10月7〜9日、ドイツのホッケンハイムでDTMドイツ・ツーリングカー選手権の2022年最終戦となる第8ラウンドが行われ、大きなアクシデントによる赤旗中断のあった土曜日のレース1ではルーカス・アウアー(メルセデスAMG・チーム・ウィンワード/メルセデスAMG GT3)が、日曜日のレース2ではマルコ・ウィットマン(ワーケンホルスト・モータースポーツ/BMW M4 GT3)がそれぞれ勝利を飾った。
タイトル争いでは、このラウンドにランキング首位で臨んだシェルドン・ファン・デル・リンデ(シューベルト・モータースポーツ/BMW M4 GT3)が2レースとも表彰台に登壇し、悲願の初チャンピオンに輝いた。
■シューマッハーとプライニングを引き金とした戦慄の大クラッシュ
ポルティマオで開幕した2022年のDTMシーズンは、伝統のホッケンハイムで最終戦を迎えた。前戦レッドブルリンクを終了した段階で、前述のとおりシェルドンがランキング首位、2位にはアウアー、3位にはレネ・ラスト(チーム・アプト/アウディR8 LMS)、4位にトーマス・プライニング(KUSチーム・ベルンハルト/ポルシェ911 GT3 R)、5位にミルコ・ボルトロッティ(グラッサー・レーシング・チーム/ランボルギーニ・ウラカンGT3)が続くという状況。現実的には、この5人によるタイトル争いが期待される最終ラウンドとなった。
土曜日午前のレース1予選では、逆転タイトルを狙うアウアーが最速タイムをマークし3ポイントを獲得。グリッド2番手にはルカ・ストルツ(メルセデスAMG・チームHRT/メルセデスAMG GT3)が並び、以下ボルトロッティ、ウィットマン、マーロ・エンゲル(メルセデスAMG・チーム・グループMレーシング/メルセデスAMG GT3)、シェルドンの兄であるケルビン・ファン・デル・リンデ(チーム・アプト・スポーツライン/アウディR8 LMS)というトップ6となった。
ラストは7番グリッドから、ランキング首位のシェルドンは予選でのタイヤ装着タイミング違反による10グリッド降格ペナルティがあり16番グリッドからのスタートとなった。
決勝は通常どおり55分+1周、1回のタイヤ交換が義務付けられるフォーマット。アウアーがスタートを決め、2番手にはウィットマン、3番手にはケルビンが浮上するが、接触によりケルビンの右リヤタイヤがバースト。さらにこのオープニングラップではアルジュン・マイニ(チームHRT)が接触からスピンしガードレールへとクラッシュ、セーフティカー(SC)が導入となった。
これにより3番手にはラストが浮上し、ボルトロッティは5番手。シェルドンもSC導入時点までに8番手にジャンプアップを果たしてきていた。
残り42分、2by2の隊列でリスタートが切られると、1コーナーではウィットマンが首位へ。その背後では複数の接触による連鎖的な混乱があり、最終的にはマリウス・ツーク(アテンプト・レーシング/アウディR8 LMS)とロルフ・イネイシェン(グラッサー)が激しくクラッシュしてしまう。
さらにこの周は混乱が続き、インフィールドセクションに入ったところでダービッド・シューマッハー(チーム・ウィンワード)とプライニングがサイド・バイ・サイドの状態から接触し、2台は高速のままコース右側のウォールへとハードヒット。
その後方から事故現場にさしかかったデニス・オルセン(SSRパフォーマンス/ポルシェ911 GT3 R)がリカルド・フェラー(アプト・スポーツライン)にプッシュされる形でコントロールを失い、スピンしながらリヤからコース左側のバリアに激しくクラッシュ。オルセンのマシンからはエンジンが外れて炎が上がり、さらにこの外れたエンジンが後続のニック・キャシディ(レッドブル・アルファタウリ/AFコルセ フェラーリ488 GT3)を直撃するという戦慄のマルチクラッシュとなった。
これでレースは赤旗中断に。クラッシュに巻き込まれたドライバーらはその後メディカルセンター、そして病院へと向かったものの、全員の無事が確認されている。
長い中断の後、レースはアウアーを先頭に1列のリスタートで再開。この時点でコース上にはわずか17台しか残っていなかった。
残り34分からの再開ということで、間もなく各車は続々とピットへ。トップ2台、アウアーとウィットマンはテール・トゥ・ノーズの状態で同時ピットインするが、順位変動はなし。
一方、遅れてピットインしたシェルドンは実質5番手でコースに復帰。そこからラスト、ストルツとパスしていくとトップ2台に追いつき、残り1分を切ったところで同じBMW陣営のウィットマンをパス、実質2番手へと浮上した。
これでアウアーが優勝、2位はシェルドン、3位にウィットマンというレース1の表彰台となった。赤旗直前のピットインによりアドバンテージを得ていたデフ・ゴア(チーム・ロズベルグ/アウディR8 LMS)は、結局このピットが有効とされたようで、正式結果でも4位に。ラストは5位でフィニッシュした。
レース1は出走27台中、じつに11台がリタイアする荒れ模様に。なお、このレースで、シェルドンとフィリップ・エングを擁するシューベルト・モータースポーツがチームタイトルを決めた。
■レース2も予選から波乱。シェルドンが追い上げ
前日のクラッシュによるマシンの破損、さらにはドクターストップなどが響き、日曜のレース2に参加できたのは20台。シューマッハーやキャシディをはじめ、7台が不出場となった。
予選では最速タイムをマークしていたフェリペ・フラガ(レッドブル・アルファタウリ・AFコルセ)がクラッシュし、赤旗に。原因車両ということでタイムが抹消された結果、ラストがポールポジションへと繰り上がった。
レースコントロールがセッションを再開しないという判断をしたため、多くのドライバーがアタックをできずに予選を終えてしまう。この結果、タイトルを争うシェルドンは5番手から、アウアーは11番手から、レース2をスタートさせることとなった。
レースのスタートでは、抜群のダッシュを決めた4番手スタートのウィットマンが1コーナーにトップで進入し、ラスト、クレメンス・シュミット(GRT・グラッサー・レーシング.com/ランボルギーニ・ウラカンGT3)と続くオーダーに。
シェルドンは2周目までに4番手にポジションを上げ、アウアーも6番手と、タイトルを争う役者たちが上位に進出してくる。しかしその後シェルドンはツークに抜かれ6番手、アウアーも7番手に順位を下げる。
トップ3台が後続を引き離していくなか、残り45分、シェルドンとアウアーは早めの同時ピットへ。シェルドンはピットアウト後も好ペースを維持し、ステイアウトを続ける上位3台との見えない戦いとなる。
残り39分でシュミットがピットへ。次の周にはラスト、さらに1周後にはトップのウィットマンもピットへ向かう。
ここでアウトラップのウィットマンにラストが襲い掛かり、ヘアピン立ち上がりから並走すると、スタジアムセクションでのサイド・バイ・サイドで接触を繰り返しながらラストが前に出た。
しかし、次の周ではラストがグリーンへマシンを落とした隙にウィットマンが抜き返し、再び首位に立つ展開に。
レース折り返しを過ぎ、実質3番手を走っていたシュミットは右リヤタイヤのパンクにより無念の戦線離脱。ウィットマン、ラスト、シェルドンという実質のトップ3に変わる。
結局後半はこの順位のままレースが進行し、ウィットマンが最終戦にして今季初優勝。3位でフィニッシュしたシェルドンが参戦4シーズン目での初タイトルを決めた。レース2も完走わずか12台というサバイバル戦となった。
ピット後も順位を上げられなかったアウアーは、メルセデス勢最上位の7位でフィニッシュ。この結果、マニュファクチャラーズタイトルは、最終戦で上位に多くの車両を送り込んだアウディがメルセデスを逆転する形で獲得している。