全国に25,000以上あると言われるバス路線。その中でも、県境を跨いで走る高速バス以外の一般路線バスの数は極端に少ない。そんな県境越えバスの実態はどうなっているのだろう? 今回越える境界は東京都と神奈川県!
文・写真:中山修一
乗車時期:2022年10月
れっきとした東京都
「神奈川県と間違える」定番ネタにされるほど有名な東京都内の地域が町田市だ。この町田市に県境を越えて乗り入れてくるバス路線を、神奈川県を本拠地に持つ大手バス会社の神奈川中央交通(神奈中)が何本か設けている。
今回乗車するのは、再開発を経て2021年11月にオープンした大型商業施設「南町田グランベリーパーク」が隣接する東急田園都市線の同名駅と、神奈川県横浜市緑区にある、東急田園都市線とJR横浜線の接続駅である長津田駅を結ぶ、神奈中の津01系統だ。
事業者の本拠地を加味すると、神奈川県側からアプローチするほうが自然なのであるが、ダイヤの都合で逆経路を取ることにした。
津01系統 南町田発長津田駅行きの本数は1日あたり平日10本・土休日8本。いずれの運転日も3時間ほどバスがない時間帯がある。住宅が立ち並ぶ大型ベッドタウンに溶け込んだ「マチのローカル線」だ。
賑わう商業施設を後に
利用したのは土曜日の南町田13:30発の便。次が1時間後の14:30、その次は17:30で、最終18:30というダイヤが組まれている。
鉄道の駅と駅を結ぶ全長5kmほどの短い路線なので、途中で降りてバスがなくても途方に暮れる心配はあまりないだろう。
土曜日ともなれば南町田グランベリーパークはテーマパークの如く大盛況。神奈中バスが発着するバスターミナルは東急の線路を挟んだ反対側にある。4番乗り場が長津田駅行きの乗り場だ。
13:28にバスが入線、中型バス車両の2013年式いすゞエルガミオ・ワンステップ車だ。5人ほどが乗車し、時間通りに南町田グランベリーパーク駅を出発した。
国道16号線を進んですぐの東名入口交差点を左折して国道246号線に入ると、町田辻停留所に接近する。
この町田辻は、過去に長津田辻停留所の名が付けられており、南町田グランベリーパークが開業する前はここが津01系統の終点/始点であった。
町田辻を過ぎた直後、バスは右折して一路狭い道へと進路を変える。ここがちょうど東京都と神奈川県の境界線だ。
緑あふれる経路
神奈川県に入ると周辺に農地が見え始め、車窓からの景色に緑が多くなる。進行方向左側には東京工科大学すずかけ台キャンパスもあり、こちらも緑に囲まれた立地だ。
バスは曲がりくねった坂をぐねぐねと下ってゆき、ローカル感漂う道を軽やかに走る。車窓のバックには森がそびえ、急に山の中まで来たような錯覚を覚えるものの、その森を一つ越えた先には東名高速道路が通っている。
バスが通る道の周辺は歴史があり、古くから人が住んでいる場所だ。周辺を散策すると1819(文政2)年に作られた地神塔が現存している。
南町田駅からの乗客も、ちょうどこの緑豊かな区間で下車していった。長津田まで向かうなら電車を使ったほうが早いため、津01系統は南町田駅〜長津田駅の間の、鉄道から離れた地域をカバーする移動手段と言える。
道なりにバスが進んでいくと再び住宅地が広がり始め、国道246号線との交差点にぶつかり、ここを直進すると南長津田団地に入る。
この団地前のバス停からご高齢の乗客がどっと増えた。南長津田団地前〜長津田駅の距離は900mを切る程度なのだが上り坂が続くため、団地側から駅まで向かうならバスを使ったほうが楽というわけだ。
南長津田団地から5分ほど走ると、終点の長津田駅バスターミナルに到着した。所要時間18分、津01系統は後ろ側のドアから乗車する運賃後払い方式で、通しの運賃は現金で250円。
総距離が5km程度と短い路線ながら、県境越えバスの特徴としては隣県に入ってすぐ終点に到達するタイプと言える。津01系統の場合、東京都内に入ってからの走行距離は800mくらいだ。
首都圏を代表する鉄道路線の駅同士を結ぶバスということで、県境越えバスの中でも手軽さは上々だろう。
【バス路線の基本データ】
神奈川中央交通 南町田グランベリーパーク駅→長津田駅行き
・跨ぐ県:東京都→神奈川県
・移動距離:約5km
・所要時間:18分
・運賃:250円
・停留所の数:15箇所
・東京都内の区間距離:約800m
・東京都内の停留所の数:2箇所
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