バスの車種を示すとき、複雑難解な型式かメーカーで付けたペットネームを使って区別するのが一般的である。とはいえ中には、その車両とは直接関係のない「アダ名」で呼んだほうが通りの良いバス車両もあるのだった。
しかもオバQやブルドックなど、まったくバスを想像できないモノだらけ!! どうしてそんな名前が付いたのか……車体を見れば一目瞭然か!?
文:中山修一
写真:高橋俊哉
オバQ
バスファンの間で「オバQ」と言えば昔の観光・高速バス車両の一つで、バスボディメーカーの川崎航空機工業が手がけた車体を載せたバスがそれに当たる。
1963年に日本で初めて高速道路が開通し、将来の道路網発展を見越して1963年に試作車が登場。量産タイプは1965〜72年まで製造された。このスタイルのボディは川崎丸型がフォーマルな言い方である。
正面から見ると、丸みを帯びた車体の輪郭に加え、大きな窓とヘッドライト周りの「へ」の字に垂れた装飾の位置関係が、マンガの『オバケのQ太郎』に登場するQ太郎の顔立ちとよく似ていたため、オバQと呼ばれるようになった。
下回りは各社で作られ、いすゞ製を標準に、日野や三菱製シャシーにオバQボディを載せた車両も存在した。
かまぼこ
「かまぼこ」のアダ名が付いた路線バス向けの車両がある。ボディメーカーの西日本工業車体が1966〜78年に製造した、66MC型ボディを載せたバスは総じて かまぼこ になる。
車体前面、フロントガラス上の行き先表示器周りの特徴的なデザインが、練り物の蒲鉾を彷彿とさせるカーブを描いているところから命名された。
同じ「かまぼこ」でも、1扉、2扉、引き戸仕様や折り戸仕様、後ろ(中)扉付近に取り付けられた行先表示器の形状など、バス事業者によって細部が異なる。
下回りもメーカーに決まりはなく、いすゞ、トヨタ、日産ディーゼル、日野、三菱各社のシャシーに66MC型ボディが架装された。
ブルドッグ
犬種をアダ名に持つのが、三菱ふそうエアロスターシリーズに乗せられたB35-X2型ボディだ。1980〜84年まで作られたエアロスターの一種であるMP118タイプのシャシー向けに、三菱自動車工業名古屋製作所と呉羽自動車工業が手がけたものだ。
やはり特徴ある前面形状から転じて付けられた名前であり、ヘッドライト周りの両脇が垂れている様子が、犬のブルドッグの顔を連想させることが由来となっている。
当時の三菱ふそうの主力バス製品であったため、全国各地でバスのブルドッグが走る姿を見られた。
なまず
1984〜2000年まで製造された路線車・いすゞキュービックの中に「なまず」と呼ばれるバリエーションがあった。一般的なキュービックの車体とは一線を画す、クセの強い顔立ちをしているのが「なまず」最大のポイントである。
なまずはキュービックのシャシーに北村製作所製のボディを架装したもので、1985〜88年に製造された。新潟交通と頸城自動車のみで使われた、特注に近い車体だ。
型式で言うと新潟交通仕様がP-LV314Q、頸城自動車仕様がP-LT312Jとなる。
新潟交通で使われたものは、一般公募によって「銀太郎」の愛称が付けられていた。こちらは車体色の基調が銀色だったところから来ている。ただし後に車体色が若干変更となった際に銀太郎は“降板”になってしまった。
「なまず」のほうは非公式である。横から見た車体の全体像に加え、前方のしゃくれ具合とヘッドライトの位置関係が、淡水魚のナマズっぽい雰囲気を出していたことで、そう呼ばれるようになったらしい。
新潟交通のなまずは長期にわたって活躍を続け、2011年まで使われた。
いつ誰がそう呼んだのか?
オバQ、かまぼこ、ブルドッグ、なまず、4種のバス車両を紹介してきた。これらのアダ名をいつ誰が言い出したのかは良く分かっていない。
該当するバス車両が現役を退いた後に広まったケースもあるようだが、意図的に命名されたものはなく、全ていつの間にか浸透していた。
最近の車種はメーカーのペットネームで呼ぶ場合がほとんどで、非公式の名前はそれほど付けられないようだ。
今のところ、アダ名付きのバス車両も輝かしい歴史の1ページになっている、といったところだろうか。
投稿 バスなのにオバQにカマボコ!? 無関係なアダ名のバス4選 は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。