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新型クラウンにはない! ほんとに必要なの? 知っているようで知らないリアワイパーの重要性とは

 新型クラウンシリーズの4モデルのうち、すべてのモデルにリアワイパーがない。3モデルはまだプロトタイプなので今後どうなるかわからないが、9月1日に発売されたクラウンクロスオーバーはリアワイパーがない。

 また、新型ノア(トビラ写真のアルファードも同様)は一見、リアワイパーがないように見えるが、なんと上部のリアスポイラーに内蔵されている。新型ノアの開発者は、この隠しリアワイパーの採用について「スッキリさせたかった」と語っている。

 ではそもそもリアワイパーは本当に必要なのか? リアデフォッガーだけで充分じゃないのか、という意見もあるがどうなのか、最新リアワイパー事情をお届けしたい。

文/岩尾信哉
写真/ベストカーweb編集部、ベストカー編集部、トヨタ、日産、ホンダ、マツダ、スバル、ダイハツ、スズキ

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■セダンの採用は減少傾向

クラウンクロスオーバーはリアワイパーレス。ほかのクラウンスポーツ、クラウンエステート、クラウンセダンはまだプロトタイプのため、市販型ではどうなるかわからないが、現時点ではリアワイパーは見あたらない
R35型GT-Rはリアワイパーレス
レクサスLSにはリアワイパーは装着されていない

 個人的にはリアワイパーは基本的に標準装備されているイメージがある。フロントワイパーと違って、法律で装備が規定されているわけではないことが意外にも思えても、後方視界の確保がないがしろにされるようでは問題だ。

 最近の「リアワイパーレス」のデザインの潮流を端的に表しているのが、トヨタの新型クラウンの「クロスオーバー」だろう。

 ボディ形状、特にルーフ後端から流れるように落ちていくリアウインドゥのラインを見ると、リアエンド周囲にワイパーが付随してしまえば、なにか無粋な仕立てに感じてしまうかもしれない。

 流行のクロスオーバー(あるいはクーペ)SUVのボディラインがリアに向けてさらに長く伸びるようになれば、空力性能を考えてもリアワイパーは邪魔者扱いされる傾向になってくるだろう。

 対して、先頃発表されたばかりの日産のSUVであるエクストレイルは、SUV本来のタフさを演出した「スクエア」なリアエンドのデザインゆえか、リアワイパーが設定されている。

 さらに新車販売が低調というかモデル数そのものが減少しつつあるセダンを見てみると、特にリアワイパーの設定が減少する傾向にあることは最近では顕著になってきた。個人的にはあまり良い傾向とは思えないが、話題としてセダンのラインナップが日本市場で加速度的に減少していることと重なり合っている。

 ところで、日本市場ではハッチバックのみのボディ設定となったシビックはリアワイパーを標準装備としている。最近登場したタイプRでもしっかりとリアワイパーをテールゲートに備えていることには、軽量化などを考えれば意見が分かれるかもしれない。

スポーツモデルはリアワイパーレスにすることが多いが、空力にこだわる新型シビックタイプRにリアワイパーを採用している

 スバルがリアワイパーを標準仕様として、全車種でリアワイパーを設定しているという話題はよく耳にしてきた。

 ただし、トヨタとの共同開発モデルに関しては事情が異なり、BRZ(トヨタ86)とクロスオーバーSUVといえる電気自動車のソルテラ(同bZ4X)がリアワイパーを未設定となっているのは、生産がトヨタ元町工場で実施されるなど、あくまで「お家の事情」といえる。

セダンやワゴン、ハッチバックではリアワイパーを全車種で標準装備するスバルが、電気自動車のソルテラがリアワイパーを未設定としている。共同開発されたトヨタbZ4Xとともに元町工場で生産されることが大きい

■リアワイパーの機能の「実際」

 改めて断っておけば、現在販売されているモデル全体としては、決してリアワイパーそのものの採用が減少しているわけではない。コンパクトカーやミニバン、軽自動車などでは安全性確保のための標準装備として欠かせぬことに変わりはないからだ。

 そこでリアワイパーが現状でどのように扱われているかを調べていくと、多くの機能的なバリエーションがあることに改めて気づかされる。

 最も基本的な仕様といえる「ウォッシャー&ワイパー」から始まって、間欠式(作動インターバルが変更可能な「時間調整式」)、センサーを利用した雨滴感知式などと多機能化が進んできた。

 他の車両の機能と組み合わせて身近になりつつある機能では、ワイパー機能を「オン」にした状態でバックさせようと後退(リバース)ギアを選ぶと、自動的に作動する機能が挙げられる。

 おもしろいのは前述したが、アルファード&ヴェルファイア、新型ノア&ヴォクシーの隠し(格納式)ワイパーである。

 リアワイパーを使わない時はリアスポイラー部分に格納されており、リアワイパーのレバーをひねると出てきて稼働し、使わない時には再び格納されるという、購入したオーナーにしかわからないかもしれない優れモノだ。

新型ノアの格納式リアワイパー
ステップワゴンは標準タイプのリアワイパーを装着
新型シエンタでは、ウォッシャー連動間欠リアワイパー(リバース連動機能付)を全グレードで標準装備する

 いっぽうで、スポーツカーやクーペではリアワイパー装着車は珍しくなっている。たとえば、リアウインドウに熱線が埋め込まれるなど、リアワイパーを装着していない場合には、雨滴除去(と曇り防止など)に関しては「まあ有効かな」と思える程度にしか感じられない。

 ユーザーによっては撥水(あるいは親水)コーティングなどを施す場合もあるだろうが、ひとつ注意しておきたいのはドライブレコーダーを後付けで装着する場合、ワイパーの可動域に合わせて装着する必要があることだ。

■人気の50車種のリアワイパー装着車の状況は?

意外なところではJPNタクシーはリアウインドウ上部に小型のワイパーが付いている

 ここからはリアワイパー装着の現状を知るために、自販連の通称名別ランキングの30車種、軽販売ランキング10車種、ボディ種別など、合わせて50車種超の設定を調べてみた。結果としては当然ながら、リアワイパーはほとんどのランキング車種で標準装備になっていた。

 例外的なのは、トヨタではプリウスの廉価(燃費)グレードでは設定がないこと。軽自動車も標準装備が基本とはいえ、スズキのアルトではハイブリッドXでは標準ながら、その他のグレードでは4WD車について標準としている。ダイハツのタフトでも廉価グレードのみオプション設定とされている(価格は5500円)。

 2022年7月の乗用車販売台数(自動車販売協会連合会調べ)は、1位はヤリスの1万8679台。ヤリスは基本的にボディ形状を問わず標準装備となる。

 トヨタブランドでは、一部の廉価(燃費仕様)モデルや、スポーツ性を重視したGRシリーズのヤリスや86、スープラといったスポーツクーペなどを除き、基本的にほとんどのモデルで標準装備と捉えてよい。

標準車のヤリスにはリアワイパーが装着されている
GRシリーズ、スポーツクーペなどを除いて、基本的にほとんどのモデルで標準装備と捉えてよく、スポーツ性を重視したGRヤリスは、ノーマルのヤリスにはリアワイパーが装着されているが、GRヤリスはスポーツクーペの86、スープラなどともに設定されていない

 ヤリスに続いて2位につけているカローラは、現状でなんとも幅広いモデルバリエーションになっているので面白い。

 ちなみに、トヨタの現状での標準的な仕様といえるのは、「ウォッシャー連動間欠リアワイパー(リバース連動機能付)」。上級な車種やグレードになると、時間調整機能が追加されるケースが増えてくる。

 カローラのリアワイパーの設定に関しては、継続販売されている旧型のセダンである「アクシオ」では、メーカーオプションで価格は1万5600円の設定。ワゴンの「フィールダー」は標準装備とされている。

カローラセダンのリアワイパーはメーカーオプション
リアワイパーが装着されているカローラスポーツ
リアワイパーが装着されているカローラツーリング

 対して現行モデルのセダンである「カローラ」は、フロントでは一部グレードで時間調整式としたフロントに対して、リアはメーカーオプションとして設定されている。

 ワゴンの「ツーリング」や5ドアハッチバックの「カローラスポーツ」では標準装備される。最新モデルである「カローラクロス」も標準装備となる(一部グレード除き時間調整式)。

 いっぽう、GRカローラ(ベースは5ドアのスポーツ)にも標準装備されたままなのは、WRCホモロゲーションモデルに準じた仕様となるGRヤリスとの立ち位置が異なるためだろう。
 
 同じトヨタでも輸入車高級ブランドに近い位置づけとなるレクサスでは、セダン系やスポーツクーペには装備されないのに対して、UX/NXなどには装備するなど、ボディ形状で採用するかどうかを明確に決めているようで、後述する輸入車ブランドと共通の仕様設定ともいえる。

 とはいえ、安全装備について抜かりがないトヨタであっても、採用では曖昧な部分が生じつつあることは間違いない。デザインや設計上で安全基準において問題がないのであれば、余分な装備ということになる。

 ちなみに、トヨタブランドでは現状で新型クラウンのセダンは未発売だが、数少ないモデルとなるカムリや燃料電池車のミライに設定されていないのだから、将来セダンにおいてリアワイパーが消滅する可能性はあるはずだ。

■リアワイパーを省略する理由

スポーツカーたる新型フェアレディZには用意されていない

 いっぽう、欧州ブランドで明らかなのは、すでにセダンに限ってはリアワイパー装着モデルがほぼ見たらないことだ(ハッチバックやワゴンではほとんどが標準装備)。空力性能の向上がめざましいこともあるが、「見た目」と「燃費」の向上の一挙両得が狙えるのだから当然の流れといえる。

 いまや風前の灯火といえる日本市場のセダンとして生き残っているスカイラインに設定がないのは、メインの北米市場など高速走行モードが多い海外市場向けの仕様では、セダンではあまり有効とはいえず、装備として省略せざるを得ない事情があるのだろう。

 機能面での要素を物理的に突き詰めて無駄を省くことを考えれば、リアワイパーの必要性は、リアウインドウの傾斜角度がどの程度「寝ているのか」あるいは「立っているのか」という点に絞り込まれてくる。

 ホイールとリアウインドウとの距離が接近していれば、路面からの埃や雨中の走行時での水飛沫などによる汚れが付着しやすいかどうかが要点となる。他にも、高速走行時にワイパーがバタつくような強風に見舞われる場合などを考えれば、未装着のほうがよいという考え方も成り立つ。

 このように海外勢での設定がほぼ見当たらないことを見ても、ボディデザインに重きを置けば、セダンでのリアワイパーの消滅傾向は必然といえるかもしれない。

■重視すべきはデザインか、安全機能か?

日産サクラのリアワイパー
リアワイパーを装着するCX-60
小ぶりなリアワイパーを装着するレクサスLX

 リアワイパーが装着されるかどうかは、現状ではセダン、ハッチバック、ミニバン、ステーションワゴンなどといった車種のカテゴリーが明確であればわかりやすい。

 たとえば、軽自動車はトールワゴン全盛ということもあって、パッケージングを考えれば垂直に立ったリアエンドは当然となるので標準装備が必須となるわけだ。細かくいえば、ボディタイプというよりは、リアエンドのデザインによって装着の有無が判断されることになる。

 対して、「クーペ・ライク(のような)」といった商品性向上に重きを置いたデザインコンセプトが、リアワイパーの居場所を失わせつつある。空力性能を煮詰めて燃費を向上させるといった要素で設定が左右されることもある。

 それでもリアワイパーの存在価値は、あくまで「安全性」すなわち「視界の確保」にある。日常使いでの降雨などへの対策はもちろんのこと、最近では珍しくもなくなってしまった豪雨や豪雪などの悪天候に対処するための安全装備であることを、肝に銘じておくべきだろう。

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