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 全国各地の路線バスにはその事業者特有のカラーがあり、老舗うなぎ店のタレのように長年継ぎ足して使われ続け、バスを見ただけで地域性が分かるほど定着しているケースも非常に多い。

 そんな、車体の色が40年以上ほぼ変わっていない、頑固な首都圏のバス事業者を5件をピックアップ。つい「あー!! 知ってる」と言ってしまう人も多いはずだ。

文・写真:中山修一


(1)都営バス:40年

 1924年開業。1968〜81年までアイボリー基調に明るめの青を組み合わせた配色、その後黄色地にマルーン帯へと変わり、1982年からアイボリーに明るめの緑色の変形ラインを入れたデザイン(ナックルラインとも言われる)に塗り替えられた。

 1996年からノンステップ車が順次導入され、ワンステップ車等と区別するために黄色の模様が追加された以外では特に変化がなく、約40年に渡って「都バスの色」を務めている。

1982年以降、アイボリーと緑を組み合わせた車体カラーが基本の都営バス

(2)東急バス:54年

 1929年開業。1991年に東急電鉄からバス部門が独立して東急バスとなった。銀色を基調に赤帯が入れられた車体色は東急バス設立以前からあり、東急電鉄時代の1968年には配色の基礎が既に完成していた。

 都営バスと同様ノンステップ車導入にあたり、該当する車両には赤帯部分に青色が加えられているが、その他に大幅にデザインが変更された箇所はほとんどない。

 銀色と赤の組み合わせ自体は戦後すぐから使い続けられており、途中で黄色と水色が追加されてカラフルになった時代も含めて通算すれば、東急バスカラーの基礎は70年以上現役だ。

(3)京急バス:58年以上

 1927年開業。京浜急行電鉄のバス部門から2003年に独立して京浜急行バスが設立された。まだ30年経っていないバス事業者ということになるものの、銀色にスカイブルーと赤い帯をあしらった車体色は京浜急行電鉄時代から引き継がれている。

 かなり昔から現在とほぼ同じ配色が使われていたようで、1964年公開の日本映画(カラー作品)のワンシーンに、銀+スカイブルー+赤帯のバス車両が登場している。

 最近は窓の周りが黒く塗られ、帯が直線的に描かれるようになったくらいで、やはり基本的なカラーリングの変化は見られない。

(4)神奈川中央交通:71年

 1921年設立。1951年に商号が神奈川中央交通へと変わり今日に至る。設立初期の頃は銀色ベースに黄色い帯が入るカラーリングだった。

 クリーム色に近い黄色を主体に、オレンジと赤のラインを入れたスタイルは1951年からと言われる。

 自動車黎明期〜1940年代の乗用車によく見られた、大きなフェンダーを模した波型デザインが1950年代に流行したことがあり、神奈中バスの車両も1950年頃〜1987年まで、車体の裾とフェンダー付近の赤いラインが波状に塗装されていた。

 波型デザインは1987年頃まで使われ、その後赤いラインの塗り方が直線的になった。大本の配色は同じままだ。

(5)横浜市営バス:94年

 1928年開業。今日も見られるクリーム色と青帯のコンビネーションは最初から変わっていないと言われるほど、バス車体色の中でも最長寿クラスだ。

 マイナーチェンジは若干あり、1990年頃に青が少し明るくなっている。ほかにも横浜の「Y」を表した前面帯のカーブがなくなった時期もあったが、最近の車両ではY字状に戻っている。

開業当初からクリーム色と青帯のまま1世紀近くが経つ、横浜市営バスの車体カラー

変わらないのが大切?

 長きにわたって基本的な配色をキープし続けている路線バスの数々。年月が経つと次第に古さが目立ってくるし、数年に1度はカラーリングを完全に変えたほうがいいのでは?と思うかもしれない。

 しかしバスに関して、それは一概に得策とは言えない。

 路線バスの色というのは地域の顔を担っていることが多い。バスの色を見れば地元感が強調されて安心したり、郷土愛を抱いたり、自分が乗るべきバスを車体の色で判断している人もいる。

 そのカラーが地元民に親しまれていればいるほど、刷新はどんどん難しくなる。

 実際に起こった騒動では、1981年に都営バスの車体色を完全に変更するべく大鉈が振るわれたことがあったのだが、既存カラー廃止への反発や、色が地域にそぐわないなど評判が非常に悪かったため、わずか1年で塗り直されてしまった。

 デザインを1から変えるとなれば、デザインや塗り替えにかかるコストはもとより、早い段階から入念な啓蒙を行い、地域住民に慣れてもらう必要が多々生じる。

 仮に新デザインが受け入れられなかった場合の対応まで考えると、よほどのことがない限り、配色には手を出さないのがベスト、になると思われる。

 もちろん、新色を導入したり新旧カラーが混在していたり、そもそも色がバラバラだったりするバス事業者も全国に点在しているが、それはまた別の話。昔からあまり変わらないバスの色は地元利用者にとって特別な色なのだ。

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