もっと詳しく

 路線バスは実用本意で見た目は二の次……というわけでもなく、実はバス車両も可能な限り装飾をしているのだ。その筆頭が今回の主役であるヘッドライト。

 一見すると大きく変わっていないようにも思えるかもしれないが、時代の流れと共にちゃんと変化しているのだ。しかも時代に即してトレンドにあった進化を遂げているのだった。一体どんな歴史があるのか?

文・写真:中山修一


1940〜60年代:丸目2灯

 戦後に作られたボンネットバスや箱型車体のバス車両のほとんどに、丸いヘッドライトが前面の左右に1つずつ付いた丸目2灯が採用されていた。

 丸目2灯は初期の自動車から使われ続けてきたスタイルで、1940〜60年代の日本製普通乗用車も丸目2灯が主流であったため、バスも例に漏れずライト回りは同じ形態となっていた。

 1952年にデビューした、今日でも現行車種のペットネームとなっている日野自動車の「ブルーリボン」も、この当時は丸目2灯であった。

1960〜80年代:丸目4灯

 1960年代の中頃に差し掛かると、ヘッドライトをロービーム用とハイビーム用に分けて左右に2個1組ずつ取り付けた、丸目4灯のモデルが登場し始める。いすゞが1964年に発売したBA741が比較的初期の丸目4灯車の例に挙げられる。

 この年代はシャシーと車体を別のメーカーで製造していたが、丸目4灯に変わるタイミングは各社ほぼ同時期だったようだ。まだ製造が続けられていたボンネットバスにも、いすゞBXD30のように4灯ヘッドライトのモデルが存在する。

 1984年発売の三菱ふそう初代エアロスターや、同年登場の日野ブルーリボンのヘッドライトも、車体メーカー問わずに丸目4灯が標準だ。

丸目4灯ライトが愛らしい日野レインボー

 路線バスでの丸目4灯時代は長く続いた。見出しでは1980年代までとしているものの、1990年代に入るや否やパッタリ途絶えたのではなく、後述する角目4灯へと軸足を徐々に移していったため、年代で区切りをつけるのは少し難しい。

1980〜2010年代:角目4灯

 四角いライトケースを左右に2個ずつ配置した角目4灯のクルマといえば、昭和50年代のハイグレード乗用車のイメージが強い。路線バスに角目のトレンドが流入したのは1984年。いすゞキュービックが路線車として初めて角目4灯を採用した。

 1990年代に入ると角目が一気に花開く。それまで丸目が標準で角目はオプションであった日野ブルーリボンが1995年に角目標準へと変わった。

 そのほか1996年にモデルチェンジした三菱ふそう二代目エアロスター、西日本車体が製造した96MC型ボディなどでも角目4灯ライトが標準装備となった。

 2000年に発売されたいすゞエルガは少し変わっていて、角目4灯でもランプが横並びではなく上下2段に配置されており、顔立ちに強い個性を感じる。

縦に配置された角目4灯が特徴的な2014年式いすゞエルガ

2010〜現在:角目2灯

 2014年式の三菱ふそうエアロスターを境にバスのヘッドライトは再び2灯へと戻る。ある種の原点回帰と呼べそうであるが、ライトケースは角形なので昔のバスの表情とは大きく異なる。角目4灯であったいすゞエルガも2015年式から角目2灯になった。

 現在も製造中の中・大型路線車に、三菱ふそうエアロスター、日野ブルーリボン/レインボー、いすゞエルガ/エルガミオがあるが、いずれの車種もLED化され、ヘッドライトは角目2灯だ。

 ただし角目とは言っても少々「吊り目」状のデザインが採られている。最近の乗用車には吊り目が多く、これもトレンドを汲み取った結果から生まれたスタイルかも知れない。

 今後のヘッドライト形状がどう変化していくのか注目したい。

投稿 いつの時代もほぼ一緒はウソ!? 路線バスのヘッドライトはトレンドに超敏感自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。