WRC世界ラリー選手権のイベントとして10年ぶりに開催された『ラリー・ニュージーランド』で、シリーズの歴史に新しい1ページが加わった。何を隠そう弱冠22歳のカッレ・ロバンペラ(トヨタGRヤリス・ラリー1)が、史上最年少でワールドチャンピオンに輝いたのだ。これまでの最年少レコードは故コリン・マクレーの27歳109日であったことから、トヨタの新王者はその記録を大幅に更新したことになる。
今回のWRC Topicでは、この歴史的瞬間が生まれた週末のラリーを現地で取材していた、モータースポーツジャーナリスト/フォトグラファーの古賀敬介さん厳選の写真を半フォトギャラリー・半ブログ形式で紹介します。前編から少し間が開きましたが、お待ちかねの後編をどうぞ。
※一部ショッキングな写真が含まれています。苦手な方はご注意ください。
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デイ3で総合首位に立ったカッレ・ロバンペラ(トヨタGRヤリス・ラリー1)が、総合3番手のオット・タナク(ヒョンデi20 Nラリー1/選手権2位)を約46秒リードするかたちで始まった競技最終日、ロバンペラは駄目押しのベストタイムで差をさらに拡げた。
そして迎えた最終のパワーステージ(SS17)直前、ロバンペラはスタートの直前までオンボード映像を見てステージを予習していた。
対するタナクも同様にギリギリまで映像をチェックしペースノートを修正。負け戦濃厚ながら最後までまったく手を抜かない。
ロバンペラが最終のパワーステージも制し、WRC史上最年少記録となる22歳1日でワールドチャンピオンに輝いた!
父親である元WRCドライバーのハリ・ロバンペラと抱き合い、自身初となるタイトル獲得を喜ぶロバンペラ。お父さんは号泣していた。
ラリー・ニュージーランドの表彰式会場はパワーステージの観客エリア。雨により路面はドロドロ。セバスチャン・オジエ(トヨタGRヤリス・ラリー1)の足もとに注目!
ポディウムでは最後まで熱い戦いを続けた元世界王者のタナクが、手荒く新王者を祝福。しかしこれは、まだ常識の範囲。
第6戦サファリ・ラリー・ケニア以来、久々のWRC出場ながら総合2位でフィニッシュしロバンペラのタイトル獲得をサポートしたオジエは、ファンの声に応え泥だらけの靴を脱ぐとシャンパンをなみなみと注ぎ……
最初のターゲット、新コドライバー王者のヨンネ・ハルットゥネンに“シューイ”! その後ろで身の危険を感じビビりまくるロバンペラだったが……。
偉大なるパイセンのシューイを断ることなどできず“特別なお酒”をゴクゴクと。「セブが靴を脱ぎ始めた時、マジでやめてくれと思った」とロバンペラ。その表情がすべてを物語っている。
後輩にだけ飲ませるのは不公平と、パイセンも自分自身にシューイ! そう、ここは南半球。シューイの本場だ。
見よ、レジェンドの恍惚とした表情を。「あの靴は毎日履き続けていたヤツだからスペシャルな味がした」と、翌日ハルットゥネンはソムリエのようにコメント。幸いにもお腹は大丈夫だったようだ。
泥靴酒をふるまった後は、タイトル獲得記念として特別なゴールドカラーが施されたヘルメットをプレゼント。世界王座の称号は、オジエから若きロバンペラへと受け継がれた。