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「救急車だって忙しいし…」「そんなこと言ってる場合じゃない…かも??」救急車を呼ぶときに覚えておくべきいこと

 近年、救急車の出動件数・搬送人員数が年々増加傾向にあるという。総務省によると、コロナ禍前の2019年の救急出動件数は664万人で、搬送人員は598万人。その5年前となる2014年は、救急出動件数598万人、搬送人員541万人であり、5年間でいずれも10%以上増加していることになる。また、救急車の現場到着時間と、病院収容所要時間も年々伸びているそうだ。

 ただ、救急車で搬送された人のうち、約45%が入院を必要としない軽症であるとのこと。消防庁は、緊急性の高い症状の傷病者のところへできるだけ早く救急車が到着できるよう、救急車の適時・適切な利用を呼び掛けているが、「適時・適切」といわれても、急に自らが傷病者となった、もしくは急に傷病者を目の前にした状況で、冷静な判断をすることはなかなか難しいもの。

 どんなときに救急車を呼ぶべきか、また呼ぶ際にはどんなことを伝えるべきか、そして救急車を呼んだらどんなものを用意しておくべきか、消防庁の資料をもとに、ご紹介しよう。

文:吉川賢一、エムスリープロダクション
アイキャッチ写真:Adobe Stock_ jaraku
写真:Adobe Stock、写真AC、消防庁

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人口が減少しても、救急出動件数は増加していく見込み

 救急車に関しては、症状に緊急性がなくても要請する事例が問題視されている。消防庁によると、「蚊に刺されてかゆい」「海水浴で日焼けした箇所がヒリヒリする」「今日入院予定日だから病院へ行きたい」「病院で長時間待つのが面倒だから救急車を呼んだ」という理由で要請してきた人もいるとのこと。また、救急車ではなくても、休日や夜間の救急外来を、「日中は仕事だから」とか「平日は休めない」という理由で受診する人もいるようだ。

 救急車も救急医療も限りある資源であることは、コロナ禍を経験してきた私たちは十分に理解しているはず。消防庁の推計によると、今後、人口が減少傾向となっていく中でも、救急出動件数は増加を続ける見込みとされており、本当に必要な時に、誰もが安心して利用できるよう、「医療の適時・適切な利用方法」は考えておく必要がある。

消防庁による、救急出動の現状と将来推計の資料。救急車の現場到着時間及び病院収容時間は年々伸びているが、令和2年の救急車で運ばれた人の傷病程度は、45%が軽傷だったという(消防庁「救急車を上手に使いましょう」資料より)

こんなときは迷わず呼ぶ

 消防庁によると、「こんなときはためらうことなく呼んでほしい」という症状としては、手足のしびれ、呼吸困難、高熱、ふらつき、視界が二重になるといった症状が突然現れた、けいれんがとまらない、大量の出血や広範囲のやけど、意識がないもしくはもうろうとしている、血を吐いた、笑うと口や顔の半分がゆがむ、顔半分がしびれる、ろれつが回らない、視界が狭くなる、など、明らかにいつもと違って様子がおかしい場合だそう。

 お子さんの場合は、唇の色が紫になったり、嘔吐がとまらない、虫に刺されてじんましんが出て、顔色が悪くなった際などもためらうことなく救急車を呼んでほしい、とのことだ。また高齢者の場合は、自覚症状が出にくい場合もあるので、本人が大丈夫と言っていても、周囲が判断して対処する必要があるそうだ。

 そうはいっても、医療従事者でなければ、どんな症状がでているのか説明できないことも考えられるし、明らかにいつもと違うのかも、判断が難しいこともある。そうした場合には、119番で救急車を呼ぶ前に、各自治体が用意している救急相談窓口に相談するとよい、とのこと。

 また、消防庁が作成した全国版救急受診アプリ「Q助」でも、画面上で症状を選ぶだけで、急な病気やけがの際、病院に行くタイミングや救急車が必要なのか、緊急度に応じた対応を支援してくれるそうだ。もちろん無料のアプリなので、いざというときのため、ダウンロードしておくとよいだろう。

消防庁が作成した全国版救急受診アプリ「Q助」では、画面上で症状を選ぶだけで、対応を支援してくれるそう。無料なので、いざというときのため、ダウンロードしておくとよいだろう(PHOTO:Adobe Stock_ japolia)

外に出て案内すると、救急車の到着が早くなる

 また、救急車を呼んだ際、スムーズに対応してもらうためには、保険証や診察券、お金、靴、普段飲んでいる薬(お薬手帳)、乳幼児の場合は母子健康手帳や紙おむつ、哺乳瓶、タオルなどを用意しておくと便利だそう。また到着した救急隊に、事故や具合が悪くなった状況、救急隊が到着するまでの変化、行った応急手当の内容、傷病者の情報(持病やかかりつけの病院、飲んでいる薬や医師の指示等)などをわかる範囲で伝えるとスムーズな対応ができるそうだ。

 そして、救急車ができるだけ早く到着してもらうためには、応急手当をしている人以外にも人手があるならば、救急車が通りそうな道まで案内に出ると、到着が早くなるとのこと。一刻も早く適切な処置をしてもらうため、できる範囲で協力をしよう。

救急車を呼んだ際は、救急車が通りそうな道まで案内に出ると、到着が早くなるとのこと(PHOTO:Adobe Stock_xiaosan)

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 消防庁は、救える命を確実に救うため、緊急度の判定基準を作成し、救急医療を効果的に提供する体制をつくっていく、としている。利用する側としても、本当に必要な時に、迅速かつ十分な医療を受けることができるよう、電話相談窓口やアプリなどを活用して、緊急度に応じた医療にアクセスするよう、日ごろから意識しておく必要がある。緊急走行中の救急車に道を譲るのと合わせて、心がけたい。

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