WEC世界耐久選手権の2022年王者となったトヨタGAZOO Racingのブレンドン・ハートレーは、11月12日に行われた最終戦バーレーン8時間レースにおいては、タイトル獲得に向け「リスクを冒すことは許されなかった」と語った。
セバスチャン・ブエミ、平川亮とともに8号車GR010ハイブリッドをドライブしたハートレーは、僚友7号車GR010ハイブリッドに続く2位でこのレースを終え、ライバルのアルピーヌが3位に沈んだことから、8号車がドライバーズタイトルを手にした。
ポールポジションからスタートしたハートレーは、8号車がアンダーステア症状を出したことで、レース中盤までに7号車のマイク・コンウェイへと首位を明け渡していた。
「最初から、(タイトルが)目標だった」とハートレー。
「もちろん、レースで勝ちたかったが、レースで勝つためにすべてを賭けるようなリスクは冒せなかった。間違いなく、そのリスクを管理する必要があったが、同時にレース中盤にはアンダーステアが大きくなってしまった」
「まだ分析しなければならないけど、7号車は中盤でペースが良くなり、彼らは勝利に値した」
ハートレーは最終戦に挑む時点で同点となっていたアルピーヌについて、「彼らは1年を通してタフなライバルだった」と語る。
「一年中、アルピーヌとも激しい戦いを繰り広げてきた。 彼らは最終戦まで僕らを苦しめた。素晴らしいシーズンを送ってきた彼らは、特筆に価する。(最終戦では)彼らのペースは、僕らより少し劣っているように見えた」
「チームのみんな、チームメイトに感謝している。正直なところ、まだ実感がわかないんだ。もっと多くの人が世界チャンピオンの名を口にするようになれば、実感がわくと思う」
ふたつのマニュファクチャラーでタイトルを獲得した初のWECトップクラスの王者となったハートレーは、トヨタですべてのタイトルを獲得したブエミと同じ3度目のドライバーズタイトルを獲得した。
ハートレーとブエミは、WECルーキーイヤーの平川を絶賛している。
「僕にとって決定的だったのはル・マンだ。亮がル・マンで踏んだステップと、そのプレッシャーだ」とハートレーは語った。
「さっきも、その話をしていたんだ。彼は金曜日に眠れず、ナーバスになっていたが、素晴らしいパフォーマンスを見せてくれた」
「そして亮のホームレースである富士では、彼が“先生”となってグリップがある場所を教えてくれたんだ」
「クルーとしては、富士でほぼ完璧なレースができたと思うし、この先もチャレンジできるという自信を与えてくれた」
一方のブエミは「(今シーズンは)ほとんどのチャンスを最大限に活かすことができたと思う。スパでのリタイアは大きな痛手だった。6戦のチャンピオンシップにおいてあのようなリタイアは、明らかに挽回が難しい」とシーズンを振り返る。
「クルーとして、僕らは素晴らしい仕事をした。亮はルーキーとして入ってきて、1年目でル・マンとチャンピオンを獲得したのだから、おめでとうと言いたい。彼は素晴らしい仕事をした。こういった形で飛び込むのは、簡単なことではないよ」
「チャンピオンを獲得できたのは素晴らしいことだ。もちろん、7号車はいつも強いし、彼らを負かすのは簡単ではないが、ル・マンとチャンピオンシップのダブル制覇はとてもいい気分だ」
■「2台が争うことを望んでいなかった」とパスカル・バセロン
トヨタGAZOO Racing・ヨーロッパのテクニカル・ディレクターであるパスカル・バセロンは、ドライバーズ選手権獲得を目前にした状況で、8号車はより保守的なアプローチを取る必要性があった、と最終戦について説明している。
「世界チャンピオンになるのは、常に重要なことだ」とバセロン。
「特にドライバーズタイトルでは、(アルピーヌの)前でゴールしなければならないので、非常に重要だった。完走することだけが目標ではないので、確かに緊張感はあったが、最後にはすべてがまとまった」
「7号車と8号車は、同じものを求めてはいなかった。8号車はアルピーヌの前でゴールするために、リスクを最小限に抑えなければならなかった」
「最悪の事態は、2台が争ってしまうことと、8号車がトラフィックでミスをすることだった」
「これは避けたかった。我々は、2台が争うことを望んでいなかった。2台はそれぞれ違う目標を持っていた。7号車はレースに勝つことを自由に追い求められたが、8号車は安全でなければならなかったのだ」