3年ぶりの開催となった2022年F1第18戦日本GP。多くのファンが待ちに待った金曜日フリー走行はあいにくの雨模様となったが、鈴鹿サーキットには3万8000人の観客が来場した。直近で開催された2019年の金曜日(3万3000人)を5000人、上回る動員となった。
鈴鹿サーキットでひさびさのF1公式セッション開催とあって、フリー走行1回目の最初にコースインしたケビン・マグヌッセン(ハース)には、大きな拍手が沸き起こったが、それを大きく上回る盛り上がりとなったのが、角田裕毅(アルファタウリ)がコースインした瞬間だった。
グランドスタンドをはじめ、各コーナーで大きな拍手が沸き起こり、その後も角田が目の前を通過するたびに、各コーナーでは多くの日の丸が振られていた。
木曜日の段階では、冷静さを保っている印象だった角田だが、母国凱旋での最初の1周は感慨深いものがあったという。
「雨のなかにも関わらず、FP1から本当にたくさんの人たちがスタンドにいてくれて、最初アウトラップで(コースに)出ていったときはグッとくるものがありましたし、特別な1周だったと思います」と角田。観客席で旗を振っているファンの姿が目に入り、ついつい気持ちを抑えられなくなりそうになった場面もあったようだ。
「雨のなか、まさかこんなにたくさんのお客さんがいると思わなくてビックリしましたし、すごくありがたかったです。ターン2では自分が(観客席で)座っていたところの目の前を走って……F1にデビューしたときのような新鮮な気持ちになっていました」
「本当にたくさんの応援が、(コックピットに)届いてきました。毎ラップ、毎コーナーでたくさん日本の国旗が振られているのを見て、その度にエネルギーをもらいました。たまに“オーバーエキサイト”しすぎるのではないかなと思ったんですけど……(精神状態としては)けっこう安定して走れていたと思います。ただ、(セッションが終わって)いざヘルメットを脱いでグランドスタンドのお客さんを見ると、興奮するものはありました」
角田にとってF1で鈴鹿を走るのは初めてだったが、着実に1周1周を消化している雰囲気が伺えた。FP1では19番手、FP2では誰よりも多い27周を消化し、1分45秒257のベストタイムで14番手につけた。FP2ではインターミディエイトにタイヤを交換した直後、最初のデグナーで飛び出してしまったが、大きなトラブルはなく、無事にコースに復帰することができた。また途中でロングランも行うなど、さまざまなメニューをこなしたようだ。
2回のフリー走行を振り返った角田は「やっぱり雨が降っていても“鈴鹿は鈴鹿”という感じで、すごく面白いなと思いますし、自分にとってはアドレナリンが出る……いつ走っても飽きないコースだなと改めて感じました」と、充実したセッションになっていた様子。だが、どちらのセッションとも、結果的にトップから3秒以上離される結果となったが、今の段階ではあまりタイム差は気にしていないようだ。
「フリー走行は、スイートスポットを見つけるタイミングが重要になってきて、雨が止んだ瞬間はタイムが出ますけど、次の周に雨が降ればタイムが遅くなります。予選では結局みんな同じコンディションで走るので、(今日は)そこまでタイムのことを気にせずに、クルマの理解と(F1マシンでの)鈴鹿の経験値を上げることに集中しました」
現時点の天気予報によると、土曜日はドライコンディションになる可能性が高い。そうなるとFP3でドライのセッティングを仕上げなければならない。その点、鈴鹿サーキットでの走行経験は豊富な角田だが、F1での走行となると未知数な部分が多い。そこは角田も腹は括っている様子が見えた。
「もちろん(今日は)ドライで走りたかったですけど、天候は変えられないので……。その分、雨のコンディションに集中できて良かったのかなと思います」
「(FP3については)やれることをやるだけですね。(ドライでの走行時間が限られることは)正直、難しくはなると思いますけど、ただボジティブなこととしては、FIA-F4で走ったという経験があるということですね。どうなるか分からないですけど、気合いで頑張ります」
「僕にとっては初めての(鈴鹿での)ドライコンディションになります。気を緩めずに、今日のようにビルドアップしていって、予選ではQ3を目指して頑張りたいと思います」