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EV走行の際の「コーッ」という音が出る理由ともうちょいなんとかならんのかという声

 外を歩いていると、ハイブリッド車や電気自動車(以下BEV)から、「コー」や「ヒュー」「フワンフワン」といった音が聞こえることがあるだろう。これは「車両接近警報装置」が発する人工音であり、法律で装着が義務化されている音だ。車速が20km/h以下程度の低速走行中、ハイブリッド車やBEVの存在を歩行者に知らせるためという「安全確保」が目的なのだが、なかには耳障りに感じる方もいるようす。「車両接近警報装置」が必要な理由と、クルマの「音」の今後について考察しよう。

文:吉川賢一
アイキャッチ写真:Adobe Stock_ U2M Brand
写真:NISSAN、Adobe Stock、写真AC

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新型車は2018年から、継続生産車は2020年から義務化

 国土交通省が、ハイブリッド自動車等の車両接近通報装置の義務化したのは、2016年10月7日に行った道路運送車両の保安基準等の一部改正から。適用タイミングは、新型車で2018年3月8日から、継続生産車で2020年10月8日からとしていた。それ以前のクルマでも、プリウスを筆頭に複数のハイブリッド車で車両接近通報装置が装着されていたのだが、早朝や深夜など、できるだけ音を出したくないシチュエーションを考慮して、スイッチで機能のオンオフが可能となっていた。

 当法規制定の元となったのは、「ハイブリッド車やBEVは、静かすぎるため歩行者が気づきにくい」という調査結果をまとめた、平成18年度(2006年)に独立行政法人・交通安全環境研究所が出した報告書だ。ただ同時に「実際の事故実態は確認できていない」ともしており、接触等の重大事故を未然に防ぐため、ガソリンエンジン車並みには低速時に音を出すようにして、懸念点をつぶしておこうという考えのもと、義務化されたようだ。

 (編集部注/ちなみにサッカーW杯日本代表FWの前田大善選手は、あまりに静かで音もなく相手DFやGKに近づいてボールを奪い取るところから、高校時代のあだ名が「プリウス」だったそうです。ベストカーWebはサッカー日本代表を応援しています)

歩行者が電動車の接近に気づかずに事故に遭ってしまうことをさけるため、ハイブリッド車やBEVには車両接近通報装置搭載が義務化されている(PHOTO:Adobe Stock_maroke)

独特の音色は、認知実験の結果と不快に感じにくいことを考慮した結果

 義務化によって、今日時点で市販されているどのメーカーのハイブリッド車/BEVも、時速20~30kmになると、車両接近通報装置が鳴る。この車両接近通報装置の音は、大きくすることは販売会社に相談するとできるらしい(日産ノートオーラの説明書に記載されている)が、小さくすることは不可能だ。

 また、通行人に聞こえやすいよう、車両前方に取り付けられた専用のスピーカーから音を出しており、幅広く音を出すために広角スピーカーを使用しているそうだ。某メーカーのエンジニアに取材したところ、より多くの人が聞き取れるよう、10種類ほどの周波数を混ぜた接近音を出力しているという。

電動車の走行音は、通行人に聞こえやすいよう、車両前方に取り付けられた専用のスピーカーから音を出しており、幅広く音を出すために広角スピーカーを使用している

 独特の音色については、前述の交通安全環境研究所が検証した、車両接近音の音色違いによる認知実験の結果で詳しく報告されており、メロディやチャイムカテゴリーのような音だと、エンジン音よりも10dB程度低い音量でも、エンジン音と同等の認知性を確保できたそう。ただメロディやチャイムだと、不快に感じることもあるため、ノイズに聞こえない範囲で確実に車両接近を通知できるよう、各自動車メーカーが音質や音量をつくりこんでいるのが今の姿だ。メーカーごと(中には車種ごと)にちょっとずつ音質が異なるのは、音質設計が進んでいる証拠でもある。

車内では、車内向けの走行音と混ざって聞こえてしまう

 ハイブリッド車やBEVでは、ドライバーに対して、クルマが加速していることを聴覚でも認知させるため、走行中、車内に「ヒューン」という音を流している。ハイブリッド車やBEVでは、エンジン音がないことでアクセルペダルを踏み込みすぎる可能性があるため、加速に連動して周波数を変えて「速度変化を表すサウンド」を流すようにしているのだ(後退時には、誤操作を防ぐために、車内でも車外でも同じ音を聞かせている)。

 車内では、この車内向けの走行音と、車外向けの車両接近通報装置の音が混ざって聞こえてしまうことで、さらに不快に感じてしまうことはあると考えられる。どうしても音が不快に感じるときは、ハイブリッド車ならば、チャージモードにすることで車両接近通報装置の音を消すことができる。日産車(e-POWER)の場合、EVモードスイッチを押し続けると強制的にエンジンを始動、リチウムイオンバッテリーへの充電を行う。ただし燃費は悪化するし、エンジン音のほうがずっとうるさいなど、デメリットは多い。

ハイブリッド車やBEVでは、エンジン音がないことでアクセルペダルを踏み込みすぎる可能性があるため、加速に連動して周波数を変えて「速度変化を表すサウンド」を流すようにしている(写真は日産「サクラ」の車内)

車内向けの音は、いずれカスタムできるようになるかも

 残念ながら車両接近通報装置の音に関しては、慣れるしかない。ただ音質については、より多くの人にとって不快な音とならないよう、今後もさらに研究が進んでいくとことだろう。

 また、車内向けの走行音は、エンジンサウンドを響かることができない電動車において、メーカーが独自色を表現することができる重要なアイテムのひとつだが、人工的なものなので、音色はいかようにもつくりこむことができるため、いつの日かユーザーがカスタマイズできるようになるかもしれない。そうなれば、車内における音の不快さは、多少改善できるようになるだろう。

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