2023年から新しいLMDhカーをWEC世界耐久選手権と、IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権の両方で走らせるポルシェは、できるだけ早期に『ポルシェ963』のカスタマーカーを顧客の手に渡そうと「プッシュしている」という。しかし、ポルシェ・モータースポーツのトーマス・ローデンバッハは、これらの新型マシンがデイトナ24時間に間に合う可能性を基本的に否定している。
来年のWECハイパーカークラスと、IMSAのDPiクラスに取って代わるGTPクラスに向けて、計4台のポルシェ963を顧客に割り当てているドイツのメーカーは、プライベーターチームがクルマを受け取る時期を確定させていない。
JDCミラー・モータースポーツとJOTAは、最初の顧客として発表された。その後、プロトン・コンペティションが追加のカスタマーチームとしてアナウンスされ、WECとIMSAに同時参戦することが明らかにされた。
プロトンのボスであるクリスチャン・リードは、彼のチームがデイトナに間に合わないことを示唆した。また、ミネソタに拠点を置くJDCミラーが2023年のオープニングレースにLMP2カーで出場することを検討していると考えられていることから、来季開幕戦のデイトナ24時間ではポルシェ・ペンスキー・モータースポーツが唯一のポルシェ963オペレーターになるようだ。
ローデンバッハはSportscar365に対し、カスタマーカーをデイトナのグリッドに置くことは「非常に難しい」と認めた。
「それは非常に困難な状況だ。可能な限り早く(チームが)クルマを手に入れられるようにプッシュしている。だが、今のところ納期は確認できていない」と彼は説明した。
「すべてが我々の手中にあるわけではない。サプライチェーンの問題は世界中で起こっている。メーカーのキャパシティの問題もある。仕様のフィックスが非常に遅れる可能性のあるパーツもあるんだ」
「とても多くのことが重なり、基本的に納期を確認できない状況になっている」
ポルシェは、来年3月に開催される『スーパーセブリング』イベントに少なくとも2台のカスタマーカーを投入するために動いていると考えられているが、それがIMSA第2戦セブリング12時間レース、WEC開幕戦セブリング1000マイルのどちらかに偏るのか、あるいはこのふたつのレースに分かれるかは不透明だ。
デリバリーが遅れているにも状況ではあるが、ポルシェはLMDhプラットフォームの立ち上げ初年度にカスタマーカーを提供する唯一のメーカーであり、ローデンバッハはこのことに誇りを持っている。
「私たちは、明らかにトップクラスのカスタマーレースにコミットしていると言った」と同氏。
「歴史を振り返ってみると、956/962は開発がどう進むか100パーセントわかっていないときに下した勇気ある決断だった」
「今でもカスタマーカーを提供するのは私たちだけだ。彼らが最初のレースには来ないかもしれないが、それは今にわかるだろう」
■今後のカスタマーLMDhの割り当ては決まっていない
ローデンバッハは、ウェザーテック選手権用のポルシェ963が2025年まで追加されないかもしれないとの報道がある中で、ポルシェは2024年以降のカスタマーカーの割り当てについて、まだ詳細を詰めていないと述べた。
ポルシェGTの長年の顧客であるパフ・モータースポーツととケリー・モスは、プライベーターキャンペーン用にLMDhを入手することに興味を示している。また、JOTAは早ければ2024年までに、ハイパーカークラスでのプログラムを2台体制に拡大することを目指している。
ローデンバッハは、将来の割り当てについて「まだ決定していない」と述べた。同氏は「今現在、我々は来年に向けて多くのことを推し進めている」と続けた。
「私たちがいつも言ってきたように、2024年にもっとクルマを提供してもいい。需要がどれだけ大きいのか見てみる」
「(最終的に)これが何台になるかは、まだ決まっていない」
同氏はポルシェが顧客プログラムに対して、より選択的なアプローチをとっており、「できるだけ多くのクルマを売る」ことが目的ではないことを強調した。
「もしクルマを売るのであれば、トップチームや、(トップ)ドライバーのラインアップで、レースに勝てるようなチームに参加してもらいたいと考えている」とローデンバッハは語った。
「これは、耐久レースのトップレベルであり、我々がつねに追い求める道だ」
「ポルシェがコースに出れば、そのポルシェが上位でレースができるようにしたい。そのため、チームにできる最善のサポートを提供することにも常に興味を持っている」
「チームにはある程度のレベルが必要だし、ドライバーも必要だ。それらは常にパッケージである。そして、それが我々の哲学なんだ」