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 長年F1を取材しているベテランジャーナリスト、ルイス・バスコンセロス氏が、全20人のドライバーのグランプリウイークエンドの戦いを詳細にチェック、独自の視点でそれぞれを10段階で評価する。今回はシンガポールGPでの戦いぶりを振り返る。

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■評価 10/10:難コンディションでノーミスだったペレス

セルジオ・ペレス(レッドブル):予選2番手/決勝1位
ランド・ノリス(マクラーレン):予選6番手/決勝4位

 マリーナ・ベイ・サーキットはカレンダー中最もタフなサーキットのひとつだが、そこで予選の初めからレースの終わりまで、最高のパフォーマンスを見せたドライバーがふたりいた。

 セルジオ・ペレス(レッドブル)は最近思うようにいかない時期を過ごしていたが、今回は予選でポールポジション争いに加わった。僅差の2番手に終わったものの、決勝スタートでトップに立つという一番重要な仕事を成功させた。59周にわたり、限界ぎりぎりでありながら、決して行き過ぎることなく、シャルル・ルクレールを抑えきった。この日は何人かのトップドライバーたちがミスをするほどの難コンディションだったが、ペレスは一切ミスをせずに優勝をつかんだ。

 ランド・ノリス(マクラーレン)はコンディションが難しくなるたびに力を見せつける。マクラーレンのアップグレードパッケージは金曜には期待したほどの効果を発揮しておらず、土曜日にもいまひとつだった。しかしノリスは予選6番手タイムを記録した。レースのトリッキーなコンディションでノリスは素晴らしい走りを見せ、5番手を走行、ルイス・ハミルトンの後退で番手に上がった。マックス・フェルスタッペンからのチャレンジをしのぎきり、一時は前を行くカルロス・サインツとのギャップを縮めたが、4位はマクラーレンとして可能な最大の結果だったろう。

2022年F1第17戦シンガポールGP 優勝したセルジオ・ペレス(レッドブル)を祝福するマックス・フェルスタッペン(レッドブル)

2022年F1第17戦シンガポールGP ランド・ノリス(マクラーレン)

■評価 9/10:2位に甘んじるも、速さを証明したルクレール

シャルル・ルクレール(フェラーリ):予選1番手/決勝2位

 シャルル・ルクレール(フェラーリ)は非常に難しいコンディションの予選でポールポジションを獲得し、速さを証明した。だが決勝スタート時に2速でひどいホイールスピンを起こし、2番手に後退。必死にペレスをプッシュしたが、彼のミスを誘うことができず、逆に自分自身でミスをしてしまった。ペレスを追いかけ続けたことでタイヤに負担をかけてしまい、最後の8周は何もできず。それでも見事なスピードとマシンコントロールを披露した。

2022年F1第17戦シンガポールGP シャルル・ルクレール(フェラーリ)
2022年F1第17戦シンガポールGP シャルル・ルクレール(フェラーリ)

■評価 8/10:またもや不運に襲われたアロンソ

フェルナンド・アロンソ(アルピーヌ):予選5番手/決勝リタイア

 フェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)は今回もチームメイトより優れた走りを見せてA522をグリッド3列目につけた。スタートでランド・ノリスの後ろに下がったが、長くマックス・フェルスタッペンを抑え続けた。しかし残念ながらエンジンが息絶えたことで、またもやその速さにふさわしい結果を得られなかった。

2022年F1第17戦シンガポールGP フェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)の出走350戦目をドライバーらが祝福
2022年F1第17戦シンガポールGP フェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)の出走350戦目をドライバーらが祝福

■評価 7/10:いつもほど冷静ではなかったフェルスタッペン

マックス・フェルスタッペン(レッドブル):予選8番手/決勝7位
カルロス・サインツ(フェラーリ):予選4番手/決勝3位
ダニエル・リカルド(マクラーレン):予選17番手/決勝5位
ランス・ストロール(アストンマーティン):予選12番手/決勝6位
ピエール・ガスリー(アルファタウリ):予選7番手/決勝10位

 マックス・フェルスタッペン(レッドブル)には、今回タイトル獲得の可能性があったが、それが関係してか、通常より冷静ではなかったように見える。Q3でミスを犯したため、チームはそのラップをアボートするよう彼にアドバイス。しかし燃料が不足し、次のラップも断念しなければならなかった。走り切っていれば、ポールを獲得した可能性があったが、彼が予選後に示した反応は褒められたものではない。

 スタートでアンチストールに入ってポジションを落とした後、うまく挽回しつつあった。しかしノリスを抜こうとしたところでブレーキングにおいて判断ミスを犯し、タイヤにフラットスポットを作り、追加のピットストップが必要になった。その後の追い上げで、なんとか7番手をつかむことができた。

 カルロス・サインツ(フェラーリ)は3位を獲得したものの、予選ではポールポジション争いに加わっていただけに、自分のレースに満足していなかった。良いスタートを切ってルイス・ハミルトンの前に出た後、最後までそのポジションを守り、フェラーリに貴重なポイントをもたらした。しかしインターミディエイトでもスリックでもルクレールのペースには及ばず、彼自身、そのことに困惑していた。

 ダニエル・リカルド(マクラーレン)はシーズンここまででベストの5位を獲得、その貢献もあってマクラーレンは選手権ランキングでアルピーヌの上に浮上することができた。予選はひどかったが、リカルドは決勝序盤の数周で大きくポジションを上げ、ミスなく走った。チームがスリックに交換するのを遅らせたことにより6番手に浮上、フェルスタッペンがミスで後退したため、リカルドは5位に上がり、真の笑顔を取り戻した。

 アストンマーティンは今回、好結果を挙げた。ふたりのうちで上位に入ったのはランス・ストロール(アストンマーティン)の方だった。予選Q2でスリックを履くというギャンブルは実を結ばなかったが、レース戦略は完璧で、それによってストロールはピエール・ガスリーや角田裕毅の前に出ることができた。今回のストロールはひとつのミスもせず、シーズンここまででベストの走りを見せたといっていいだろう。

 ピエール・ガスリー(アルファタウリ)が1ポイントにとどまったのは気の毒だ。予選では7番手を獲得、決勝では堅実にポイント圏内を走っていたが、チームがスリックに交換すると判断したのが早すぎたことで、ポジションを落とした。レース後、悔しさを表していたのも理解できる。

2022年F1第17戦シンガポールGP 25歳の誕生日を迎えたマックス・フェルスタッペン(レッドブル)
2022年F1第17戦シンガポールGP 25歳の誕生日を迎えたマックス・フェルスタッペン(レッドブル)

■評価 6/10:予選だけなら満点だったハミルトン

ルイス・ハミルトン(メルセデス):予選3番手/決勝9位
アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ):予選19番手/決勝リタイア
周冠宇(アルファロメオ):予選15番手/決勝リタイア
セバスチャン・ベッテル(アストンマーティン):予選14番手/決勝8位
ケビン・マグヌッセン(ハース):予選9番手/決勝12位

 予選後に採点していれば、ルイス・ハミルトン(メルセデス)に10点をつけていただろう。それほど見事なパフォーマンスだった。だが決勝ではスタートを失敗してサインツの後ろに落ち、サインツのペースが悪かったにもかかわらず、W13のストレートラインスピードでは抜くことができず、苛立ちをつのらせた。そうして珍しいミスを犯し、ハミルトンはバリアにヒットした。幸いフロントウイングが壊れただけでコースに復帰できたが、8番手まで後退。セバスチャン・ベッテルを抜く速さがなく、終盤、小さなミスを犯してフェルスタッペンに抜かれてしまい、さらにひとつポジションを落とした。

 アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)は、シンガポールGPに出場しただけで賞賛に値する。イタリアGPの週末に虫垂炎の手術を受けた後、身体的なコンディションは万全とはほど遠かった。それなのにニコラス・ラティフィより常に速かったのだ。マシンのパフォーマンスが悪かったことで大きな結果は望めないなか、クラッシュし、マシンに大きなダメージを負った。

 周冠宇(アルファロメオ)はトリッキーなコンディションでチームメイトより速く、予選ではQ2に進出した。しかし決勝1周目が良くなかったことでポジションを落とし、さらにラティフィのミスによりリタイアしなければならなかった。

 セバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)は、ストロール同様、予選はスリックタイヤへの交換が早すぎてうまくいかなかったが、決勝ではしっかり貴重な4ポイントを稼いだ。スタート直後、素晴らしいラップを走って8番手まで上がった。スリックに交換するのがストロールより1周早く、チームメイトの後ろに後退。終盤まで7番手を走っていたが、残り半周でフェルスタッペンに抜かれてしまった。

 Q3に進出したケビン・マグヌッセン(ハース)は今回の予選のヒーローのひとりだった。決勝1周目ではわずかの間、フェルスタッペンの前を走ったが、接触があったことで、マグヌッセンはまたもやブラック&オレンジフラッグを示された。なんと今年3回目のことだ。追加ピットストップにより、彼は競争から脱落、今回の彼にふさわしい結果を得られなかった。

2022年F1第17戦シンガポールGP ルイス・ハミルトン(メルセデス)

■評価 5/10:初のシンガポールで健闘していた角田裕毅

角田裕毅(アルファタウリ):予選10番手/決勝リタイア
エステバン・オコン(アルピーヌ):予選18番手/決勝リタイア
バルテリ・ボッタス(アルファロメオ):予選16番手/決勝11位
ミック・シューマッハー(ハース):予選13番手/決勝13位

 角田裕毅(アルファタウリ)が予選Q3に進んだのは驚くべきことだった。今回は彼にとって初のシンガポールだったのだ。決勝ではミスなくポイント圏内を走っていた。しかしチームの判断で早めにスリックタイヤに交換したところ、コースに復帰した角田は濡れた路面に乗ってクラッシュしてしまった。

 エステバン・オコン(アルピーヌ)は予選の時点からペースに苦しみ、Q1で敗退。レースでは14番手で走行した後、エンジントラブルでリタイアした。

 バルテリ・ボッタス(アルファロメオ)は金曜のドライコンディションでは期待を感じさせたが、ウエットになってからは、周冠宇ほどの速さがなかった。予選はQ1で敗退、決勝ではずっとオコンに抑えられていたが、スリックに履き替えてからはペースが大きく向上した。それでもポイントには届かなかった。

 ミック・シューマッハー(ハース)は自身初のシンガポールで、チームメイトに全く太刀打ちできなかったが、それでも予選ではQ2に進出。決勝ではポイント圏外を走り続けた後に、ジョージ・ラッセルとの接触が起きて、入賞のわずかなチャンスも失った。

2022年F1第17戦シンガポールGP 角田裕毅(アルファタウリ)
2022年F1第17戦シンガポールGP 角田裕毅(アルファタウリ)

■評価 3/10:ラッセルにとって、今年最悪の週末

ジョージ・ラッセル(メルセデス):予選11番手/決勝14位

 ジョージ・ラッセル(メルセデス)にとって、メルセデスに加入してから最悪の週末だったのではないだろうか。この難コースでW13を乗りこなすことができなかった。予選Q2で敗退した後、新しいパワーユニットを積んでピットレーンからスタートしたが、珍しく何度もミスを繰り返し、終盤にはシューマッハーと接触した。

2022年F1第17戦シンガポールGP ジョージ・ラッセル(メルセデス)

■評価 1/10:ラティフィ、アクシデントで悲惨な週末に

ニコラス・ラティフィ(ウイリアムズ):予選20番手/決勝リタイア

 これ以上ニコラス・ラティフィ(ウイリアムズ)を批判したくないのだが、彼にとって最初で最後のシンガポールGPは悲惨な週末となった。アルボンより大幅に遅く、決勝では不注意で周冠宇に当たり、相手をリタイアさせ、自分もその後、レースを終えた。

2022年F1第17戦シンガポールGP 表彰式
2022年F1第17戦シンガポールGP表彰式 優勝セルジオ・ペレス(レッドブル)、2位シャルル・ルクレール(フェラーリ)、3位カルロス・サインツ(フェラーリ)