フランス、ポール・リカールで10月26~30日に開催された第2回『FIAモータースポーツ・ゲームス』のうち、世界的に展開されるTCR規定車両を採用した“ツーリングカー・カップ”の競技は、公式練習からグリッド予選、そして予選レースまで全セッションを制圧する勢いを見せたベルギー代表のジル・マグナス(アウディRS3 LMS 2)が、最終メインレースでまさかの事態に。
30分ヒートのオープニングラップを終え、メインストレートに戻ったところで彼のアウディは力尽き、その横を駆け抜けていった僚友トム・コロネル(アウディRS3 LMS 2)が母国オランダに金メダルをもたらした。
2019年にイタリアはバレルンガで開催されて以来、度重なる延期や大会中止でようやく2度目の開催に漕ぎ着けた“モータースポーツ界のオリンピック”だが、10月に入って世界各国から代表団となる出場ドライバーが続々と確定。
北欧スウェーデンからは、TCR最終年となったSTCCスカンジナビアン・ツーリングカー選手権でタイトル争いを展開したアンドレアス・バックマンがエントリーし、TCRヨーロッパ参戦組からはスペイン代表のティーンエイジャー、イシドロ・カエハス(クプラ・レオン・コンペティションTCR)や、アイルランド代表ジャック・ヤング(FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR)らがフランス入り。
そして南半球からはブラジル代表ラファエル・レイス(W2プロGP/クプラ・レオン・コンペティションTCR)に、隣国アルゼンチンの人気シリーズTC2000(旧スーパーTC2000)で活躍を演じる17歳のイグナシオ・モンテネグロ(コブラ・レーシング/FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR)や、1番乗りで参戦表明したオーストラリア代表アーロン・キャメロン(プジョー308 TCR)など、総勢18台が集結した。
普段は各国各地域の国内選手権やリージョン選手権で戦うドライバーが一堂に介した最初のFPでは、レースコントロールがFCY(フルコースイエロー)の手順も確かめつつセッションが進むと、香港に拠点を置くALMモータースポーツのシビックを操るヤングを抑え、WTCR世界ツーリングカー・カップ参戦中のマグナスが貫禄の最速タイムを刻んだ。
■ポール獲得マグナスが1周目に消える波乱
続いて地元出身フランス代表のテディ・クレーレ(プジョー308 TCR)が先行したFP2でも、最初のセッション同様に4輪脱輪判定で多くのドライバーがベストタイムを抹消される展開に。しかし午前でレースコントロールのリアルタイム判定を学んでいた強豪チームがその状況を逆手に取り、セッション序盤は抹消に次ぐ抹消で本来のベストタイムを“マスク”するかたちに。
結果、終盤にはマグナス、ヤング、コロネルとFP1同様のメンバーがトップ3を固め、土曜夕暮れ時の計時予選でもベルギー代表の23歳がポールポジションを奪取。フロントロウ2番手にコロネルが並び、ヤングは2列目3番手のグリッド順となった。
明けた日曜正午前にスタートした予選レースでは、複数台の車両にトラブルが発生し、ブラジル代表のレイスはフォーメーションラップとスタートグリッドの2回ともマシンが応答せず。最終的にDNFに追いやられたほか、ヤングのシビックを追走していたコムトゥユー・レーシングオペレーションのバックマンも、アウディに問題が発生してピットへ。そのままレースを終えることに。この結果、脅かす存在の消えたマグナスが勝利し、2位コロネルとともに午後のメインレースに向け最前列スタートを確保した。
すると現地時間午後14時30分開始のファイナルでは、スタートから首位を維持したポールシッターが、1周をまたずにドライブシャフトの問題によりホームストレートのサインガード前で失速。それを横目で見たコロネルは、リードを引き継ぎながらも「クルマのケアに100%の神経を注ぐ」ドライブを強いられる。
しかし追走集団を形成したクレーレ、モンテネグロ、カエハス、そしてヤングのパックも、入れ替わり立ち代わりでサイド・バイ・サイドのポジション争いを繰り広げる渦中で、ヤングには接触による5秒加算ペナルティなどが課せられ、コロネルの逃げを容認する結果に。
これでオランダ代表のベテランが初回の5位を上回る金メダルを獲得し、スペイン代表カエハスが銀を奪い、トラック上ではコロネルに迫る2番手フィニッシュながら5秒加算で後退したヤングが3位の銅メダルとなった。
大会を終えプロモーターのSROモータースポーツ・グループは、次回大会を2024年10月のスペイン・バレンシアで実施することをアナウンス。今後の『FIAモータースポーツ・ゲームス』は隔年開催になることも同時に発表されている。