日産の米国部門が2022年6月に発表したアルティマの2023年モデルには、ダウンサイズの直噴2L直列4気筒ガソリン「VCターボ」エンジンを、SRグレードのFF仕様車に搭載している。
量産エンジンとしては世界初の可変圧縮比エンジンでその最大出力は248hp、最大トルクは37.7kgmを引き出す。先代の3.5LV型6気筒ガソリンNAエンジンから置き換えたものだ。
そこで、かつての平成時代のターボ車で後世に語り継ぎたいモデル5台について、松田秀士氏に選んでもらった。
文/松田秀士、写真/Porsche、日産、トヨタ、マツダ、三菱自動車
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■輸入車は今回は除外だが、空冷最後となる993型ポルシェ911GT2は外せない
VCターボが世界で初めて搭載されたのは米国でインフィニティブランドのQX50だった。
実は筆者自身、2019年のWCOTY(ワールドカーオブザイヤー)のLA試乗会で初めてそのステアリングを握り、2Lターボとは思えない低速域の自然な扱いやすさに感動したものだ。このVCターボエンジンはさらにダウンサイジングされて今後日産のe-POWERにも採用される予定だ。
つまり、まだまだターボ技術は進化続けるのりしろを持っているのだ。そこで今回は、かつての平成時代のターボ車で後世に語り継ぎたいモデル5台を筆者なりの視点でチョイス。思い出やエピソードを含めて話してゆこう。
まず、思い出深いことが平成元年(1989年)に登場したZ32型フェアレディZを皮切りに国産メーカーによる280ps自主規制が始まったことだ(平成16年/2004年7月に撤廃)。これは当時の交通事故死者の急増に配慮してのこと。
そしてこの年からターボといえばツインターボがハイパフォーマンスモデルの常套句となった。この280ps自主規制は国産車に適用されたことから輸入車は例外。
そこで筆者的に思い出深い輸入車ターボモデルはポルシェ911GT2(タイプ993)。空冷エンジン最後のモデルとなる993型ポルシェ911のデビューは平成5年(1993年)。それまでの964型からリアサスをマルチリンク化、トランスミッションも6速化されるなど、ハンドリングが大きく進化した。
そして平成7年(1995年)に水平対向6気筒3.6Lエンジンにツインターボを装着したGT2モデルが追加された。
実は筆者、デビューしたてのGT2のレース仕様を駆り、1995年の全日本GT選手権(現在のスーパーGT)でGT1クラス(現在のGT500)で年間2勝を達成。この年のシリーズは混沌として、年に2勝したのは筆者だけだった。
それだけ国産車マシンを凌駕するほどの性能を備えていたわけだが、市販モデルのパワーは430psと突出していた。トラクションコントロールなどのPSMは付いておらず、かなりのじゃじゃ馬だった。
しかしツインターボは当時としては低回転域からもトルクが出ていて、ピークエンドのパワーは驚愕だが比較的扱いやすいスーパーエンジンだった。
■日産 スカイラインGT-R(R32型)
一方、自主規制の280psながらツインターボエンジンを搭載したモデルとして記憶に残るのがスカイラインGT-R(R32型)だ。2.6L直列6気筒ツインターボエンジン(RB26DETT)は強烈なトルクを発生し、4WDシステムのアテーサE-TSによってそのパワーをしっかりと路面に伝える。
筆者はこのモデルでも当時のN-1耐久レースで十勝24hを含め幾度となくステアリングを握った。
ただし、筑波サーキットの最終コーナーのようなRが長く続く回り込んだコーナーではアンダーステアーが強かったことが記憶に残っている。そのハンドリング特性もその後のR34型ではかなり解消され、発表試乗会が催されたオートポリスではまるでドリフトマシンだった。
■トヨタ スープラ(A80型)
そして忘れてならないのが平成5年(1993年)にフルモデルチェンジしたスープラ(A80型)だろう。スポーティなロングノーズ&ショートデッキスタイルの3ドアファストバッククーペに変身。そのボンネット下には3L直列6気筒ツインターボエンジン(2JZ-GTE型)が収められていた。
なんといってもFRモデルで280psだからワクワク感満載! このパワーだからアクセルでもクルマの向きを変えられるほどファンtoドライブなハンドリングも併せ持ち、かといってサスペンションによるメカニカルグリップもしっかりとしていてデートカーにもなるし、楽しさいっぱいのクルマだった。
■マツダ(アンフィニ)RX-7(FD型)
さて、マツダのロータリーエンジンからも目が離せない。平成3年(1991年)に登場したアンフィニRX-7(FD型)だ。
FD型は3代目となるが、13Bロータリーエンジンをツインターボ化して255psを発生。レッドゾーンを飛び越してもどこまでも回りそうな、まるで電気モーターのようにスムーズに回る高回転域が魅力的。
13Bツインターボはマイナーチェンジを重ねるごとに進化して平成11年(1999年)にはついに280psを発生していた。ロータリーエンジンはコンパクトで低く搭載できるからRX-7のフロントノーズは低くデザインでき、マツダのデザイン力がいかんなく発揮された魅力的なエクステリアだった。
■三菱 ランサーエボリューションVI(トミ・マキネン・エディション)
さて、最後は非常に惜しまれながら生産を終了した三菱自動車のランサーエボリューション(以下ランエボと略す)だ。
初代ランエボは平成4年(1992年)に登場し、平成28年(2016年)の販売終了までに4種類の車体構造(プラットフォーム)に進化している。そのなかでも個人的にとても印象に残っているモデルが平成12年(2000年)にリリースされたランエボVI トミ・マキネン・エディションだ。
当時、三菱のWRCワークスドライバーだったトミ・マキネンの4年連続ドライバーズチャンピオン獲得を記念した特別仕様車。車高は従来モデルから10mmダウン。つまり、ターマックに特化したサスペンション。
もともとランエボはFFベースのフロント横置きエンジンの4WDとは思えないほどアクセルワークとステアリング操作で思うようにクルマの向きを変えられるハンドリングが魅力だったが、このトミ・マキネン・エディションはより一層ステアリングアクションに機敏に反応するハンドリングが印象的だった。
2Lの直列4気筒ターボエンジン(4G63型)に新開発のハイレスポンスチタンアルミ合金ターボチャージャーを装着。もちろん、280psだが38.0kgmの最大トルクを2750rpmから発生する低速域でストレスのないトルクフィールが、コーナーからの立ち上がりでアクセルONに従順に反応した。
ほかにも平成時代はターボモデルが活躍していたのだが、やはり記憶に残るのはここに挙げた5台である。
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