WEC世界耐久選手権に参戦するトヨタGAZOO Racingのテクニカル・ディレクターを務めるパスカル・バセロンは、同チームに所属するドライバーが2023年のIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権に他メーカーのLMDh車両で参戦することを「ケース・バイ・ケース」で許可すると明らかにした。
2023年より、IMSAおよびWECの最高峰クラスではル・マン・ハイパーカー(LMH)車両とLMDh車両の相互乗り入れが可能となる。LMH規定のGR010ハイブリッドを有するトヨタは、2023年のIMSA最高峰『GTP』クラスには参戦せず、WECをコア・プログラムとして継続する予定である。
バセロンは先週末のWEC第5戦富士6時間レースにおいて、トヨタはライバルブランドにおいてドライバーたちがレースをしないことを望んではいるものの、トヨタが参戦しないことが決定している2023年のIMSAにおいては、生じる問題は「より少ない」と記者団に対し語っている。
トヨタのWECドライバーの何人かは、ここ数シーズン、IMSAの長距離耐久戦で注目のラインアップに加わってきた。
小林可夢偉はキャデラックDPi-V.Rを駆ってデイトナ24時間レースを2連覇したほか、2021年からはNASCAR王者ジミー・ジョンソンとともにアリー・キャデラックからエンデュランス・カップに参戦している。2022シーズンはデイトナ、セブリングで、これにホセ・マリア・ロペスも加わっていた。
また、マイク・コンウェイも長年キャデラック陣営のアクション・エクスプレス・レーシングで耐久レースの追加ドライバーを務めてきた。
だが、IMSAのトップカテゴリーが2023年よりLMDhへと移行、LMH車両の参戦も認められることになり、そこではWECのハイパーカークラスと同じ車両が戦うケースもある。現在のところポルシェとキャデラックが、2023年からIMSA・WECの双方でLMDhマシンによるプログラムを予定している状況だ。
トヨタのドライバーがIMSAに参戦することについてのトヨタのスタンスを問われたバセロンは、「ケース・バイ・ケースになるだろう」と答えている。
「我々は、我々のドライバーを、我々と直接競合するメーカーでレースさせたくはない。だが、我々は現在IMSAには参戦していないため、IMSAにおいてはとくに問題は生じない」
「唯一の問題はアキュラから(2022年最終戦に)出場するブレンドン(・ハートレー)だが、アキュラはWECに参戦してくる予定はない。彼らには(LMDhにおいても)IMSAの参戦計画しかない。したがって、交差する部分はないのだ」
バセロンはまた、これまでのところIMSAに参戦可能性のあるトヨタドライバーから、その種の「質問は受けていない」と付け加えた。
前述のとおりトヨタ8号車のハートレーは、2022年10月のDPi最終レースとなるプチ・ル・マンに、ウェイン・テイラー・レーシング(WTR)のアキュラから参戦する。ハートレーはアメリカでのさらなるレース出場にも興味を示しているが、WTRやトヨタとの話し合いはまだしていないようだ。
来年、IMSAの一部のレースに出場したいかという質問に対して、「ぜひ、やりたいね」とハートレーは答えている。
「だけど、いくつかのチームが(トヨタの)直接のライバルとなることが、少し難しくさせる。ちょっと複雑になるんだ」
可夢偉とコンウェイはIMSAで他のカテゴリーのマシンをドライブすることにも興味を示している。すでに可夢偉は7月のモスポート戦で、代役としてGTDプロクラスのレクサスRC F GT3をドライブした経験を持っている。
一方のコンウェイも先月、GTPクラスでのレースが不可能となった場合は、他のカテゴリーを検討することに前向きであると語った。
バセロンは、可夢偉がトヨタのWECチーム代表として仕事量を増やしている状況が、IMSAでのドライバーとしての活動の可能性をより複雑なものにしている、と指摘する。
「可夢偉については、少し別の問題がある」とバセロン。
「計画は、とても忙しくなり始めている。彼にとっては、スケジュールを管理するのが実質的に困難になるだけだ」
トヨタは今年6月、GR010ハイブリッドで2023年1月のIMSA開幕戦デイトナ24時間に「参戦する予定はない」と明言したが、富士においてバセロンもその方針を改めて確認した。
しかし、IMSA・GTPクラスへの参戦については、毎年見直すことになるとバセロンは言う。
「これは、シーズンごとに我々が議論する問題だ」とバセロン。
「だが、いまのところ2023年はIMSAに参戦する予定はない」
「ルールが固まるには、少し時間がかかる。2023年は、IMSAにおけるGTPの初年度だ。参戦するには、少し早すぎるかもしれない」