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 環境保護が一層注目されるようになり、今やエコの筆頭になったハイブリッド車。ハイブリッドといえばトヨタのプリウスとイメージをする人も少なくないハズ。それ以外にも、普通乗用車もハイブリッドは当たり前となりつつある。

 実は普通乗用車よりも早くハイブリッドを実用化していたのはバスであるのはご存じだろうか。そんなハイブリッドのバス車両、最近はどうなっているのだろう?

文:中山修一
写真:中山修一/バスマガジン編集部


燃費向上のソリューション

 バッテリーで動く電動モーターでクルマを走らせる発想自体は自動車の黎明期からある。これを燃費の向上や排出ガスを減らす等の「エコ」に応用するための研究開発が盛んになったのは1980年代以降だ。

 そんな中、1989年に試作車が完成、1991年に実用化したのが、ディーゼルエンジンと電動モーター両方の力で車軸を回して走らせる日野のハイブリッドバスだった。

 プリウスの発売が1997年なので、ハイブリッド車ではバスの方が6年も早かったのである。

 日野自動車が実用化に成功して以降は「環境にやさしいバス」として各メーカーからハイブリッドバスが製造されるようになった。

都営バスに導入されているハイブリッドバス

 ハイブリッドと一口に言っても、前述のエンジン/電動モーター両方で車軸を回すタイプのほか、ディーゼルエンジンを発電機にして電動モーターの力だけで車軸を回す方式や、油圧を利用して燃費向上と排出ガス低減を図る仕組みなどがある。

 3番目の油圧タイプは三菱ふそうが1995年に実用化した蓄圧式ハイブリッド「MBECS」と呼ばれるシステムだ。減速時に独特な音がしたので覚えている人も多いかもしれない。

 最近は、発進時と加速時に電動モーターだけの力を利用し、巡航中はディーゼルエンジンの力で適宜サポートするタイプ(パラレルハイブリッド)が主流になっている。

 現行車種では日野ブルーリボンといすゞエルガの2車種にハイブリッド車の設定があり、新車導入も可能。

 どちらの車種も、屋根上に「コブ」が1つあるのが普通のディーゼル仕様、2つあるのがハイブリッド仕様と、外観から見分けがつく。ハイブリッド仕様ではコブの1つがバッテリー収納スペースだ。

 カタログ値での燃費も、いすゞエルガの場合ディーゼル仕様が4.7〜5.2kmに対してハイブリッドは5.5kmと、後者のほうが低燃費だ。

普及は別問題?

 電動モーターは出だしから最大の力を掛けられる特性を持つため、細かに発進停止を繰り返す路線バスとの相性が良い。

 燃費上々でエコにも一役買っているハイブリッド方式は、路線バスにとって理に適ったシステムと言えるが、それだけ全国に普及していると考えてOKだろうか?

 日本バス協会が発行する近年のデータによれば、全国に導入されている乗合バスの数は全部で61,542台(2019年現在)ある。

 普通乗用車のハイブリッドがあれだけ普及しているのだから、バスもこの半数くらいなのではと思いきや、驚いたことにハイブリッドは路線車1,238台、高速車27台、貸切その他51台合わせて1,316台(2021年現在)しかないのだ。

 ハイブリッドの路線車が多い都道府県を順に並べると東京都(310台)、神奈川県(263台)、京都府(78台)、兵庫県(72台)、北海道・千葉県(各69台)と続く。0台の県も多数だ。

 なぜそこまでハイブリッドバスは少ないのか…考えられる理由が2〜3あるうち、特に壁となっているのは車両本体価格だろう。通常のディーゼル車の大型バスが2,500万円くらいに対してハイブリッドは3,000万円程度と、結構な開きがあるのだ。

 路線バスの場合1台買えばそれで終わりというわけではなく、複数台を用意する必要があるため、1台あたり数百万円の開きがあるとハイブリッドの導入優先度はどうしても下がってしまう。

 導入後の整備もまた問題となる。ディーゼル車とハイブリッド車とで保守のための環境を二つ作ることになり、ディーゼル車のみを扱う場合に比べると手間やコストが多くかかる。

 実際ハイブリッド車を運用しているバス事業者の例を見てみると、全ての営業所にまんべんなくハイブリッド車を割り当てているのではなく、まとまった数を特定の営業所に絞って投入する傾向が極めて強い。

京急バスのハイブリッド車。屋根上の前のコブは電池収納スペースだ

 バッテリーの交換費用が高額であるのもハイブリッド車の弱点であり、そこまで考慮するとディーゼル車のほうが割安になると思われる。

 さらに、技術の進歩で普通のディーゼル車もかなりエコになってきており、現行車種ではディーゼル/ハイブリッドどちらも同じ燃費基準と排出ガス規制をクリアしている。

 過去には助成金を利用して複数のハイブリッドバスを導入した事業者もあったが、老朽化などにより引退が進み、多くの場合は普通のディーゼル車に置き換わっている。

 走行システムが路線バスの運行上の性質と合っていて、環境にも配慮できる点でハイブリッドバスの有効性は大きいものの、コストの面が最大のネックと言える。

 今後は電動モーターとバッテリーのみで走行可能なEVバスもどんどん登場してくるはずで、ちょうどエンジン車と電気自動車の中間にいるハイブリッドバスの行く末が気になるところだ。

投稿 プリウスより先にデビュー!! ハイブリッドはバスのほうがパイオニアだったってマジか自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。