例年は世界各国から国際派ドライバーを招いてシリーズレギュラーとタッグを組む、おなじみの耐久戦として実施されてきた新生TC2000(旧スーパーTC2000)の第10戦『ブエノスアイレス200km』が、今季も10月1~2日の週末に開催された。
今回はWTCR世界ツーリングカー・カップ経験者のサンティアゴ・ウルティアを招聘したシボレーYPFチームや、TOYOTA GAZOO Racing YPFインフィニア不動のエースとして活躍し、現在は隣国ブラジルで成功を収めるマティアス・ロッシを呼び戻したトヨタ陣営に対し、ルノー・フルーエンスGTを走らせるアクシオン・エナジー・スポーツSTC2000の2019年王者リオネル・ペーニャ/アントニーノ・ガルシア組が、土曜スプリントと日曜ファイナル双方で勝利を挙げ、週末完全制覇を成し遂げた。
昨季は日本のスーパーGTでGT500クラスに参戦するサッシャ・フェネストラズも参戦し、かつてはトム・コロネルや地元出身のエステバン・グエリエリ、ネストール・ジロラミらもエントリーした名物イベントが、今季もアルゼンチンの首都ブエノスアイレス近郊のオスカー・ファン・ガルベスを舞台に開催された。
この週末は金曜に3回のプラクティス、土曜には最後の練習走行と予選に加えて、ゲストのためのスプリント戦を実施、日曜には最大60ラップまたは最大時間90分のファイナルが設定された。その初日走り出しからはルノー勢が速さを見せ、今季レギュラーシーズンでも大活躍を演じる弱冠17歳のイグナシオ・モンテネグロ(ルノー・フルーエンスGT)らがトップタイムを記録する。
その勢いに「待った」を掛けたのが、初日最終FP3で首位を奪取した南米ウルグアイ出身のWTCRレギュラーで、シボレーYPFチームでベルナルド・ラヴァー(シボレーYPFクルーズ)のペアに抜擢された男がツーリングカー・マイスターとしての手腕を発揮。2番手にも王者アグスティン・カナピノ/クリスチャン・レデスマ組(シボレーYPFクルーズ)が続き、シボレー陣営がワン・ツーで初日を終えた。
すると明けた土曜にはTGRA陣営が奮起し、最終FP4では各チームがセットの細部を仕上げることに専念し、日曜のレースに向けドライバー交代の練習も入念に繰り返すなか、今季よりエースに就任したジュリアン・サンテロ(トヨタ・カローラSTC2000)と大先輩ロッシのペアが1分18秒945の最速タイムをマークする。
■ペーニャ/ガルシア組が2019、2021、2022年と3度目の200km戦制覇
2番手ルノーのペーニャ/ガルシア組を挟み、3番手にも18歳の新鋭ホルヘ・バリオ/ダミアン・フィネンチ組(トヨタ・カローラSTC2000)が続き、トヨタ勢がゲストドライバーのみで争われるスプリント戦に向け弾みをつけた。
しかし、続く予選でその鉄壁トヨタ・タッグを撃破したのはルノーのガルシアで、長らくタイムボードの最上位にいたサンテロ/ロッシ組を上回り、Q1/Q2ともに総合首位を獲得。2021年大会に続き、ルノー・フルーエンスGTが2年連続のポールポジションを奪取した。
2番手にカナピノのシボレーを預かるレデスマ、3番手に同じくブルーのクルーズをドライブするウルティアを従えたガルシアは、土曜スプリントのシグナルが消えるとすぐにリードを拡大。昨季まで慣れ親しんだハイテクFFツーリングカーのカローラを駆る4番手のロッシにも逆襲の機会なく、ルノーのガルシアが“ライト・トゥ・フラッグ”での勝利を飾ってみせた。
この勢いを日曜まで維持したアクシオン・エナジー・スポーツ陣営は、スタートドライバーを担当した最年長チャンピオン記録保持者のペーニャが21周目まで盤石のリードを維持。ドライバー交代と“プッシュ・トゥ・パス”起動時に効果的な戦略を適用したガルシアは、サンテロからの追撃を巧みにかわしてポジションを堅守していく。
一方、背後からワールドクラスで戦って来たウルティアのプレッシャーを受け続けたサンテロは、これを封じ込める方に集中力を割かれ、首位のルノーを逆転することは叶わず。ペーニャ/ガルシア組が2019、2021、2022年と3度目の200km戦制覇を成し遂げ、ペーニャにとっては併催のフォーミュラ・ナショナル・アルゼンティーナで息子のティアゴも勝利を飾るなど、STC2000でのポール獲得、スプリント制覇、そしてファイナル完勝と「まさに夢のような週末」となった。
これで271点としてチャンピオンシップのリードも拡大したペーニャに対し、41点差でサンテロ、45点差でラヴァーが続く展開に。続くSTC2000第11戦は、10月22~23日にコルドバ州北部、アルタグラシアに位置するアウトドローモ・オスカー・カバレンで争われる。