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 9月17~18日、バレンシア・サーキットでファナテック・GTワールドチャレンジ・ヨーロッパ第9戦が行われ、土曜のレース1はシルバーカップエントリーの53号車フェラーリ488 GT3エボ(AFコルセ)を駆るユリース・ド・ポー/ピエール-アレクサンドル・ジョン組がポール・トゥ・ウインで今季2勝目をマーク。ウエットレースとなった日曜のレース2は、前日にスプリントカップ3連覇を決めた32号車アウディR8 LMSエボII(チームWRT)のシャルル・ウィーツ/ドリス・ファントール組が、ファイナルラップでトップを奪う逆転劇で今季最後の60分スプリントを締めくくってみせた。

 年間5戦で争われるスプリントカップ最終戦の舞台は、スペインのバレンシア。土日の2日間で天候が様変わりした週末最初のレースは、第6戦ミサノでシルバーカップクラスのスプリントカップ王者を決めたAFコルセのペアが速さをみせた。

 彼らは晴天のもとドライコンディションで行われたレース1をポールポジションからスタートすると、2台のアウディを従えてトップを維持。レース序盤と後半に1度ずつセーフティカーが入りその度にギャップがリセットされたが、ド・ポーとジョンの両名はライバルに順位を譲ることなくオーバーオールのトップチェッカーを受けた。

 その後ろでは3年連続のタイトル獲得を狙う32号車のペアと、予選3番手からオープニングで2番手に順位を挙げた11号車アウディR8 LMSエボII(トレゾア・バイ・カーコレクション)が2番手争いを繰り広げたが、結局最後までポジションは変わらず。11号車と32号車のアウディ勢が表彰台に登った。
 
 3位でフィニッシュしたチームWRTのエースカーに対し、彼らとタイトルを争う89号車メルセデスAMG GT3(アコーディスASPチーム)のラファエル・マルチェッロ/ティムール・ボグスラフスキ組は予選で下位に沈んだ。決勝で16番手から7位まで挽回をする走りをみせるも、レース2で32号車のペアを上回ることが不可能となったため、この時点でウィーツとファントールの戴冠が決定。WRTの“アウディ・ラストイヤー”にスプリントカップ3連覇をプレゼントした。

 2022年シーズン最後のスプリントレースとなった18日のレース2はウエット路面での戦いに。ここではポールシッターの89号車メルセデスが優位にレースを進めていく展開となった。

 一方、32号車アウディは2日続けて予選2番手から順位を落とす出だしとなり、レース中盤のピットストップではまだ路面が濡れている状況でウエットタイヤからスリックタイヤに交換したため、コース復帰後は一時5番手まで順位を落としてしまう。

53号車フェラーリ488 GT3エボ(AFコルセ)
53号車フェラーリ488 GT3エボ(AFコルセ)
3年連続でスプリントカップ王者となった32号車組と、シルバーカップのシリーズタイトルを獲得した30号車組(チームWRT)
3年連続でスプリントカップ王者となった32号車組と、シルバーカップのシリーズタイトルを獲得した30号車組(チームWRT)
111号車マクラーレン720S GT3(JPモータースポーツ)
111号車マクラーレン720S GT3(JPモータースポーツ)

■失敗したかに見えたスリック投入が大成功

 レース終盤、トップを走る89号車メルセデスに25号車アウディR8 LMSエボII(サンテロック・ジュニアチーム)が接近。2台はテールトゥノーズの状態でファイナルラップを迎える。誰もが89号車と25号車による首位争いに注目するなか、後方から猛烈な勢いで迫ってくるクルマが1台いた。乾きつつある路面を味方に、ウエットタイヤを履く上位2台とのギャップを1周ごとに3.5秒、6秒、9秒と縮めてきた32号車アウディだ。

 ファイナルラップで前を行く2台に追いついたウィーツは、レコードライン以外は濡れているため大きくラインを外せないなか、冷静に1台ずつオーバーテイクしていく。そして最後には首位でチェッカーを受け、前日の戴冠を勝利で祝うことに成功した。1.967秒差の2位はサンテロックのアウディ、89号車メルセデスは最終ラップまで首位を守りながら3位でのチェッカーとなっている。

 なお、89号車のスタートパートを担当したマルチェッロは、このラウンドでGTワールドチャレンジ・ヨーロッパにおける、スプリントカップとエンデュランスカップをあわせたシリーズ全体のチャンピオンを決めている。

 また、シルバーカップでもシリーズチャンピオンが決定。チームWRTの30号車アウディR8 LMSエボIIを駆るトーマス・ノイバウアー/ベンジャミン・ゲーテ組がエンデュランスカップ最終戦を前にタイトルを確保した。同クラスのレース2ウイナーは90号車メルセデスAMG GT3(マッドパンダ・モータースポーツ)のエゼキエル・ペレス・コンパンク/ファビアン・シラー組だ。

 レース1、レース2ともに111号車マクラーレン720S GT3(JPモータースポーツ)のパトリック・クルピンスキー/クリスチャン・クリエン組が制したプロ・アマカップでは、ガレージ59の188号車マクラーレン720S GT3をドライブしているミゲル・ラモス/ディーン・マクドナルド組が今季のスプリントカップ王者となっている。

 GTWCヨーロッパの今季最終戦は9月30日~10月2日、エンデュランスカップのフィナーレイベントとしてカタロニア・サーキットで開催される。

89号車メルセデスAMG GT3(アコーディスASPチーム)
89号車メルセデスAMG GT3(アコーディスASPチーム)
188号車マクラーレン720S GT3(ガレージ59)
188号車マクラーレン720S GT3(ガレージ59)
90号車メルセデスAMG GT3(マッドパンダ・モータースポーツ)
90号車メルセデスAMG GT3(マッドパンダ・モータースポーツ)