自動車レースの老舗雑誌『レーシングオン』の最新号『No.521 F1サムライ列伝』が発売中。特集は鈴鹿で3年ぶりに復活開催されるF1日本GP開催に合わせた歴代日本人F1ドライバーを取り上げている。今回は誌面より『角田裕毅、特別インタビュー』をお届けしよう。
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■新たな挑戦の時代──特別インタビュー:角田裕毅
鈴鹿サーキットでのF1日本GP“復活開催”まであと少し。いよいよ始まるレースウイークを前に、唯一の日本人ドライバーとして戦うアルファタウリ・ホンダの角田裕毅にインタビューする機会を得た。今季、2年目となるこれまでのシーズンをどう振り返り、さらにファンが期待する日本人初優勝について、彼はどう考えているのだろうか。
■子供の頃に憧れていたドライバーはいましたか?
「すみません、いないんです(笑)。強いて言うならセナとかシューマッハーですが彼らのことをそんなに知らないので、憧れていたという感じではないかも。そういう意味では、ハミルトンの方が近いかもしれないです。メルセデスで勝ち始めた頃からすごいドライバーだなと思っていましたが、彼をよく知るようになると人として尊敬できるし、チームメートになったら色々なことを学べるだろうなと思います」
■将来の目標としてF1を意識したのはいつだったのですか。
「カートを始めたのは4歳のときですが、その頃からF1を目指していたわけではなく、最初は父親に連れて行かれているという感じでした。16歳で四輪レース出場に必要なライセンスを取得して、鈴鹿サーキットレーシングスクールに入校しスカラシップ選考会に進む4名に選ばれました。それでF4に参戦していたときに当時ホンダにいた山本雅史さんから『ヨーロッパでF3のテストを受けてみないか』と言われたあたりから、自分でF1を本格的に意識し始めたと思います」
■ヨーロッパでF3へ参戦することになりましたが、過去の日本人F1ドライバーのキャリアを調べたり、ステップアップを参考にしたことはありますか。
「まったくしていません。というのも、僕の時代はスーパーライセンスポイント制度が厳格に決められていたので、それ以前の方のステップアップ方法はほとんど参考にならなくなっていましたから。とにかく決められた年数の中で決められたポイントを取るしかないのでF3をできるだけ早く卒業し、最もポイントを獲得できるF2で上位に多く入って活躍するしかないと考えていました」
■ヨーロッパのサーキットは日本よりもグリップの低いコースが多いと思いますが、苦労した点はありますか。
「一番の違いはヨーロッパにはザンドフールトのようにバンクについたコーナーが結構あるということ。あと、日本の路面の方が綺麗でグリップするということですね。ただそんなのはレーシングドライバーなら3周も走ればすぐに慣れるので、どうってことない話です」
■日本人初のF1レギュラードライバーが誕生してから35年、日本人はまだ勝てずにいます。その理由はなんでしょうか。
「経験値やドライビングスタイルの違いはないと思います。昔のことは分かりませんが、今のF1で勝てるチームは限られています。彼らがミスを犯すことはほとんどないので、それ以外のチームのドライバーが勝つことは簡単ではありません。だから僕にできることはもっと成長して、“勝てるチームへ行けるようになること”です」
■現在、ご自身はF1で優勝する要素が揃っていると思いますか。勝利へ向けての現在の自己評価を教えてください。
「勝てるチームへ行けたら勝つ自信はあります。でもまだまだ成長しなければならないところもたくさんあります。そのひとつが結果をコンスタントに出すことです。トップチームへ行くためには、とにかくミスをなくさないといけません」
■日本人F1ドライバーとジャンル分けされて「日本代表」と言われるのはイヤですか?
「まったくそんなことはないです。1年目は帽子のつばの裏側には日の丸を描いていましたし、今年の帽子も日の丸カラーが基本的なデザインになっています。日本の代表として見られることは嬉しいですよ。日本人ですからね」
『レーシングオン No.521 F1サムライ列伝 特集号』より一部を抜粋・編集して再構成しています。
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先週のシンガポールGPでは自身のミスからリタイアとなった角田だが、初めての母国グランプリとなる鈴鹿はスクール時代に走り込んだコース。果たしてどんなパフォーマンスを見せてくれるだろうか。
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