペナルティが書かれているので、それを尊重する必要がある。『不正をすれば、リザルトから除外される』とは書かれていない。適切なペナルティを見つける必要があるわけだが、それは意味のあるペナルティでなければならない」
ホーナーは、アメリカGPの週末、現状を尋ねられた際に、FIAから『違反容認合意(Accepted Breach Agreement)/ABA』のオファーを受け、話し合いを行っているところだと語った。ABAを結ぶ場合、チームは違反を犯したことを認めてFIA側が決めたペナルティを受け入れなければならないが、ペナルティの範囲は限定される。