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 10月22~23日に母国の英雄アイルトン・セナの名を冠したアウトドローモ・インテルナショナル・ゴイアニアで開催された、2022年SCBストックカー・ブラジル“プロシリーズ”第10戦/第11戦ダブルヘッダー・ラウンドの週末は、4戦で4人のウイナーが誕生する大接戦となり、土曜レース2ではネルソン・ピケJr.(モチュール・TMGレーシング/トヨタ・カローラ)が今季2勝目をマーク。

 このゴイアニアを大の得意とする2014年シリーズチャンピオンのルーベンス・バリチェロ(フルタイム・スポーツ/トヨタ・カローラ)は、週末の勝利こそなかったものの全ヒートでトップ10入りを果たし、最終戦を前にしてついにポイントリーダーの座に浮上している。

 雨混じりの金曜に始まった週末最初のセッションでは、ドライ路面だったFP1でピケJr.がステアリングを握るカローラ33号車が最速タイムを記録し、フルウエットへと転じた午後のFP2ではセザール・ラモス(イピランガ・レーシング/トヨタ・カローラ)がトップタイムをマークするなど、ドライでもウエットでもTOYOTA GAZOO Racingブラジル陣営が好調さを見せつける1日となった。

「今日はただのトレーニングだった」と7月のヴェロパークでも勝利を飾っているピケJr.は、今回のイベントで乳がん撲滅に向け早期発見と治療を啓蒙する10月の強化月間に協賛し、ピンクに彩られたカローラをドライブする。

「明日に備えドライでもウエットでも、少しデータを蓄積してどんなコンディションにも備える必要がある。このまま仕事を続けることが重要であり、どんな状況でも結果を出せるよう万全の準備を整えておく必要があるからね」

 ウエットのFP2でも上位21名が秒差圏内に収まった勝負は、明けた土曜午前の第10戦向け予選でも続き、豪雨のトラックでも最速だったラモスが「ポールと勝利を目指して戦える」と宣言したとおり、総勢29台が1秒以内となったQ1から勝ち上がり、シリーズ3冠経験者のリカルド・マウリシオ(ユーロファーマRC/シボレー・クルーズ)を従えて、まずはレース1の最前列を確保した。

 これがSCB出走150戦目となったラモスは、そのまま土曜午後にも背後のマウリシオやリカルド・ゾンタ(RCMモータースポーツ/トヨタ・カローラ)らを抑え切り、まずは30分+1ラップ勝負でポール・トゥ・ウインを決めてみせた。

 続いて、ほぼインターバルなくスタートが切られたリバースグリッド採用のレース2は、ポール発進のブルーノ・バブティスタ(RCMモータースポーツ/トヨタ・カローラ)が序盤の主導権を握ったものの、義務ピットのウインドウが開いて以降はシナリオが変わり、3番手発進だったピケJr.がチーム戦略の機転も活かし首位浮上に成功。

 一方で3位まで這い上がってきたマウリシオは“プッシュ・トゥ・パス”の使用状況違反でペナルティが課され、ゾンタ&バブティスタのRCM勢がポディウムの脇を固め、勝者ピケJr.を筆頭にTGR陣営が表彰台を占拠する結果となった。

金曜FPでは、ネルソン・ピケJr.(Motul TMG Racing/トヨタ・カローラ)とセザール・ラモス(Ipiranga Racing/トヨタ・カローラ)のTOYOTA GAZOO Racing Brasil陣営が好調さを見せつける
そのラモスが、リカルド・ゾンタ(RCM Motorsport/トヨタ・カローラ)らを抑え切り、まずは30分+1ラップ勝負の土曜レース1でポール・トゥ・ウインを決めた
ルーベンス・バリチェロ(Full Time Sports/トヨタ・カローラ)やマティアス・ロッシ(A.Mattheis-Vogel/トヨタ・カローラ)も、つねにトップ10に絡む、しぶといレース運びを見せる
「僕のキャリアと人生の中でも信じられない日」と、完全試合を達成したセザール・ラモス(Ipiranga Racing/トヨタ・カローラ)

■バリチェロを軸に4名が今季タイトルを争う

「クルマはとても良かった。我々は残念ながら(レース1のピットストップで)人為的なミスを犯してしまい、好リザルトを逃していた。彼らは非常に多くのピットストップ練習やトレーニングを行っているが、ときにはプレッシャーによってミスを犯すこともある」と、ピケJr.は今季2勝目を飾ったフィニッシュ直後に、クルーを擁護する言葉を残した。

「それでもチームはレース2で勝つためすぐに戦略を変更し、それが功を奏した。チームは昨年末も(再契約を結んで)僕を優しく抱き止めてくれたが、僕は彼らとここから長い成功の歴史を築くつもりさ」

 その初日を終えた時点で、3連覇王者ダニエル・セラ(ユーロファーマRC/シボレー・クルーズ)が271点で選手権首位に返り咲き、それを現役王者ガブリエル・カサグランデ(A.マティス・フォーゲル/シボレー・クルーズ)とバリチェロが同率268点で追いかける展開に。

 最後の日曜は本来ならトラック外周路を使用した恒例の超高速バトルを予定していたものの、シリーズ主催側は土曜時点の雨予報を鑑みて前日同様のインフィールドも使用する判断を下すと、前日予選ではフロントロウ2番手に甘んじていたマウリシオが、キャリア通算20回目のポールポジションを奪っていく。

 予報に反し33度まで気温上昇が進んだ灼熱の第11戦は、最前列発進の優位を活かしたマウリシオがレース1のポール・トゥ・ウインを決め、シリーズ通算34勝目をマーク。その背後にはトヨタ陣営イピランガ・レーシングの2台、カミーロとラモスが続く結果となった。

 そして前日同様リバースグリッド採用のレース2では、17番手スタートの“伏兵”ディエゴ・ヌネス(ブラウ・モータースポーツ/シボレー・クルーズ)が戦略的判断を見せ、アクシンデントにも乗じて義務ピット前までに6番手へ躍進すると、最後の最後でセラを逆転したガエターノ・ディ・マウロ(KTFスポーツ/シボレー・クルーズ)を従え、今シーズン初勝利を手にしてみせた。

 この4ヒートを終えた段階で、各ドライバーは有効ポイント制度により下位4戦分のスコアを切り捨てることとなり、最終的に4名がタイトル候補として12月10~11日開催の最終戦インテルラゴス『スーパーファイナルBRB』に挑むことが決定。

 選別の結果298点で今季初のランク首位に立ったバリチェロを軸に、同290点で6年連続のタイトル候補として臨むセラと、ディフェンディングチャンピオンで288点のカサグランデに対し、隣国アルゼンチンからの“越境参戦”2年目で大活躍を演じたマティアス・ロッシ(A.マティス・フォーゲル/トヨタ・カローラ)が、自身初となるブラジルでの戴冠に挑む。

土曜レース2では3番手発進だったピケJr.がチーム戦略の機転も活かし首位浮上に成功し、今季2勝目を獲得
ピンク色に染まり、プレゼンター全員が女性という表彰台で「戦略の変更が勝利に不可欠だった」と明かしたピケJr.
日曜レース1は3冠経験者のリカルド・マウリシオ(Eurofarma-RC/シボレー・クルーズ)がシリーズ通算34勝目を手にした
タイトル候補4名のうち、唯一の「SCBチャンピオン未経験者」として挑むマティアス・ロッシ(A.Mattheis-Vogel/トヨタ・カローラ)