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 9月29日から10月2日にかけて、WRC世界ラリー選手権第11戦『ラリー・ニュージーランド(ラリーNZ)』が開催された。2022年シーズン最後のグラベル(未舗装路)ラリーとなった同イベントにTOYOTA GAZOO Racing WRTネクストジェネレーションから参戦した勝田貴元/アーロン・ジョンストン組(トヨタGRヤリス・ラリー1)は、デイ3午後のステージでコースオフ。マシンを壊してしまい今季初めてリタイアを喫した。

 2012年以来、10年ぶりにWRCイベントとして開催されたラリー・ニュージーランドは、勝田を含む多くの選手たちにとって初めて出場するイベントだった。経験がものをいうラリーという競技においては通常、初めて挑むイベントは難しいものとなるが、この週末に断続的に降り続いた雨はコンディションをより難しいものとした。

 ニュージーランドのステージは基本的に固く締まりスムーズなのが特徴だが、水を含んだことで場所によってグリップレベルがまちまちとなり、それが選手たちをさらに苦労させることに。とくにフルデイ初日の金曜は今大会のステージ合計距離の半分以上を走行する長い1日となり、勝田はここで苦戦を強いられることとなった。

 勝田自身は金曜最初のステージを終えた時点で、自身の走りにある程度の手応えを感じ「そんなに悪くない」と感じていたが、ステージ走行後タイムを見ると上位陣から離されていたという。このことについて彼は自らのフィーリングとステージのずれを挙げた。

 勝田はラリーNZ後に行われた合同オンライン取材において、次のように語っている。「ニュージーランド特有のキャンバーのついたコーナーや、アングル以上にスピードを乗せて入っていけるコーナーだったりとかそのあたりが詰めきれておらず、そこで(上位陣に)離されてしまったことがデータを見てわかりました。金曜日はそういったところの積み重ねでタイムを落としてしまったので、自分の中の反省点だと思っています」

 金曜午前中2本目のステージとなったのSS3ではスピンも喫しタイムを失った勝田だが、それでも総合8番手でデイ2を走破。翌日のデイ3に駒を進めた。

 迎えた競技3日目は、さらに天候が悪化し強雨のなかでのラリーとなった。この日は午前中にアクシデントが相次ぎ、トヨタのチームメイトで当時、総合首位を走っていたエルフィン・エバンス(トヨタGRヤリス・ラリー1)が高速コーナーでスピン、1回転するクラッシュで戦列を離れることになった。また、ミッドデイサービス直前のSS10では、ガス・グリーンスミス(フォード・プーマ・ラリー1)が激しいクラッシュを喫し同ステージがキャンセルとなっている。

 一方の勝田は「前日(金曜)のことは切り替えて、自分のできるベストを尽くしていこう」というアプローチでステージに臨み、午前中はマディな路面のなかでステージ5番手前後のタイムを記録。徐々にクルマに自信を持って攻められるようになってきたことから、午後からは「もう少しプッシュしていこう」と臨んだSS11で4番手タイムを記録し、総合5番手に順位を上げた。

 しかし、コンディション的にも「いいフィーリングで走れていた」というSS12でコースオフを喫してしまう。

8冠王者セバスチャン・オジエ、ラリーNZで新チャンピオンとなったカッレ・ロバンペラと談笑する勝田貴元 2022年WRC第11戦ラリー・ニュージーランド
8冠王者セバスチャン・オジエ、ラリーNZで新チャンピオンとなったカッレ・ロバンペラと談笑する勝田貴元 2022年WRC第11戦ラリー・ニュージーランド

■勝田「リタイアは残念ですが、多くを学ぶことができました」

 状況的には、高速コーナーが連続する箇所で限界まで攻めていたなか、「ブレーキングしながら40m入っていかなくてはならない左コーナーに対し、直前の右コーナーで攻めすぎてしまった結果クルマがスライドし、その後の直線ですぐにブレーキを踏む体勢を作れずにブレーキングが遅れ、直後のきつい左コーナーで外側にコースオフしてしまった」と説明した勝田。

 このアクシデントでのり面に転落した勝田のクルマは立ち木への衝突によってロールケージにダメージを負い、翌日の再出走が不可能に。これにより勝田の開幕戦からの連続入賞記録は「10」で途切れることとなった。

「ラリー・ニュージーランドに出るのは今回が初めてで、大きなチャレンジでしたが、とても楽しむことができました」とリリースで語った勝田。

「難しいコンディションだったのですが、ステージ自体は良く、楽しんで走ることができました。金曜日はグリップレベルが雨に大きく影響され、グリップが安定しているときはクルマが乗りやすく感じられ、自信を持って走ることができましたが、安定しないときは充分に力を発揮できませんでした」

「土曜日は雨がさらに多く降って路面に泥が増え、ステージはよりテクニカルになりました。ペースはまだ少し足りていませんでしたが、午後は良くなっていきました」

「午後の最初のステージはフィーリングが良かったので、2本目のステージではプッシュしていきましたが、ハイスピードな右コーナーに高めのスピードで進入してしまい、続くタイトな左コーナーで減速しきれずにロールしてしまいました」

「ラリーを早く終えることになったのは残念ですが、それでも今後の改善方法に関して、多くを学ぶことができました」

 勝田が参加しているTOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラムのインストラクターを務めるユホ・ハンニネンは、「(勝田)貴元にとってはタフな週末になった」と述べた。

「金曜日はかなり苦戦したが、土曜日には良くなり、少し自信を持てるようになった。しかし、SS12でブレーキングが少しだけ遅れ、コースオフしてしまった」

「天候によるグリップレベルの変化は、貴元がこのクルマでここまで苦労してきた領域だ。それについては明らかに改善の余地があるので、彼がもっと自信を持てるように、これから取り組んでいかなければならない」

「ただし、今はまずこの週末のことは忘れ、残り2戦のターマック・ラリーに集中する必要がある。貴元にとってスペインは経験が豊富なイベントなので、良いラリーになると信じている」

勝田貴元(トヨタGRヤリス・ラリー1)のラリー・ニュージーランド初参戦はリタイアという結果に終わった
勝田貴元(トヨタGRヤリス・ラリー1)のラリー・ニュージーランド初参戦はリタイアという結果に終わった