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人気は続くよ、どこまでも? トヨタ最小のSUV、ライズが燦然と輝く理由はどこにある!?

 相変わらず好調のSUV。これは単なる流行ではなく、もはや自動車のスタンダードはSUVに完全に移ったといっていい。中でも人気なのがコンパクトなサイズのSUV。まだまだ昔ながらの狭い道も多い日本では、運転のしやすいコンパクトな自動車は重宝される。

 コンパクトSUVの中でも特に人気が高いのがトヨタ ライズ。コロナ禍にあっても衰えない人気の秘密を渡辺陽一郎が解説。

文/渡辺陽一郎、写真/TOYOTA、DAIHATSU

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■コンパクトSUVでトップクラスの人気のライズ

2019年11月に登場したトヨタ ライズ。ダイハツ ロッキーのOEM車で、2021年11月の一部改良時にはロッキーと同時にハイブリッド車が追加された

 最近はSUVの売れゆきが好調だ。2010年頃のSUV比率は、新車として売られる小型/普通乗用車の10%少々だったが、今は30%を超えている。

 SUVは厚みのあるフロントマスク、大径タイヤの装着などによって外観がカッコよく、ボディの上側はワゴンスタイルだから、車内も広くて荷物も積みやすい。SUVは外観のカッコよさと優れた実用性を両立させて人気を得た。

 特に販売が好調なのは、ボディがコンパクトなSUVだ。日本には狭く曲がりくねった道も多く、運転のしやすさが重視される。

 また、近年は衝突被害軽減ブレーキなどの安全装備と運転支援機能が充実して、消費増税も行われたから、クルマの価格が15年ほど前の1.2~1.4倍に上昇した。

 その一方、平均所得は1990年代の後半を下回るから、新車に乗り替える時にクルマのサイズを小さくするユーザーが増えた。コンパクトSUVもこの流れに沿って売れゆきを伸ばしている。

 そして、コンパクトSUVで高い人気を得ている車種がライズだ。2022年度上半期(2022年4~9月)にはコロナ禍の影響を受けながら、1カ月平均で約6000台を登録した。

 ヤリスクロスは約6500台、カローラクロスは約4000台だから、SUVの販売上位はすべてコンパクトな車種で占められる。そのなかでもライズは特に好調で、ヤリスクロスに続いてSUVの販売2位になった。

 ちなみにライズの企画/開発/生産は、トヨタの完全子会社になるダイハツが担当する。従ってライズはダイハツ製のOEM車だ。

 そしてライズと共通化されたダイハツブランドの姉妹車にはロッキーも用意され、この登録台数は、2022年度上半期の1カ月平均が約1700台であった。ライズに比べると大幅に少ないが、ダイハツが販売する小型/普通車では最も多い。

■コンパクトカーの価格で手に入るSUV

ライズのOEM元となるダイハツ ロッキー。「ロッキー」の名を冠するダイハツ車としては2代目となる

 ライズが人気を高めた一番の理由は、先に述べたコンパクトSUVの特徴を明確に備えることだ。全長は3995mm、全幅が1695mmのボディは、SUVでは貴重な5ナンバー車になる。最小回転半径は4.9~5.0mに収まり、視界も優れているから、混雑した街中や駐車場でも運転しやすい。

 価格も割安だ。直列3気筒1.2Lのノーマルエンジンを搭載する中級グレードのGは、価格が185万7000円(2WD)に収まる。ヤリス1.5Gに近い設定で、SUVをコンパクトカーに近い価格で手に入れられる。

 また、エンジンで発電機を作動させ、駆動はモーターが受け持つ日産のe-POWERに近いハイブリッドも2021年11月に追加した。装備の近いZ同士で価格を比べると、ハイブリッドの価格アップは28万9000円だ。

 ノーマルエンジンとハイブリッドの価格差は、マイルドハイブリッドを除くと一般的に35~60万円だから、ライズは割安に設定している。そのためにライズの販売総数の内、約50%をハイブリッドが占める。ライズはSUVとしては価格が割安で、ハイブリッドの買い得度も強いため、息の長い人気を保っている。

■人気の秘密はSUVらしいルックス

 このほか外観も人気の秘訣だ。ボディサイズが近いヤリスクロスは、フロントマスクやボディ側面の形状がワゴンに近い都会的なデザインだが、ライズは少し古典的でアウトドア指向を感じさせる。RAV4やカローラクロスに近い。

 ちなみに、ロッキーのプロトタイプは発売直前に開催された「東京モーターショー2019」に出品された。

 この時に説明を担当した開発者は「来場された多くのお客様から、『ロッキーにマニュアルトランスミッション車はないのか』と尋ねられた」と述べた。つまり、ロッキー&ライズの外観と雰囲気には、マニュアルトランスミッションも似合うわけだ。

 特に最近は、ヤリスクロス、ヴェゼル、ハリアーのような都会的なSUVが増えた。その結果、SUV市場に原点回帰のアウトドア指向が見られる。前述のRAV4やカローラクロス、さらにジムニーやランドクルーザーの人気も従来以上に高い。

 輸入車ではJEEPラングラーが堅調で、2021年の登録台数は、メルセデスベンツAクラスを上回ってVWポロに迫るものとなった。

 前述のようにSUVでは居住性や積載性が優れていることも特徴で、それはライズにも当てはまる。

 全長が4m以下のコンパクトSUVだが、身長170cmの大人4名が乗車した時、後席に座る乗員の膝先には握りコブシひとつ半の余裕がある。充分な広さとはいえないが、全長が4mを下回ることを考えると空間効率は高い。ファミリーカーとしても使いやすい。

■SUVとコンパクトカーのいいとこ取り

リアゲートの角度を立てたデザインで比較的背の高い荷物も収まりやすい

 しかもSUVだから全高にも1620mmの余裕があり、後席の床と座面の間隔を十分に確保できた。そのために後席に座る乗員の足が前方へ投げ出されにくく、手前に引き寄せられる。前席の下側に足が収まりやすいこともあり、ボディサイズの割に後席の居住性が優れている。

 荷室の使い勝手は、全長が短いからタップリとは積めないが、リアゲートの角度を立てたから比較的背の高い荷物も収まりやすい。

 以上のようにライズは、貴重な5ナンバーサイズのSUVで運転がしやすく、外観にはSUVの本質を突いた野性味も感じられる。ボディサイズのわりに後席と荷室の広さにも余裕があり、ファミリーカーとしても機能する。価格はヤリスのようなコンパクトカーに近く買い得だから、好調な売れゆきに至った。

 さらに販売面の優位性も見逃せない。トヨタは全国に約4600店舗を展開しており、今は全店が全車を売るから、ホンダの約2200店舗、日産の約2100店舗と比べて販売網は2倍以上だ。

 しかも最近のホンダでは、国内で新車として売られるクルマの50%以上が軽自動車になった。日産の軽自動車比率も40%前後に達する。その点でトヨタは、一部のダイハツ製OEM車を除くと軽自動車は扱わず、小型/普通車のメーカーとされる。そのためにコンパクトSUVの需要がライズに集まった。

■ハイブリッド化でさらに人気だが納期は遅延

 ライズの売れ方を販売店に尋ねると以下のように説明した。

 「ライズは先代RAV4のようなミドルサイズのSUV、ノアやヴォクシーなどのミニバンから乗り替えるお客様が多い。また5ナンバー車とあって、以前のヴィッツなどコンパクトカーに乗っているお客様の評判もいい。今のライズにはハイブリッドも加わったので、先代アクアなどから乗り替えるお客様もおられる」

 このように保有台数の多いトヨタのコンパクトSUVだから、ライズが好調に売られている面もある。

 ただし、納期には注意したい。販売店によると「現時点(2022年10月下旬)では、ノーマルエンジン搭載車が約7カ月、ハイブリッドは1年を要する」という。

 以前の納期は3~4カ月でトヨタ車のなかでは短い部類に入ったが、今は遅延している。サブスクリプション(定額制カーリース)のKINTOを使うと、1.5~2.5カ月で納車されるため、納期を重視するユーザーは検討するといいだろう。

 それにしてもライズの人気は根強い。その理由の筆頭は、海外だけでなく、日本のユーザーが共感を得られるクルマ作りだ。

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