フェラーリが前回優勝したのは、7月のオーストリアGPのことであり、その後の5レースで、勝ち星から見放されている。シーズン当初のあの目を見張るようなF1-75の速さは、いったいどこに行ってしまったのか。フェラーリの失速をF1i.comのニコラス・カルペンティエルが技術的な面から分析、3つの理由を挙げた(全3回連載)。
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7月末のハンガリーGP以降、フェラーリは、予選ではかろうじてレッドブルに対抗できているものの、決勝レースではすっかり躍動できなくなった。その一番の理由は、タイヤが熱くなりやすいというF1-75の特性から来ている。逆に言えば熱が入りやすいわけで、予選ではそれが有利になる。しかし決勝では、タイヤが持たないのだ。特にブダペスト、スパ、ザントフォールトは、レース中にリヤタイヤがオーバーヒートする傾向が強く、シャルル・ルクレールもカルロス・サインツも、熱劣化を抑えるためにペースを落とさざるをえなかった。そしてモンツァでは、シーズン序盤のイモラやマイアミのように、左フロントタイヤが早く消耗してしまった。
つまりフェラーリはラップタイムは相変わらず速いが、タイヤの持ちの悪さによってレースペースが乱れてしまうのだ。これは主に、空力的な要因からくるものと考えていいだろう。フランスで導入された新しいフロアは、確かに絶対的なダウンフォースを増大させた。しかし一方で、クルマのバランスを崩す原因にもなっていると、マラネロのエンジニアたちは考えている。そこでその仮説を確かめるために、モンツァで行われた金曜日のフリー走行で、サインツに従来型のフロアで走行させた。
これについてマッティア・ビノットは、こう説明している。
「モンツァで比較走行を行ったのは、データを集め、ファクトリーで分析し、何が起こっているのかを完全に説明するためだ。というのもここ数戦のレースではタイヤの劣化が激しく、マシンのバランスに問題があったのは確かだったからね。高速コーナーと低速コーナーでバランスが崩れ、タイヤがオーバーヒートし、パフォーマンスが低下してしまったのだ」
「このアンバランスは、車体空力のアップデートを重ねていく過程で起きた現象だと、我々は考えている。F1-75が本来の性能を発揮できるウィンドウは、去年までのマシンほど広くない。セッティングの可能性を狭める袋小路に入ってしまった。より大きなダウンフォースを求めるあまり、パフォーマンスを失ってしまったということだ」
ビノット代表のコメントに、聞き覚えはないだろうか? 2018年のフェラーリも、SF71Hのシーズン中の開発で大いに迷走した。ロシアGPで導入した新型サスペンションがタイヤの作動を複雑にし、チームは後戻りを余儀なくされたのだ。その結果フェラーリはメルセデスに追いつくことなく、シーズンを終えた。
さらに言えば、この年および2017年も今季同様少なからぬ戦略的なミスを犯し、多くのポイントを失った。これもまた、タイトルに届かなかった要因の一つだ。どうやらフェラーリはそんな苦い経験から、あまり多くの教訓を学んでいないように思える。
(第2回に続く)