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 今週末のF1第20戦メキシコGPは、ちょっとした混乱のなかで始まった。ことの発端は1週間前のアメリカGPで、フェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)に下されたペナルティだった。

 同グランプリでのアロンソはランス・ストロール(アストンマーティン)との接触の際にマシンにダメージを負い、右ミラーが脱落。レースは7位でチェッカーを受けたが、ハースが危険行為だったと抗議し、スチュワードは30秒ペナルティを下したのだ。当然アルピーヌは、これに不服申立てを行った。

 メキシコでの木曜会見の時点では、まだ裁定の結果は出ていなかった。

Q:フェルナンド、まずはアメリカGPのことを振り返っていただけますか? まず、クラッシュによる悪影響がないことを祈っています。体調はどうですか?
アロンソ:(体調は)いいよ。ありがとう。

フェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)
2022年F1第20戦メキシコGP フェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)

Q:何が起きたのか、ランス・ストロールと話をしましたか? 事故の原因について、あなたの判断は?
アロンソ:レース後に彼のガレージで、話をしたよ。そのあと、スチュワードルームでもね。結論から言えば、レース中のアンラッキーな瞬間だったと思う。僕たちは同時に、左側に移動した。そして2台は、とても接近していた。セーフティカーが入った後の最初の数周はDRSが使えなかったから、最後の瞬間まで積極的にスリップストリームを取る必要があった。僕が左に行き、彼も同じ瞬間に左に行き、そこで僕たちは接触した。だからとてもアンラッキーな瞬間だったと思う。その意味で、彼のペナルティはとても厳しいと思う。でも、そういうものだ。

Q:ランスのマシンにぶつかって着地した際、42Gの衝撃だったとのことです。あなた自身はその瞬間、どのように感じましたか?
アロンソ:その数字は知らなかった。バリアにぶつかったときは、(反動で)左側に行くのかどうか気になっただけだ。その後は、マシンにダメージがないかどうか心配していた。でもマシンの感触は、ほぼ良好だった。僕はまず、そのことに驚いたよ。それから7番手まで順位を挽回して、とてもいい感じだった。1周1周、確実に順位を上げていくのは、精神的にも大変なことだった。でも最後のケビンとのバトルでは、同じストレートで動き、ターン12でブレーキングを遅らせて仕留めることができた。体力的にはまだ若いし、全然問題はない。

2022年F1第19戦アメリカGP ランス・ストロール(アストンマーティン)とのクラッシュで舞い上がるフェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)のマシン
2022年F1第19戦アメリカGP ランス・ストロール(アストンマーティン)とのクラッシュで舞い上がるフェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)のマシン

Q:レース後のハースからの抗議については?
アロンソ:今日の結果が出るまで、待ちたいね。とてもがっかりしているよ。後方からスタートして、6番手くらいでアクシデントに遭遇し、また最後尾、そして7番手でフィニッシュし、夕方にはまたポイント圏外と、まるでジェットコースターのような1日だったからね。
 でも今は7位をキープできると楽観的に考えている。FIAは今年、僕たちに対して非常に透明性のある対応をしてくれている。モハメドを含め、新しいリーダーのやり方は、これまでと少し違う。彼らの決めることを全面的に信頼している。でも明らかに間違っていることも、いくつかある。また7位になれると確信している。もしこれが正しい決定ということになってしまったら、F1の将来に大きな問題を残すことになるだろう。

 その後下された裁定は、「アルピーヌの不服申し立ては却下」というものだった。だがアルピーヌ側は再審理を要求。するとスチュワードは前回の決定を取り消し、アロンソの7位入賞が確定したのだった。

■好調が続くも引退の決断は変わらず。ベッテル「決断に何らかの影響を与えることはない」

 ドライバーズ選手権に目を転じると、セルジオ・ペレス(レッドブル)とシャルル・ルクレール(フェラーリ)が熾烈な2位争いを演じている。

Q:ふたりの差は、わずか2ポイントです。ふたりとも非常にフェアなドライバーですが、コース上で常に接近したバトルを展開し、そしてチャンピオンシップの2位を争っている。そんな時に、そのフェアな運転を保つのはどれほど難しいことですか?
ペレス:シャルルとは、全般的にうまく戦えていると思う。いつもアグレッシブだけど、でもいつもフェアなドライバーだ。そして僕自身も、フェアであると自負している。だから(最終戦の)アブダビでどんな状況になろうと、それが変わるとは思っていないよ。

ルクレール:僕も同じだ。もちろんチャンスがあれば、それを狙っていく。チェコも当然、そうだろうしね。そして僕たちはお互いが戦っていることを十分理解しているから、もう少しリスクを冒すことができるかもしれない。そこがエキサイティングなんだ。最終戦までのバトルが、本当に楽しみだ。

 一方でペレスには、今週末の母国グランプリでの初優勝という、大きな夢もある。そこに立ちはだかるであろう存在が、チームメイトのマックス・フェルスタッペンだ。

Q:自分が最終周で首位を走り、あなたが2番手だったとしても勝利は渡さないと、マックスはすでに言明しています。あなたはホームレースでの初優勝を望み、マックスは今季14勝目を狙っている。最終ラップで、彼と戦う可能性はある?
ペレス:もちろん、今週末は勝ちたい。それが僕の目標だ。ここに座っている他のドライバー、そしてマックスにとっても、それが目標だ。そのために可能な限りのことを、僕はするつもりだよ。

セルジオ・ペレス(レッドブル)&シャルル・ルクレール(フェラーリ)
2022年F1第20戦メキシコGP セルジオ・ペレス(レッドブル)&シャルル・ルクレール(フェラーリ)

 今年限りでF1から去るセバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)。現役引退を表明した夏頃には、成績も低迷していた。ところがシーズン終盤の現在、まるで全盛期のような素晴らしい走りを見せている。

Q:シーズン中盤に比べると、見違えるようですね。ここ3戦は連続してポイントを獲得し、先週のオースティンでは最終ラップでケビン・マグヌッセン(ハース)と素晴らしいバトルを繰り広げました。引退は早すぎませんか? 今のままでもう少しいたいと、思い始めたのでは?
ベッテル:それはおかしいよ。質問の答えとしては、「いいえ」だ。この決断については長い間、一生懸命いろいろな角度から考えたからね。この2戦、3戦は確かに、シーズン中盤のレースよりも明らかに楽しかった。でもそれが、この決断に何らかの影響を与えることはない。この数戦はむしろ、僕がなぜこのスポーツを愛し、なぜレースを愛しているのかを思い出させてくれた。素晴らしいレースもあれば、あまり楽しめないレースもあった。だから、そのようなときでもモチベーションを高めて、頑張らなければならないんだ。でも、確かに指摘された通りだね。これほど調子がよくなったり悪くなったり、そんなことがなければいいんだけどね。

Q:かつてのあなたは、今のフェルスタッペンのように妥協を許さないところがありました。今持っている世界観が優位に立ったのは、いつだったのでしょう。またその変化は今の若手や、フェルスタッペンにも訪れるものなのでしょうか。
ベッテル:みんなが自分の人生を生きているわけだけど、30歳になると明らかに何かが変わるんだよね。僕は3人の子どもの父親で、そのことで人生観が変わった。結局のところ、自分の人生をどうするかは、その人がどうなるかに影響すると思う。15年前、10年前と同じ自分のつもりだったけど、いろいろなことを学び、新しい人と知り合い、物事を違った角度から見るようになったかもしれないという意味で、僕は変わった。そしてそのことに、大きな後悔はない。
 何よりもF1ドライバーという特権を得られたことに、とても感謝している。違う土地に生まれ、違う環境だったら、才能は発揮されず、輝くこともなかったかもしれないからね。今後の人生でも、多くのことを学ぶ時間が持てることを楽しみにしているよ。

ベッテルの新たな門出が幸多いものであることを、祈らずにいられない。

セバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)
2022年F1第20戦メキシコGP セバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)