ベストカー編集部の仕事の一つに、広報車の移動や撮影というものがあるが、最近ちょっと戸惑うことが増えている。エンジンをかけていざ走り出そうとシフトに手を伸ばすと「どうなってるの?」と迷うことがしばしば。
以前はどのメーカーでもゲート式のオートマ用シフトレバーが主流だったのだが、新型車ではパーキング(P)がボタンになってて、その横にどちらに動かせばいいのか「ぱっと見」ではわからないレバーになっていたりする。特にハイブリッド車にこのタイプが多いのだ。
そんな最新派のシフトレバー、使い勝手はどうなっているのか?
文/高山正寛、写真/萩原文博、NISSAN、TOYOTA
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■そもそもシフトレバーって何だっけ?
シフトレバーはその名の通り、クルマのギアを切り替える際に使う運転装置であることは誰もがわかっているはずだ。変速レバーとかギアレバーと呼ばれることもあるが、シフトレバーという呼称が一番しっくりくる。
またオートマ車の場合はマニュアル車のような“ギアチェンジ”を頻繁に行わないのでギアセレクターなどと呼ばれることもある。
■最近、変わったシフトレバー多くないか?
これが今回のテーマ。ロードスターのような頻繁にシフトを操作するクルマの場合はよりベストなシフトレバー位置が求められる。しかしオートマ車の多くは一度“Dレンジ”に入れておけば後はクルマにお任せでもある程度は大丈夫である。
そして昨今、インフォテインメントシステムの大画面化やADAS(先進運転支援システム)、そして電動化との協調制御は従来以上にこのシフトレバーに影響を与えているといってもいいだろう。
理由として大きく2つある。まずはクルマのイメージとして“先進性”をアピールしたいこと。そして2つめは前述したインフォテインメントシステムなどの進化によりシフトの場所が追いやられてきたことも大きい。
普段取材をしているとインテリアのデザイナーとエアコンやインフォテインメントの電装系設計者はいわゆる“場所取り”で苦労しているという話を頻繁に聞く。
それは20年前より顕著で、空調の吹き出し口やディスプレイ、そしてスイッチ類などが増え続けることで人間工学的にもベストな位置に落ち着くことが本当に大変とのことだ。
例えば昨今ではエアコンの各種調整をインフォテインメントシステム内に組み込むことでタッチパネルで操作できる車種も増えてきている。これによりハードスイッチのエアコン操作部は不要になるので空間に余裕ができるわけだ。
もちろんオートエアコンの性能が上がっているからこその結果だが、それでも車種によっては「エアコンだけはハードスイッチで残したい」という意見も多い。
■最近気になるクルマと言えば……
少し話が遠回りになったが、これらにより従来からのシフトレバーではなく、スイッチ式のシフトが増えてきている。その代表例がホンダだろう。
ホンダ車には「エレクトリックギアセレクター」と呼ばれる機構の採用が最近加速している。
元々、この機構は2014年11月に発表されたレジェンドが初採用だ。
当時、ホンダは3種類のハイブリッドシステムを発表し、トヨタに対抗しようとしていたが、そのフラッグシップモデルであるレジェンドには最上位の3モーター式の「スポーツ ハイブリッド SH-AWD」を搭載、それに伴いこの「エレクトリックギアセレクター」をホンダ車として初作用したわけだ。
まさに先進性をアピールする意味でも抜群のタイミングだったわけが、その後この機構はNSXやアコード、インサイト、現行型のシビック、そして新型ステップワゴンに採用されている。
■でもe:HEVだけなのね
しかしシビックやステップワゴンのようにe:HEV(ハイブリッド車)の他にガソリン車をラインナップするモデルの場合、エレクトリックギアセレクターはe:HEVのみの採用になり、ガソリン車は普通のシフトレバー式になる。
前述した先進性も含め、ガソリン車との差別化も必要であることは理解できるが、実際のところ、まだまだこの「スイッチを押して操作する」という行為自体に違和感を持っている人も少なくない。
シフトレバーの場合、レバーを動かす行為や視界に入ってくるレバー位置などからもどのギアに入っているかを理解しやすい。
もちろんインパネ内にシフトインジケーターも採用しているのでその部分は抜かりはないし、人間工学的にも研究されて作られてはいるが、初見ではDレンジからRレンジ(後退)に入れる際に迷うという声も聞く(筆者知人の50代アコードユーザー)。
ホンダは当面、この機構をe:HEV車に積極採用していくと考えられるが、マイナーチェンジを行ったフィットやヴェゼルはe:HEVでもレバー式を採用、2023年春以降に発売予定の新型ZR-Vにはエレクトリックギアセレクターを採用するなど、車格などに合わせた設定になっている。
■あのクルマも別々のシフト方式を採用
そしてもうひとつ注目なのは新型トヨタシエンタだろう。
旧型はガソリン車、ハイブリッド車ともゲート式のシフトレバーを使っていたが(ガソリン車にはSモードがあり微妙に異なる)、新型は大きく変わっている。
これは先行して発売されているノア/ヴォクシーも考え方は同じでハイブリッド車は「エレクトロシフトマチック」、ガソリン車は「10速シーケンシャルシフトマチック付きストレート式シフトレバー」となっている。
シエンタのガソリン車は1.5Lエンジンを搭載するが、前述したシーケンシャルシフトを使うことで山道などでも軽快な走りを楽しむことができる。実際、このシステムを使わなくても十分なのだが、その辺はひとつのアピールポイントとして採用しているのだろう。
そして注目はやはりハイブリッド車だろう。このエレクトロシフトマチック自体は別に珍しい機構ではなく、2代目プリウスから採用されているものだ。
実はこの機構自体の操作に迷うと言う声もまだまだ多い。筆者は旧型(3代目:30系)、現行型(4代目:50系)を乗り継いでいるが、慣れとは言え、気になる点がひとつだけある。
それが「Bレンジ」である。このレンジは急な下り坂などでDレンジより強い制動力を発揮させるものだが、DレンジからBレンジに動かす際は手前にレバーを引くだけで良いのだが、ここからDレンジに戻す際は一度レバーを右に動かし、再度手前に引く、というアクションが要求される。
意外とこれが面倒だったりすることや、中には本当にまれなのだが、「Bレンジをバックギア」だと勘違いしてしまう人がいる(バックはR=リバースです)、もちろん走行中にRレンジに入れてもアラーム音が鳴ることで注意を促す。
まあ、ちゃんとマニュアル読みましょうね、と言いたい部分もあるのだが、車庫入れなどで頻繁にギアを切り替える際には注意が必要だ。
それでもプリウスの場合は可動域が大きいのでレバー式とまではいかなくても操作している感覚がある。しかしシエンタの場合は非常にコンパクトに設計されており、BレンジからDレンジ、またRレンジに入れた際の節度感がやや乏しいと感じる時がある。
■では今後はどうなるのか?
冒頭に述べたように、クルマの電子化により、パワートレーンから電装系、インフォテインメントシステムまでは従来以上に繋がりが強固になっている。ゆえに、シフト周りも“電子制御化”が進むことは間違いない。
ただ、何のためのスイッチ化なのか、に関しては先進性という言葉で片付けるのは少々物足りない。今後はシステムの優位性と安全性や利便性をバランス良くアピールしても良いのではないかと感じている。
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投稿 おじさんには難しすぎる? 新型車ATのシフト操作が複雑難解な件について は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。