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 三菱ふそうトラック・バスは11月19日、川崎製作所構内において、無人自動けん引車(AIT=Autonomous Intelligent Tugger)を用いた、工場内搬送のデモンストレーションをメディアに公開した。

 今回のAITは自動運転×遠隔管制技術を搭載し、本来人の手で行なっている工場内搬送の半自動化を目指すもの。

 この計画には三菱ふそうの他に、フランスの自動運転ソフトウェア、スタートアップのEasy Mile(イージーマイル)社、同社車両の日本導入を手掛ける長瀬産業、遠隔操作技術を開発中のパナソニックHDが参画し、4社による実証試験をふそうの川崎工場内で実施した。

文・写真/フルロード編集部


「ファクトリーオブフューチャー」を掲げる三菱ふそうの取り組み

 三菱ふそうは「ファクトリーオブフューチャー(未来の工場)」という先端技術の投資を通じて、生産現場の効率をあげる取り組みを2017年から行なっている。その活動の一環として、無人けん引車の可能性に着目。このほど導入の検証を行なう実証実験を開始した。

 実証実験は無人けん引車が2台のトレーラを引くというもので、エンジン製造工場からエンジンを積み、組み立て生産ラインまで運搬する約900mの距離を自律走行することを想定。今回は実際にはエンジンは積まず、工場に出入りする人の少ない週末に限定して行なわれた。

2台のトレーラを引く無人自動けん引車。本来であれば同様のトレーラに6基のエンジンを搭載し、生産ラインまで運搬している

 無人自動けん引車は空港などで実績のあるTLD社の自律走行型電動トラクタ「Trct Easy(トラクトイージー)」を採用。同車は、最大けん引重量は25トン、最高走行速度は時速15kmで走行でき、無線通信機能や予測制御、交差点や横断歩道での発進・停止の判断機能が備わる。

 システムとしてはイージーマイル社の自動運転ソフトウェアが搭載されているほか、今回新たにパナソニックHDが開発中のさまざまな自動運転モビリティを遠隔から統合制御する「X-Area Remote(クロスエリアリモート)」のAI制御モジュール(エッジシステムと呼ばれる)が搭載された。

自律走行と遠隔操作の役割

 自動運転は事前にマッピングされたデータをもとに、車両に搭載されたGNSS(GPS)やカメラ、LiDAR(レーザーを照射し周囲を3Dで測定するセンサー)を統合的に駆使し走行する。

 マップ上をトレースする自動運転は確立されつつある技術だが、実際の工場の場合は、人や車両が行き交い、通路上にモノが置かれる可能性も出てくる。

今回の実証実験では、安全にリスク回避が行なえるとして設定された最高速度、時速11キロで走行し安定して稼働することを確認

 そうしたシーンでこの車両がとる回避行動は「停止」だ。そして自動運転が止まった場合は、クロスエリアリモートにより管制センターにいるオペレーターが介入し、遠隔操縦により車両移動等を行なって自動運転を復帰させる。

 あえて難しい部分はリモート技術に任せることで自動運転を実用的にしたクルマなのである。いっぽうで、オペレーター要員を確保する必要があり、1台を運用するのでは意味がない。

 クロスエリアリモートでは、車載カメラの映像・音声データをLTEモバイル通信を用いてクラウドにアップロードし、AIのアシスト技術により、複数台(10台以上)を1人のオペレーターが管理することが可能になっている。

パナソニックが実演した、トラクトイージーを遠隔操縦するデモンストレーション。オペレーターがルート上に置かれたパイロンを避けて、自動操縦に復帰するまでを披露した

 三菱ふそうによると、今回の実証実験は第1段階とし、自動運転車両への周囲の認知を広めつつ3段階のフェーズを経て実用化につなげたい考え。フェーズ1はエンジンを積まず週末に限定した自律走行及び遠隔管制。フェーズ2では工場が稼働している期間。最終のフェーズ3は実際にエンジンを載せた状態で検討を行なうとしている。

 実用化への予定は未定としながら、来年の2023年早々にはフェーズ2の実証実験を開始する予定だ。

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