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 ウインカーレバーを軽く操作すると、数回だけ点滅して消えてくれる、ワンタッチウインカー。ハンドル操作で点滅がオフにならない車線変更の際に便利な機能で、現在は、国内外の多くのモデルで採用されています。

 しかし、ワンタッチウインカーは3~5回しか点滅しないことから、本来のウインカーとしての役目を果たせず危険、という声も。今後さらに採用が進んでいくと思われるワンタッチウインカー。はたして、ほんとうに必要な装備なのでしょうか。

文:Mr.ソラン、エムスリープロダクション
アイキャッチ写真:Adobe Stock_xiaosan
写真:Adobe Stock、写真AC

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最大のメリットは「戻し忘れ防止」

 ウインカー(方向指示器)は、クルマが左折、右折、Uターン、または車線変更する際に、あらかじめ周囲にクルマの進行方向や動き方を知らせる安全のための装備です。ご存じのとおり、ウインカーは通常、進路変更時にレバーをカチッとする定位置まで押し下げる(押し上げる)ことで点滅し、進路変更を終えてハンドルを戻すと、レバーが自動的に元の位置に戻って点滅が終了します。しかし、車線変更のようなハンドルの戻し量が少ない場合は自動で戻らないため、手動で戻す必要があります。(ダイハツ車には、ワンタッチウインカーでなくとも定位置に戻るウインカーレバーが採用されています。緩いカーブなどでウインカーが戻らないときは、ワンタッチウインカーの要領で軽く触れることでキャンセルできます。)

 その点、ワンタッチウインカーを装備していると、レバーを軽く操作することで3回~5回だけ点滅させることができ、この場合は手動で戻す必要がありません。欧州で採用が始まり、近年は軽自動車を含めた国産車でも採用が進んでいます。

 ワンタッチウインカー最大のメリットは、ウインカーの戻し忘れが防止できること。誰でも1回くらいは、戻し忘れの経験があるでしょう。時折、ウインカーを出しっぱなしで走り続けているクルマを見かけますが、曲がるのか、曲がらないのかと、後続車としては混乱してしまいますよね。

 また、ウインカーを戻すという1つの動作が省略できるので、スイスイと走れるような高速走行では、テンポよく進路変更ができるのも利点といわれています。高速道路の車線変更では、多くの人が使っているようです。

しかし、状況によってはリスクがあり、合図不履行違反の可能性も

 このように、ワンタッチウインカーは、使い方によってはドライバーにとって便利な装備ともいえますが、一方で周囲のクルマから見れば危険な装備だという意見も多くあります。

 標準的なワンタッチウインカーの点滅は、3回で3秒程度。3回3秒程度だと、後続車から見れば、ウインカー点滅と同時に突然車線変更した、あるいは点滅が終わってから車線を変更したようにみえることも考えられます。後続車がウインカーの合図を正確に認識できないと、交通事故のリスクが高まり、それだけでなく「強引に車線変更した」「割り込んだ」と受け取られれば、あおり運転を誘発するリスクも高まります。

 法的にみても、道路交通法では「進路を変える際、進路変更が完了するまでウインカーを出し続けること」、また「進路変更では、進路変更する3秒前にウインカーを出さねばならない」と決められています。3秒程度しか点滅しないワンタッチウインカーは、実際にクルマが車線変更を行う時には、ウインカーは動作していない、もしくは、車線変更と同時にウインカーが動作することになり、「合図不履行違反」となる可能性があります。

ワンタッチウインカーは、ウインカー点滅が僅か3回~5回なので危険だという意見もあり、合図不履行違反となる可能性もある(PHOTO:写真AC_ うさみのん)

途中でキャンセルできないため、点滅回数を増やすことができない

 トヨタはこれまで、ワンタッチウインカーの採用に慎重な姿勢をみせていましたが、ヤリスで初めて採用しました。ただヤリスでは、点滅回数が5回と、標準的な3回よりも多く、真意は定かではありませんが、おそらく法令違反を回避するために増やしたものだと考えられます。

 確かに5回(5秒程度)点滅にすれば3回(3秒程度)よりも安全性は高まります。しかし、それでも進路変更前3秒前に点滅させると、実際の進路変更に使える時間は2秒程度しかありません。後続車に迷惑をかけずに安全に進路変更し、法令も順守するなら、7~8回程度が必要だと思われますが、なぜ、もっと点滅回数を増やさないのでしょうか。

 それは、ワンタッチウインカーには、キャンセル機能がないからです。通常のウインカーでは、手動で戻せばキャンセルできますが、ワンタッチウインカーは一度作動させてしまうと、設定された時間内は点滅を続けるため、車線変更しようとワンタッチウインカーを作動させてしまったけど、ちょっとタイミングが悪くなってしまったので車線変更をやめた、という状況になっても、ワンタッチウインカーはキャンセルができないため、点滅をしつづけます。これがもし、7~8回続くとなると、後続車を混乱させてしまうことになってしまいます。

 点滅回数を増やすためには、新たにキャンセル機能を追加しなければなりませんが、ワンタッチウインカーにキャンセル機能を付けてしまうと本末転倒となり、通常のウインカーと何ら変わらないことになってしまいます。メーカーは、利便性や安全性、コストなど総合的に判断して、3~5回の点滅回数が適切であると判断していると思われます。

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 ワンタッチウインカーについては、ストレスなく進行変更ができる便利な装備という肯定派と、法的にも違反している可能性があり危険だから止めるべきという否定派が混在する、まさに賛否両論の状態です。法令遵守と安全性の観点からは、必要ないのでは、と思われますが、メーカーの動きを見る限り、賛否両論や法的な矛盾も抱えながら、今後も確実に普及していくことが予想されます。

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