2022年F1第22戦アブダビGPで各チームが走らせたマシンを、F1i.comの技術分野を担当するニコラス・カルペンティエルが観察し、印象に残った点などについて解説。今回は、ドライバーズランキング2位争いを繰り広げたシャルル・ルクレール(フェラーリ)とセルジオ・ペレス(レッドブル)の戦いに焦点を当て、なぜルクレールがペレスに勝てたのかを探る。
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フェラーリの2022年マシンF1-75の特徴は、タイヤの消耗が激しいこと、のはずだった。ところが最終戦アブダビGPでのシャルル・ルクレールは1回ストップ作戦を敢行し、2回ストップで速さに勝るセルジオ・ペレスに抜かれることなくレースを終えることができた。その理由は何だったのだろう。
マックス・フェルスタッペンの今季15回目の優勝は、順当な結果だった。しかしその背後では、メキシコ、ブラジルでメルセデスに食われたフェラーリ勢が再び上位に返り咲き、より緊密な争いを繰り広げる結果となった。
通常ならタイヤの劣化が激しいフェラーリのルクレールが、なぜ1回だけのピットストップで走り切れたのか。一方でタイヤマネジメントの巧さに定評のあるペレスが2回ストップを余儀なくされ、それでも追いつけなかったのはなぜだったのか。
金曜フリー走行でフェラーリは、控えめな改良を施したフロアをテストしていた(上の画像参照)。走り出すとF1-75は予想以上に速く、パドックの多くの人を驚かせた。フェラーリのパフォーマンス・エンジニア、ジョック・クリアは、「フェラーリマシンのタイヤデグラデーションが激しいというのは、単なる迷信だよ」と、切って捨てた。
「確かにタイヤの摩耗が酷いレースも、いくつかあった。しかしそれには、ちゃんとした理由がある。シーズン後半に一気に速くなったレッドブルに対抗しようと、ドライバーたちが苦戦したことと関係があるということだ」
「シーズン前半は(レッドブルと)同じくらい速かったし、タイヤのデグラデーションもそれほど大きな差はなかった。時には彼らよりもいい時もあったくらいだ。しかし速いマシンが相手だと、やはり違う。ドライバーはタイヤに合わせてペースを調整するものだが、そこはやはりレーシングドライバーだからね。それまで互角に戦えていたマシンに対して、できるだけ速く走りたい。その気持ちを抑えるのは、難しかったということだ」
ルクレールやカルロス・サインツが、徐々にパフォーマンスを向上させて行ったRB18との戦いの中で、必然的にオーバードライブ気味になったことでタイヤをダメにした。クレアは、そう主張するのだ。
ただし最終戦アブダビGPの週末は、レッドブルのパフォーマンスがフェラーリをはるかに凌いでいた(フェルスタッペンは予選で、ルクレールにコンマ3秒近くの差をつけた)。レースでもフェルスタッペンは、スピードをコントロールしてタイヤを温存、1ストップ作戦を敢行した。一方のルクレールも無理にペースを上げず、タイヤを温存した。
だがもし2ストップ作戦を取っていたなら(そしてより高いレースペースで周回していたなら)、F1-75はこれまでのレースのようにタイヤを「食って」しまった可能性がある。マラネロにとって幸運だったのは、このサーキットでのタイヤの熱劣化が、2ストップ作戦が有利なほど大きくなかったことだ。
さらにフェラーリの戦略担当がルクレールに送った偽の無線メッセージで、レッドブルのアンダーカットを狙って早めのピットインをすると示唆したことが、レッドブル陣営にペレスの2度目のピットインを促したのは間違いないだろう。その結果ペレスは優れたペースにもかかわらず、ルクレールに追いつくことができないまま、1.3秒差の3位フィニッシュに甘んじた。